チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」…
画像ギャラリーチャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。第37回となる今回は、三重県亀山市へ。豆味噌文化圏で育った永谷さんにとってはあまり食べない白味噌のラーメンでチャーラーを実食。そこで受けた衝撃とは!?
信州産白味噌がベースの「白熊ラーメン」
この日は午後イチから三重県亀山市で取材。その前に腹ごしらえをしようと立ち寄ったのが、『白熊ラーメン 亀山本店』。白熊といえば北極。極寒の地で食べたくなる熱々のラーメンをイメージしているのだろうか。しかも、店の看板には亀山とはまったく関係のない「信州の白味噌」、「北海道赤みそ」の文字が。
店名にある通り、ここが本店のようだが、以前、四日市で同じ店名の店の前を通りかかったことがある。と、いうことはローカルチェーンなのだろうか。まぁ、それはどうでもよい。亀山もしくは三重ならではのメニューがあれば、ぜひ食べてみたいと思って事前にリサーチをしておいたのだ。
メニューを見ると、亀山の名を冠した「亀山ラーメン」(950円)なるラーメンもある。こちらは地元産のきのこと地元産小麦を使った特製麺、特製味噌を使用しているらしい。これを注文しようと思ったが、「白熊ラーメン」(840円)という店名がそのままメニュー名になったラーメンを見つけてしまった。
こちらは、信州産の白味噌がベースの看板メニューで「当店一番人気」とある。さんざん迷った挙げ句、ラーメンは「白熊ラーメン」に決めた。初めての訪問ゆえに、やはり店の名物をおさえておこうと思ったのだ。半チャーハンのセット(455円)もあったので、それも注文した。
お腹が空いていたので、半チャーハンではなく、チャーハンの中にした方がよかったという考えも頭をよぎったが、メニューをよく見ると、「中はしっかり大は特盛」とある。ということは、小(半)でも十分にボリュームがあることも期待できる。
味噌ラーメン+チャーハンも十分アリ
ところが、「白熊ラーメン」が運ばれた瞬間、その期待は吹き飛んでしまった。何しろ、量がハンパないのだ。写真では伝わらないかもしれないが、モヤシがてんこ盛りで麺の量もしっかり。これ1杯で満腹になるのは確実だ。
それにしても、三重県、というか東海地方で味噌ラーメンが名物の店というのは少数派だろう。豆味噌文化圏で生まれ育った筆者にとって信州産の白味噌は食べ慣れていないため、評価が辛口になってしまうかもしれない。
まずはスープをひと口。想像した通り、白味噌ならではのほのかな甘みが気になる。やはり、味噌は豆味噌でなくちゃ、と思いきや、食べ進めるうちに甘みよりもコクがだんだんと広がってくるではないか! あれ? うっ、旨い!モヤシのシャキシャキとした食感も素晴らしく、やや縮れがある中太麺もスープがよく絡んで美味しい。
三口ほど食べたところでチャーハンが目の前に運ばれた。想像通り、半チャーハンにしては量が多い。半ではなく七分といったところか。
具材はチャーシューとネギ、玉子、そしてコーン。コーンを入れるのは、彩りの良さもあるだろうが、噛んだときに広がるほのかな甘みが心を和ませる。きっと、子どもにも喜ばれるだろう。
味付けも濃すぎず、薄すぎず、絶妙なバランス。味噌ラーメンとの相性もとてもよかった。チャーラーのラーメンといえば、鶏ガラベースのあっさり醤油と思い込んでいた部分が少なからずあった。味噌ラーメンも十分アリということを今回の旅で思い知らされた。やはり、チャーラーは奥が深い。
「白熊ラーメン」とのセットはかなりのボリュームで完食できるか不安だった。ところが、あまりのおいしさに気がついたら器が空っぽになっていた。
飲食店はその国の文化である
食べ終わって店を出ると、出入り口にこんな貼り紙が。入店時にはまったく気が付かなかった。たしかに広い店内でスタッフは総勢2名。ふたりが料理を作り、同時に接客もこなしていた。役割分担する余裕がないのだ。
帰宅後、『白熊ラーメン』について調べてみると、やはり四日市にも支店があり、残念なことに2023年9月末に閉店している。その原因は人手不足だったのだろうか。
飲食店を取材すると、やはりスタッフを募集しても集まらないという話をよく耳にする。スタッフがいないからランチやディナーの営業を休むという話も。これは由々しき事態である。
飲食店は、その国の文化である。それは紛れもない事実である。作り手がいなくて文化が失われるというのは残念すぎるし、悲しすぎる。10年後、20年後も生き残り、後世に文化として伝えていくために今、何を為すべきか。チャーラーの旅をしながら考えていこうと思う。
撮影・取材/永谷正樹
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