「受験は競争、受験生もアスリート」。トレーナー的な観点から、理にかなった自学自習で結果を出す「独学力」を、エピソードを交えながら手ほどきします。名付けて「トレーニング受験理論」。その算数・数学編です。第12回のテーマは「…
画像ギャラリー「受験は競争、受験生もアスリート」。トレーナー的な観点から、理にかなった自学自習で結果を出す「独学力」を、エピソードを交えながら手ほどきします。名付けて「トレーニング受験理論」。その算数・数学編です。第12回のテーマは「成績の安定」。筆者が説く「ローラー作戦」とは―――。
成績が安定しない5つのケース
私立中高一貫男子校のL君が入塾したのは、高3に上がる直前でした。L君は飲み込みがはやく、難しい問題でも結構解けるのですが、模試の成績は良いときもあれば悪いときもある、というように、安定していませんでした。
成績が安定しない生徒の場合、その原因はいろいろありますが、よく見られるのは以下のようなケースです。
(1)計算力が不足しており、計算ミスが多い
(2)注意力が不足しており、ケアレスミスが多い
(3)得意・不得意、出来る・出来ないなどのムラが大きい
(4)緊張しやすく力を発揮できないことがある
(5)健康状態が不安定
L君は(3)のムラがあるケースでした。L君の学校では、高校3年生になると入試対策演習を行うので、基礎~標準レベルの全分野を網羅的に演習することはありません。したがって、その範囲にたくさんの弱点を抱えていると、成績はなかなか安定しない可能性がありました。とくにL君は国立大医学部を志望していました。多くの国立大医学部では、当時のセンター試験で9割以上の得点が必要でしたので、全分野をムラなく満遍なく得点できる必要がありました。
地雷を残さない「ローラー作戦」
学力にムラがあるのは、たくさんの地雷(弱点)を抱えているようなものです。厄介なのは、「弱点がどこに潜んでいるか分かりにくい」という点です。地雷を探し出しそれを処理する地雷撤去作業は、まともにやろうとすると膨大な時間と労力がかかる、割の悪い作業です。
したがって、そもそも地雷を残さないような勉強をすることが大事です。そのような勉強法として、何度もテキストを繰り返す以下の「ローラー作戦」が有効です。
(1周目)
テキストや問題集で問題を解くときには、その脇に解いた日付を書き入れておく。解けなかった問題、間違っていた問題はマークする。その際、まったく解き方が分からなかったのか、それともミスで間違ったのか、などを分かるようにマークを区別する。
(2周目)
ある程度期間をおいて、解けなかった問題をもう一度解く。解けたらその問題は終了とし、終了マークを入れる。解けなかったら、再度解けなかったことが分かるようにマークをつけておく。
(3周目以降)
以降、すべての問題が終了となるまで3周、4周、…と繰り返す。
模試や入試の前には、解けずにマークを入れた問題の見直しを行いましょう。
何周もするのは大変に思うかもしれませんが、周を重ねるごとに解くべき問題は減りますので、思ったほどではないはずです。算数・数学の勉強は、解けない問題を解けるようにしてこそ意味があります。上記のローラー作戦は、まさにローラーで地面を地ならしするように、解けない問題や弱点をあぶりだして一つひとつつぶしていく、王道の学習法です。
ローラー作戦の結果
もともと力のあるL君のことでしたから、ローラー作戦で勉強をつづけたところ、成績にずいぶん安定感が出てきました。そして、センター試験では9割超え。これには周囲も本人も驚きでした。
最終的には、第一志望の国立大医学部に現役合格を果たしました。
圓岡太治(まるおか・たいじ)
三井能力開発研究所代表取締役。鹿児島県生まれ。小学5年の夏休みに塾に入り、周囲に流される形で中学受験。「今が一番脳が発達する時期だから、今のうちに勉強しておけよ!」という先生の言葉に踊らされ、毎晩夜中の2時、3時まで猛勉強。視力が1.5から0.8に急低下するのに反比例して成績は上昇。私立中高一貫校のラ・サール学園に入学、東京大学理科I類に現役合格。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。大学在学中にアルバイト先の塾長が、成績不振の生徒たちの成績を驚異的に伸ばし、医学部や東大などの難関校に合格させるのを目の当たりにし、将来教育事業を行うことを志す。大学院修了後、シンクタンク勤務を経て独立。個別指導塾を設立し、小中高生の学習指導を開始。落ちこぼれから難関校受験生まで、指導歴20年以上。「どこよりも結果を出す」をモットーに、成績不振の生徒の成績を短期間で上げることに情熱を燃やし、学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて難関大学に現役合格した実話「ビリギャル」並みの成果を連発。小中高生を勉強の苦しみから解放すべく、従来にない切り口での学習法教授に奮闘中。