『おでん二毛作』 @京成立石 ダシの香りに包まれて コの字カウンターは幸せオーラ全開 ナチュラルワインとおでんの店が増えているが、ここはその草分け的存在だ。 「ナチュラルワインはダシとの相性が抜群です。最近人気のオレンジ…
画像ギャラリー待ってたよ~待ってました!クツクツとダシの海で色んなおでん種が泳ぐさまは、まさに冬の風物詩。今回は、続々増えるおでん専門店の中でも群を抜いて「旨い!」なお店を厳選6軒集めました。
『関西煮 理(おさむ)OSAMU TOKYO』 @中目黒
彗星のごとく登場!三重県からやって来た関西煮が東京人を魅了する
「クジラでとったおダシです~」。席に着くと柔和な関西弁と透き通ったダシが迎えてくれた。飲めば雑味がなく、たっぷりの旨みが体に染み渡る。
ここは中目黒に現れるや話題を呼んだ関西おでんの名店。三重県津市出身の店主・加藤さんは、日本料理の修業に出た大阪でおでんに衝撃を受け、地元に帰っておでんの店を開いた。それから30年、地元メディアにも頻繁に登場する有名店となったのである。しかしその成功に甘んじることなく「一度は東京で勝負したい」と、昨年、単身中目黒に乗り込んだのであった。
関西煮と銘打った加藤さんのおでんは大阪ルーツ。種のバラエティが豊富で、何よりおダシが旨い。その秘訣はクジラにあった。クジラのコロ(皮下脂肪)を10日ほど水で戻し油を抜いている。きれいな旨みはダシに溶けだし、7日も煮込むとおでん種としても完成する。
おでんおまかせ盛り 2000円~
なんとも手がかかるが、地味な見かけに似合わぬ美味はジーンとしびれるようだ。関西おでんの定番・梅焼き(はんぺん)や三重のはんぺいなど、郷土色豊かなおでん種も東京人にはもの珍しく、さらにはノリのよい加藤さんの人柄もご機嫌。ベテラン過ぎるおでんの“新星現る”である!
[住所]東京都目黒区上目黒2-16-1 リードシー中目黒3階
[電話]090-8863-2562
[営業時間]18時~24時(23時LO)
[休日]無休
[交通]東急東横線中目黒駅から徒歩2分
『高円寺おつゆ』 @高円寺
店主渾身の“おつゆ”の風味をとことん堪能する
中野で鉄板料理がウリのネオ大衆酒場『ニューヨック中野』を営む“よっく”こと、坂野善一さん。「次に店をやるなら、カウンターの中央には鉄板ではなく、大好きなおでんの鍋をド~ンと置きたかったんです」。
その念願は叶い、2023年4月に『高円寺おつゆ』を開業。自慢の特注のおでん鍋には、坂野さんが敬愛する三鷹『おでん都』に通って取り方を習得したという、透き通るような黄金色のダシが満ち満ちている。
ここに来たら、店名に従って“おつゆ三昧”といきたい。着席したら、まず今日のダシがサービスで提供される。これを飲んだら、まずおでん。練り物はどれも自家製で、すり身はふわふわの食感だ。お次は、ダシで下味を付けた「から揚」。ダシをかけて食べる「カキフライ」もいい。酒もしっかり楽しんで、最後は炊き立てごはんで雑炊を。ダシの口福感で身も心も満たされることだろう。
[住所]東京都杉並区高円寺南3-58-17 ハウスポート高円寺ビル2階
[電話]03-6304-9276
[営業時間]17時半〜24時(23時LO)、土・日は17時〜
[休日]無休
[交通]JR中央・総武線高円寺駅から徒歩3分
『角打ち KAN』 @虎ノ門ヒルズ
話題のビル地下でバラエティ豊かな酒とおでんを満喫
2023年10月に開業を果たした『虎ノ門ヒルズ ステーションタワー』。飲食・物販店が軒を連ねる地下2階「T-MARKET」で、ほっと一息つけると評判なのが『角打ち KAN』。
1936年創業『榎本酒類』の直営店で、併設の「酒処エリア」にはコの字のカウンター席が広がる。その酒処エリアの名物が、北海道の日高昆布と静岡の花鰹の風味が滲むおでん。
【〆専用】出汁割り酒 550円、おでんのおまかせ 盛り合わせ5種 1155円
具材はベーシックなものから時期もの、「ミニトマト豚肉巻き」「アボカド」など変わり種までバラエティ豊かに揃うが、ダシの取り方がシンプルなぶん、どんな素材の旨みも受け止める懐深さがある。
また酒販店が母体なだけに、合わせる酒もさまざまと。「酒造りの神様」の異名をもつ『農口尚彦研究所』の日本酒をグラスでいただくもよし、個性的なサワーやハイボールも揃う。最後は〆専用の「出汁割り酒」を。身体をさらに温めて家路に着こう。
[住所]東京都港区虎ノ門2-6-3 虎ノ門ヒルズステーションタワー地下2階(T-MARKET内)
[電話]03-6205-4141
[営業時間]11時〜14時、17時〜23時(フード22時LO、ドリンク22時半LO)、土11時〜23時(LOは平日と同)、日・祝11時〜22時(フード21時LO、ドリンク21時半LO)※角打ちエリアの営業時間は異なる
[休日]無休
[交通]地下鉄日比谷線虎ノ門ヒルズ駅改札から徒歩2分
『おでん二毛作』 @京成立石
ダシの香りに包まれて コの字カウンターは幸せオーラ全開
ナチュラルワインとおでんの店が増えているが、ここはその草分け的存在だ。
「ナチュラルワインはダシとの相性が抜群です。最近人気のオレンジワインも合いますよ」というのはワインを愛する店主の日高さん。地元立石出身で、実家はおでん種などを作る蒲鉾店。つまりおでんとの付き合いは生まれた時から?そんな日高さんが繰り出す最高のおでんがこの店の主役。
グラスワイン 780円~、おでん(大根、あさり天 各280円、ちくわぶ、白滝 各130円)
つくねからあさり天などの練り物まで、おでん種もできる限り店で作っている。さらに、おでんだけじゃない間口の広さも魅力的。
ワインに始まり、骨太な日本酒、クラフトジンにウイスキーと酒はお気に召すまま。多彩な酒に合わせて、鮮度のいい刺身があるかと思えば、熟成ナチュラルチーズ、はたまた「純レバ焼」なんて下町らしい一品まで。しかも昼飲みにぴったりの午後2時開店とくれば、もう酒場としてパーフェクト!
[住所]東京都葛飾区立石1-14-4
[電話]03-3694-2039
[営業時間]14時~22時(21時LO)、土12時~20時(19時LO)、日14時~21時(20時LO)
[休日]月
[交通]京成本線京成立石駅南出口から徒歩3分
『うめが丘 ふかや』 @梅が丘
和食出身の店主が味噌と醤油の二刀流で攻める
おでんの店は数々あるけれど、味噌味と醤油味のふたつを同時に楽しめるというのは珍しい。店主の深山さんは「2種類あったら楽しいかなと思って」と笑う。
ダシは鰹節と昆布の合わせだが、鰹が強め。「鰹の持つ酸味を効かせたい」という。だから香りが豊かで、キリっと引き締まった味がする。
大根、さといも(味噌おでん) 各330円
醤油味の大根もよくツユが染みているが、味噌味の方は2~3日かけて炊くそうで、真っ黒に染まってこれまた堪らない。黒胡椒をパラリとしたしゃぶしゃぶ風のレタスや箸でちぎれるほど柔らかく煮込んだ味噌おでんの牛タンなど、変化球も充実。これならおでんが単調なんて言わせない!
和食で修業したという深山さんは、おでん以外のつまみもお手のもの。繊細な刺身あり、アジフライあり、ポテサラあり。〆には土鍋炊きの炊き込みご飯まで。和食店と居酒屋と、おでん店のいいとこどりである。
[住所]東京都世田谷区梅丘1-22-11 福井屋ビル1階
[電話]03-5799-6573
[営業時間]11時半~14時半(14時LO)、17時~23時(22時LO)
[休日]月・祝
[交通]小田急線梅が丘駅から徒歩2分
『都橋 おでん 久』 @野毛
名料理人が生んだ端正なおでんとつまみをカジュアルに
日本料理『青柳』の店主・小山裕久さんといえば、日本料理界の重鎮のひとり。『都橋 おでん 久』は、その小山さんが料理を監修し、元料亭の料理長が腕を振るうというなんとも贅沢なおでんの店だ。ともすれば家庭料理ともいえるおでんを、小山さんはどのようにアップデートさせたのだろうか。
「『青柳』でおでんは出しませんが、まかないでは作ります。素材によってダシを変える日本料理と違って、ひとつのダシに様々な具が入るおでんは楽しい料理ですね。それだけにダシが決め手となる」という。
そのダシには真昆布、血合抜きの鰹節、アゴ、しいたけなど最高級の素材を集めた。さらに日本中から13種類もの白醤油を取り寄せ、何パターンものツユを作ってとことん研究し尽くしたという。そうして完成したおでんのツユは、クリアだがおでんの具のよさを持ち上げる力強さを併せ持つ。
おでん盛り合わせ 1個410円〜
この自慢のツユと最もよく合うのが名物「エビ進上」だ。おでんのダシをはったお椀仕立てで登場するが、『青柳』のエビしんじょうと全く同じように作るというから、名店のDNAを受け継ぐ逸品だ。
「おでんは長く煮込めばいいと思われがちですが、それぞれの具ごとにちょうどいい煮上がりがある」と小山さん。そこを逃さず、素材の味や食感を生かすのも繊細な日本料理の技があればこそだ。
また、都橋という場所は飲み屋街・野毛の一角という土地柄。そこで「失われつつある横丁をビルの中に縦に再現してみました」と笑うのはオーナーの間部さん。ビルの上から下からを横丁気分ではしごして欲しいという。そんな現代の横丁で味わうハイレベルな和食とおでんが、この冬をもっと楽しくしてくれる。
[住所]神奈川県横浜市中区野毛町1-4-1 Kiara Garden Noge4階
[電話]045-325-8088
[営業時間]17時〜23時
[休日]無休
[交通]JR京浜東北線・根岸線桜木町駅から徒歩6分
撮影/鵜澤昭彦(理、高円寺おつゆ)、西崎進也(KAN)、松永直子(おでん二毛作、ふかや)、貝塚隆(久)、取材/岡本ジュン(理、おでん二毛作、ふかや、久)、岡野孝次(高円寺おつゆ、KAN)
※2024年1月号発売時点の情報です。
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