ニッポン“チャーラー”の旅

シン・エヴァ「第3村」のモデル駅入り口にあるラーメン店でチャーラーの理想形に出合う

シン・エヴァ「第3村」のモデル駅入り口にあるラーメン店でチャーラーの理想形に出合う

シン・エヴァ「第3村」のモデル駅入り口にあるラーメン店でチャーラーの理想形に出合う

チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。第31回は、静岡県浜松市へ。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の「第3村」のモデルになった駅にあるラーメン店で食べたチャーラーの話です。

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この日は昼すぎから浜名湖のホテルで撮影や取材の打ち合わせ。その前にせっかくだから周辺でチャーラーの店を探すことに。ところが浜名湖界隈にはうなぎ屋ばかりで町中華もラーメン屋も少なく、ソソられる店は見つからなかった。

店があるのは、エヴァファンの「聖地」となった駅

捜索範囲を思いっきり広げたところ、どうしても行きたい店が見つかった。ホテルからの距離は30km以上。片道1時間近くかかり、浜名湖へ行ったついでに立ち寄るレベルではない(笑)。それでも行きたくて、当日は予定よりも3時間早く自宅を出発した。

天竜浜名湖鉄道天竜二俣駅構内。ローカルな雰囲気に心が癒やされる

その店があるのは駅。とはいっても、メジャーな駅ではない。静岡県西部で掛川市の掛川駅から浜松市天竜区の天竜二俣駅を経て湖西市の新所原駅までを結ぶ天竜浜名湖鉄道の「天竜二俣(てんりゅうふたまた)駅」の改札外にある

ちなみにアニメ映画『シン·エヴァンゲリオン劇場版』に登場する「第3村」がこの駅をモデルにしていて、聖地巡礼に訪れるファンも多いという。

駅へ到着したのは、営業開始30分前の10時半すぎ。にもかかわらず、すでに数人の客が店の前で待っているではないか。作業服やスーツ姿なのでエヴァのファンではなさそうだが、平日でも行列ができる人気店のようだ。

店は駅入り口に隣接。『ホームラン軒』という店名もソソられる

11時になり、お店の人が扉を開けてお出迎え。筆者は窓際のカウンター席へ座った。メニューを見ると、ラーメンは醤油味の「中華そば」のほか、塩味やみそ味、とんこつ味の4種類。それらをベースに「ワンタンメン」や「塩バターラーメン」、「ネギみそラーメン」、「パワーラーメン(味玉とキムチ入り)と細分化されている。

選ぶのに迷ったが、やはりここはシンプルな「中華そば」(650円)に決定! あれ? 醤油味も「こく醤油」と「さっぱり醤油」から選ぶことができるのか……。これもまた迷うなぁ。ん? メニューをよく見ると、「★オススメはこく醤油の中華そばです!!」とある。では、素直に従おうではないか。

チャーハンは、並の「チャーハン」(550円)と「半チャーハン」(350円)があり、お腹が空いていたので並盛にした。

チャーラーをよりおいしくさせるのは「旅情」

まず、運ばれたのは「中華そば」。2枚のチャーシューとメンマ、ナルト、小松菜、海苔、ネギと盛りたくさんの具材が美しく盛り付けられている。もう、このビジュアルからして絶対に旨いよね。中華そばのイメージ写真に使えるくらいのレベルではなかろうか。

こく醤油の「中華そば」。醤油の味と香り、スープの旨みのバランスが秀逸

まずは、スープをひと口。うん、想像していた通り、醤油の味と香り、そしてコクが素晴らしい。ベースとなるスープも旨みがしっかりと伝わってくる。これはヒットではなく、やはりホームラン級の旨さだ。

麺はやや縮れのある中細。これがまたスープに絡み、そして旨みを吸って、噛むごとにジュワッとおいしさが溢れ出す。もうたまらん!

そして、時間差で運ばれたチャーハン。これもまたシンプルこの上ないビジュアルだが、お米の一粒ひと粒に油がコーティングされているのがわかる。厨房から中華鍋の振る音がリズミカルに聞こえてきたから、調理技術も確かなのだろう。

金色に輝く「チャーハン」。中華そばのおいしさを引き立てる

では、再び中華そばのスープをひと口飲んで、いざ、チャーハンを実食。

オーッ! これもまた米粒にしっかりと染み込んだチャーシューの旨みや塩味が中華そばのスープでさらに引き立つではないか! そして、噛むごとにお米の甘みが相まって、もう、口の中が幸せすぎる

中華そばもチャーハンもシンプルというひと言に尽きるため、正直、これ! という特徴は見当たらない。しかし、互いに持ち味を引き立て合う、チャーラーとしては理想的なスタイルだと言ってもよいだろう。

それと、おいしさの秘密はもうひとつ。名古屋駅のホームにある立ち食いのきしめんと同様に、駅の中というこのシチュエーションだ。チャーラーを食べにわざわざここまで来たという旅情が通常の1.3倍くらいはおいしくさせるのだ。それがチャーラーの旅の醍醐味でもある。

取材・撮影/永谷正樹

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