チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。第23回は「夏チャーラー」のご提案。ラーメンが冷やし中華になって、チャーハンとの相性がどうなるのか!?
画像ギャラリー冷やし中華と炒飯の組み合わせはアリかなしか!?
5月も半ばを過ぎると、町中華では「冷やし中華はじめました」の貼り紙を見かける。が、筆者はあまり注文したことがない。冷し中華は店ではなく、家で食べるものという固定概念があったのだ。
5月末、その日は30℃超えの真夏日だった。お昼時にチャーラーを食べに行こうと思い、車を走らせた。ジッとしているだけでも暑いのに、チャーラーを食べたら汗が止まらなくなるかもしれない。
きしころ(常温または冷たいきしめんのこと)かざるそばに変更しようと思ったそのとき、ある疑問が浮かんだ。
冷やし中華とチャーハンの組み合わせはチャーラーとしてアリなのかナシなのかと。
で、向かったのは、記念すべき連載第1回で紹介した、愛知県小牧市の『ニーヨン 小牧店』だ。私の記憶が定かならば、たしかここには冷やし中華とチャーハンのセットメニューがあったはずなのだ。
こちらがメニュー。お昼のサービスセットだけで4種類。昼夜共通のサービスセットは22種類もある。やっぱりスゴイわ、ここは。
ざる中華と冷麺は夏季限定メニューとなっているが、冷しタンタン麺やまかない冷麺、まかない台湾冷麺、あんかけ冷麺、あんかけ台湾冷麺は1年中注文できるようだ。せっかくなら夏場しか食べられない「冷麺+炒飯」(980円)を注文することに。
冷やし中華を家で作るとき、きゅうりやハムを刻んだり、錦糸玉子を焼いたりとやたらと時間がかかるが、さすがはお店。具材を事前に仕込んであるからなのか、注文してわずか10分足らずで目の前に運ばれた。
冷麺のタレの酸味が炒飯をよりおいしくさせる!
いつもはチャーハンとラーメン、2つの器しか出てこないが、今回は4つ。それだけでも気分がアガる。ちなみに炒飯の奥にあるのが中華スープで、冷麺の奥にあるのはカラシとマヨネーズだ。
そうそう、愛知県とその近郊では、冷やし中華にマヨネーズをかけて食べるのは常識レベルの話である。冷やし中華のタレの酸味を和らげて、マイルドな口当たりになるので、愛知県外の方もぜひ試していただきたい。
これが『ニーヨン』の「冷麺」。具材は手前から時計回りに、トマト、レモン、刻みチャーシュー、きゅうり、椎茸、錦糸玉子、紅ショウガ。うん、とても豪華。
麺は温かいラーメンと同じく、やや縮れのある細麺。キンキンに氷水で冷やしてあるので、コシがあって旨い。たっぷりとかかったタレも甘みと酸味のバランスが秀逸だ。
冷麺の素晴らしさは、箸を入れる部分ごとに異なる味が楽しめるということ。やはり、いちばん旨かったのは、刻みチャーシューと甘酸っぱいタレを纏った麺の同時食い。
終盤は具材をすべて混ぜて、カラシ&マヨネーズもトッピングして食べたが、これもまた格別。あとはキンキンに冷えた生ビールがあれば言うことなし! あ、これはチャーラーの旅だったっけ(笑)。
炒飯はシンプルな塩味。酸っぱくなった口の中を中和させようと思い、炒飯をパクリ。あれ? 温かいラーメンを食べた後の炒飯も旨いけど、冷麺のタレで酸っぱくなった口で食べると、お米の一粒ひと粒に凝縮された炒飯のおいしさがよりわかるというか、塩味がイイ具合に引き立つではないか! これは新発見である。
それと炒飯のスープもイイ仕事をしていた。炒飯を食べた後にスープを飲むと、また冷麺が食べたくなり、冷麺→炒飯→スープという無限のループが生まれるのである。まさにこれは「夏チャーラー」。今年の夏は猛暑といわれているが、この夏チャーラーで乗り越えよう!
取材・撮影/永谷正樹
画像ギャラリー