【書泉グランデ売れ筋グルメ漫画ベスト5】 東京は神保町「書店グランデ」の書店員・神谷武之さんは2014 年に「グルメコミックコーナー」を作りました。常時、300冊以上の品揃えを誇ります。 「開設当時は『孤独のグルメ』(原…
画像ギャラリー今や一大ジャンルとなったグルメ漫画。食をテーマにした作品を描くくらいなのだから、作者もきっと食いしん坊に違いない!そこで、現在連載中の人気作の作者たちに、そのグルメっぷり!?を伺った。2人目は、『女優めし』を連載中の原作者・藤川よつ葉さん、漫画家・うえのののさんです。
【藤川よつ葉さん(原作者)うえのののさん(漫画家)の行きたいお店】
『都寿司』 @人形町
1887年創業の老舗。端正な握りを比較的手頃に楽しめるとあって人気を博す。江戸前の仕事が光る、穴子や貝類などをふんだんに載せた「にもの丼」はランチのみの提供。
にもの丼 1210円
[住所]東京都中央区日本橋蛎殻町1-6-5
[電話]03-3666-3851
[営業時間]11時~19時15分LO
[休日]日・月
[交通]地下鉄半蔵門線水天宮前駅6番出口から徒歩5分
『二八蕎麦セイジ』 @八千代
厳選した蕎麦粉を石臼挽きし、風味豊かでのど越し良い二八蕎麦がメイン。「カレーうどん」はカレーから自家製。ダシとの調和が見事で細めのうどんにしっかり絡まり美味。
カレーうどん 1050円
[住所]千葉県八千代市大和田新田926-8
[電話]047-450-3033
[営業時間]11時~15時(日は12時~)、17時~20時
[休日]木、第2・4水は14時まで
[交通]東葉高速線八千代緑が丘駅南口より徒歩10分
【ささやかな希望であり、今や癒しの媒体…それがグルメ漫画です】
グルメ漫画の人気原作者・藤川よつ葉が締め切りに追われて失踪?…なんてことになったら、人形町のあの店にいるかもしれない。
藤「『都寿司』ですかね。にもの丼を食べたくなっているんじゃないかと…(笑)」
日々、2万歩(!)ほどそぞろ歩いていい店を探すという彼女は、東京の出身。煮穴子は地元の名産、落ち着く味なのだろうか。一方、この週刊連載が始まってからご飯は台所で立って食べる(!)ようになった(=理由は時間を惜しんで、ではなく、一日のうちに座っている時間が長すぎて、たまには立ちたいから)という漫画家・うえのののが失踪したら雲隠れ先は…
う「千葉県八千代にある『二八蕎麦セイジ』です。アシスタント時代に、カレーうどんを食べて元気を出して、黄色い汁をTシャツに飛ばしたまま、また仕事場に戻って。思い出の店なんです(遠い目)」
なるほど、“失踪めし”は“原点めし”なのかもしれない。というわけで、『女優めし』。藤川さんの本作のコンセプトは、束縛からの解放だ。
藤「主人公は女優の撫子さん。女優なので、その気になればいくらでも高額でオシャレなご飯を食べられるはずなんですけど、ひとりの女性として息をする場面を書きたいのです。人は食べに行くことで自分自身を解放するんだと思います。人って、食べるときは素顔でしょう。私の中で食べることは、偉い/偉くない、がなくなって同じ目線に降りてきてくれること。ただ、『私はこれが好きなんだ』といえる大切な時間!」
うえのさんの作画の特に素敵なところは?と訊ねると、ご飯を食べる主人公の顔だと言う。
藤「料理に恋しているところを表情に乗せてくれる。だから、モノクロなのに色鮮やか。頬が紅潮するのがわかる絵なんです」
それに応えてうえのさんは、
う「顔を描くのは何も悩まない(笑)。自分はこんな顔をして食べるだろうなあと思いながら描くだけで。ニコニコして食べるよね、と普段からよく言われます(笑)。やはり料理の絵が難しい!」
たしかに、うえのさんの描く料理絵は白黒なのになぜ美味しそうに見えるのだろうか。見る側の我々の目が勝手に補正するのか。
う「ポイントはハイライトとアナログ感。白黒の世界で灰色をどう使うかです。カラーだと情報量が多いのですが、漫画絵ならば、“ここ”というポイントに目をピッと誘導できるので。それが漫画ならではの絵力(えぢから)ですね。例えば、カツカレーを描いたとき。真っ白なご飯に茶色いカレーがかかっているのが美しさだから、ご飯は線を減らして、なるだけ白っぽくして。カツのサクサク感を出すのに輪郭線を足して目立たせて。そういうバランスの微調整が大事なんです」
おふたりに、グルメ漫画の大ブームの渦中で感じる、ブームの理由を聞いてみた。
藤「コロナがあったり、戦争があったり、不況だったり…そういうなかでも『今日あれを食べたいな』という想像は、自分の身の周りで叶う、ささやかな希望なんだと思います」
う「昔の料理漫画は、対立して、バトルして、頂点を目指すものが今より多くありました。令和の食漫画は『食べに出かける』『食べてホッとする』です。漫画を読んで一呼吸入れているのかな。それと漫画を読んで食欲を湧かせる効果もあります。そういう癒され方をしている人が、現代には多いと思います」
藤川さんが書いた第一話、主人公の女優が店に入るなり「らっしゃせ」と店員が声を掛ける。そのフキダシは絶妙に落ち着く音の響きだ。
藤「食は昔からあるコミュニケーション、人生の基本なんですよね」
【書泉グランデ売れ筋グルメ漫画ベスト5】
東京は神保町「書店グランデ」の書店員・神谷武之さんは2014 年に「グルメコミックコーナー」を作りました。常時、300冊以上の品揃えを誇ります。
「開設当時は『孤独のグルメ』(原作:久住昌之/作画:谷口ジロー)がメイン。その後の印象深い作品は『山と食欲と私』(信濃川日出男)。旅して食べる漫画の先駆者です。
最近の売れ筋は『鍋に弾丸を受けながら』(原作:青木潤太朗/作画:森山慎)や『しあわせは食べて寝て待て』(水凪トリ)。私の推しは『はらぺこ銀河』(魚乃目三太)、『酒処 春来荘日乗』(丸岡九蔵)です。今後はご当地グルメ漫画が盛り上がりそうです」
ベスト1:『鍋に弾丸を受けながら』青木潤太朗・森山 慎/KADOKAWA
ベスト2:『しあわせは食べて寝て待て』水凪トリ/秋田書店
ベスト3:『異世界居酒屋のぶ』蝉川夏哉・ヴァージニア二等兵・転/KADOKAWA
ベスト4:『山と食欲と私』信濃川日出男/新潮社
ベスト5:『Ariste』さもえど太郎/新潮社
藤川よつ葉さん(原作者) うえのののさん(漫画家)
ふじかわ・よつば/2019年『夜のおねえさんは食べることばかり考えている』(芳文社)で原作者デビュー。『女優めし』のほか、『今日もカレーですか?』(竹書房)の原作も手がけている。
うえの・のの/むとうひろし氏のアシスタントを経て、『灰とリコピン』(集英社)でデビュー。本作が初の連載作品となる。
『女優めし』(集英社『週刊ヤングジャンプ』連載中)
日本で一番愛されている女優・和泉撫子が主人公。仕事の合間や仕事後、オフの日に、女優の仮面を脱ぎ捨て、誰かに気兼ねすることなく食と酒を満喫する様子を描く。最新の3巻が17日に発売!
取材/輔老心
※2023年4月号発売時点の情報です。
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