畳一枚もの大きさの焼き台を囲むバーベキュー 浩宮さまと雅子さまは、ご結婚された翌年のGWにも那須御用邸でご静養されている。そのときは、雅子さまにとって初めての那須御用邸でのご静養ということで、ランチにバーベキューをするこ…
画像ギャラリー浩宮さま(現・天皇陛下)と雅子さまがご結婚され、やがて待望の赤ちゃんがお生まれになった。父と母の愛を一身に受けた愛子さまはすくすくと育たれた。愛子さまの首が座るようになると、一家は栃木県の那須御用邸にお出かけになった。愛子さまのはじめての夏休みである。那須御用邸は、天皇家にとってなじみの深いご静養の土地である。お忙しいご公務から離れて、心と体を癒しつつ、ときには周りの人々と歓談のときを持たれることもあった。とりわけ浩宮さまがしばしばご提案されたのは、気さくに皆で楽しめるバーベキューだったという。今回は、那須御用邸での楽しいひとときの物語である。
愛子さまをベビーキャリアで背負ってハイキング
愛子さまご誕生から8カ月たった夏、愛子さまはご両親に連れられて初めて那須御用邸に向かわれた。那須塩原駅に到着されたときには、浩宮さまが愛子さまを抱っこされてホームに降り立った。お誕生日会見で「積極的に子育てに関わりたい」と話されていたとおりの子煩悩ぶりである。
翌週、ご一家は黒磯市(現・栃木県那須塩原市)の沼ッ原湿原で2時間ほど散策された。浩宮さまは愛子さまをベビーキャリアで背負ってハイキングコースを歩かれた。山歩きで鍛えられた浩宮さまならではのアイデアである。そうして、すれ違う人たちとのふれあいを楽しまれた。初めての愛子さまとの家族3人での夏休みは、思い出深いものとなったことだろう。
畳一枚もの大きさの焼き台を囲むバーベキュー
浩宮さまと雅子さまは、ご結婚された翌年のGWにも那須御用邸でご静養されている。そのときは、雅子さまにとって初めての那須御用邸でのご静養ということで、ランチにバーベキューをすることとなった。浩宮さまの「気さくに皆さんで楽しみましょう」というお気持ちからのご提案であった。
警備を務める皇宮警察や地元の警察関係者、御用邸や御料牧場に商品をおさめる商店の人たち、御用邸の管理人、地元の関係者や同行の職員を交えた30人ほどのにぎやかなバーベキュー・パーティとなった。
畳一枚ほどの大きな焼き台に炭をたっぷり入れ、その上で焼く肉の香ばしい匂いが森いっぱいに広がる。あちこちから集まった人々の笑い声が聞こえる。
「大膳(だいぜん、調理担当)の方たちも、今日は白衣を脱いでご参加ください」
めいめいで焼きましょう、と声を掛けられた浩宮さまに、大膳の人たちは、「何かあってはいけませんし、やはり私たちが焼きましょう」とお気持ちのみありがたくお受けして、すすんでもてなし担当にまわった。
楽しいひとときがお開きとなったとき、浩宮さまは、「今日は本当にありがとうございました」と、大膳の人たちに深々と頭を下げてねぎらわれたという。
人々とのふれあいを大事にされる、浩宮さまのお人柄がうかがえる那須のひとときであった。(連載「天皇家の食卓」第7回)
文・写真/高木香織
イラスト/片塩広子
参考文献/『御即位5年 御成婚30年 新しい時代とともに――天皇皇后両陛下の歩み』(宮内庁侍従職特別協力、毎日新聞社)、『皇后さまと子どもたち』(宮内庁侍従職監修、毎日新聞社)、『天皇家の姫君たち』(渡辺みどり著、文春文庫)、『殿下の料理番 皇太子ご夫妻にお仕えして』(渡辺誠著、小学館文庫)
高木香織
たかぎ・かおり。出版社勤務を経て編集・文筆業。皇室や王室の本を多く手掛ける。書籍の編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』(ともにこう書房)、『美智子さまに学ぶエレガンス』(学研プラス)、『美智子さま あの日あのとき』、カレンダー『永遠に伝えたい美智子さまのお心』『ローマ法王の言葉』(すべて講談社)、『美智子さま いのちの旅―未来へー』(講談社ビーシー/講談社)など。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(共著/リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。
片塩広子
かたしお・ひろこ。日本画家・イラストレーター。早稲田大学、桑沢デザイン研究所卒業。院展に3度入選。書籍のカバー画、雑誌の挿画などを数多く手掛ける。挿画に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』(ともにこう書房)、『美智子さま いのちの旅―未来へー』(講談社ビーシー/講談社)ほか、著書(イラスト・文)に『私学の校舎散歩』(みくに出版)。