都内の名店がこぞって指名「愛知・三河一色産うなぎ」 現地で美味しさの秘密とオススメ店を探る

都内のうなぎ店を取材する中で、うなぎの産地を聞くとよく名前が挙がるのが、「三河一色産」。実力店がこぞって指名するが、その産地を訪れたことはなかった。そこで、愛知在住のライター・永谷氏が養鰻場へ。一色うなぎの名店と共に、名産地の今をお届けします。

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都内のうなぎ店を取材する中で、うなぎの産地を聞くとよく名前が挙がるのが、「三河一色産」。実力店がこぞって指名するが、その産地を訪れたことはなかった。そこで、愛知在住のライター・永谷氏が養鰻場へ。一色うなぎの名店と共に、名産地の今をお届けします。

『うなぎ処 いっしき』

養鰻場のうなぎを組合直営店で食す

一色うなぎ漁業協同組合直営のうなぎ料理店として2019年6月にオープン。備長炭で焼き上げる技術やバランスのとれたタレの味付けは、かつて「一色さかな広場」内に出店していた直営店から継承。

定番の丼やお重、ひつまぶしの他、注目したいのは、2020年にオープン1周年を記念してメニューに加えられた「わさび菜まぶし」(3600円)。

わさび菜まぶし 3600円

『うなぎ処 いっしき』わさび菜まぶし 3600円

ご飯に敷き詰められたわさび菜のお浸しの爽やかな辛みがうなぎのおいしさを引き立てる唯一無二のメニューだ。

『うなぎ処 いっしき』

[住所]愛知県西尾市一色町小薮船江東176
[電話]0563-65-0141
[営業時間]11時~15時(受付は10時半~14時)※土・日・祝は10時半~15時(受付は10時~14時)
[休日]水
[交通]名鉄西尾線吉良吉田駅から車で13分

『うなぎの兼光 本店』

平日でも行列必至の人気店

一色で養鰻から加工、販売まで手がける兼光グループの直営店。料理に使用するのは、自社と提携先の養鰻池から池揚げされた中から厳選した脂ノリの良い大きなうなぎ。

焼きにこだわり、強火で焦げ目がつく寸前まで焼き上げることで、身はふんわりと皮はパリッと仕上がっている

うな肝丼 3300円

『うなぎの兼光 本店』うな肝丼 3300円

旨みとともに口の中いっぱいに広がる皮と身の間にある脂を堪能するには、やはり丼だ。人気は8尾分の肝焼きがのる数量限定の「うな肝丼」(3300円)。深いコクのある肝焼きと蒲焼きを同時に食べるのがおすすめだ。

『うなぎの兼光 本店』

[住所]愛知県西尾市一色町藤江蛇池30-3
[電話]0563-73-6688
[営業時間]11時~14時半(14時LO)、17時~20時(19時半LO)
[休日]火 ※祝の場合は営業、翌日休
[交通]名鉄西尾線吉良吉田駅から車で11分

『うなぎ割烹 みかわ三水亭 はなれ』

うなぎ職人が考案したコース料理が秀逸

養鰻業が盛んでありながら、うなぎ専門店がなかった一色で2009年に初めて出店したのが『みかわ三水亭』本館だ。2017年にオープンしたはなれは、全席個室で要予約。慶事や法事の食事会や接待などで重宝されている。

鰻尽くしの和コース「花」 6000円

『うなぎ割烹 みかわ三水亭 はなれ』鰻尽くしの和コース「花」 6000円

本館と同様にひつまぶしやうな丼なども用意しているが、はなれで提供されているのが「鰻尽くしの和コース『 花』」(6000円)などのコース料理だ。

「うなぎの干物」や「うなぎの餃子風」、「うな茶そば」など、うなぎを知り尽くした職人が趣向を凝らした全6品の創作料理を堪能できる。

『うなぎ割烹 みかわ三水亭 はなれ』

[住所]愛知県西尾市一色町坂田新田西江95-10
[電話]0120-717-819
[営業時間]11時~14時半(14時LO)、17時~20時(19時半LO)※夜の営業は土・日・祝のみ
[休日]水
[交通]名鉄西尾線吉良吉田駅から車で9分

天然に近い環境で育てる一色産うなぎ

名古屋市内から一色漁協まで車で約1時間半。まずは漁協の敷地内にある「立て場」と呼ばれる場所へ案内された。立て場とは、養鰻池から運ばれサイズごとに選別されたうなぎを地下水に数日間さらし、泥臭さを抜く施設のこと。

『一色うなぎ 漁業協同組合』立て場の全景。ヨリ台を立て場中央のスペースに移動させて、池揚げされたうなぎを運搬してきたトラックから直接ヨリ台に入れて選別する

立て場ではうなぎの選別作業が行われていた。目視と掴んだ際の手の感触だけでサイズ別に選別する様はまさに職人技だ。この日、池揚げされたのは、年明けから約180日間育てた「新仔うなぎ」。

『一色うなぎ 漁業協同組合』うなぎをサイズごとに選別していく。目視とうなぎを握った際の触感のみで重さや太さを瞬時に選別するには、経験と技術が必要だという

「一色産うなぎは、身も皮も柔らかく、口の中でとろけるような味わいの新仔うなぎを指します」と話すのは、若手のうなぎ生産者グループ「一色うなぎ研究会」の会長、田中亮介さんだ。

新仔うなぎにもかかわらず、大きくて太いうなぎを生み出す技術が、ここ一色町で長年にわたって確立されてきたのであろう。立て場から養鰻池に場所を移して田中さんに話を聞かせてもらうことに。

「一色うなぎ研究会」会長の田中亮介さ ん。若手のうなぎ生産者同士で情報交換をすることで互いに養鰻技術の向上を目指している

一色町における養鰻の歴史は古く、1904(明治37)年頃から始まった。農業との兼業だったが、1959(昭和34)年の伊勢湾台風で水田に壊滅的な被害が出たことから、養鰻が急速に発展したという。

1962(昭和37)年には一色うなぎ漁協の前身である西三河養殖業漁協が設立された。

「1961(昭和36)年から矢作古川の河川水を利用するための養鰻専用水道が整備され、昭和40年代後半からビニールハウスでの加温式温水養殖が開始。効率の良い養殖方法を確立しました」(田中さん)

西尾市内を流れる矢作古川にある古川頭首工。養鰻池のあるエリアから北へ8キロほどの場所にあり、ポンプで汲み上げた水が送水される

養殖の設備等のシステムもさることながら、養鰻池にもこだわりがある。コンクリートに覆われた養鰻池が一般的だが、一色では底面を砂利や土で作り、限りなく天然に近い環境でうなぎを育てている

うなぎにストレスを与えない

養鰻池のうなぎの数も重要で、養鰻が盛んな九州では、1坪あたり200尾~300尾。対して一色では、うなぎにストレスを与えず、すべてのうなぎに餌が行き渡るよう100尾~150尾と敢えて少なくしている。量よりも質を重視しているのである。

一色うなぎ漁協の養鰻池。水温は30℃前後にキープされている

ところが、昭和50年代に外国産うなぎの輸入量が増大すると、国内の養鰻業は厳しい状況に陥った。西三河養殖業漁協は、1992(平成4)年に一色うなぎ漁業協同組合へと名称を変更し、一色産うなぎのブランド化を目指した。

「2006(平成18)年に一色産うなぎは特許庁の地域ブランド(地域団体登録商標)に認定され、一般消費者にも一色産うなぎが認知されるようになりました」(田中さん)

一色うなぎ漁協は愛知県水産試験場と共に新たなブランドうなぎ「葵うなぎ」を開発している。一般的なうなぎよりも約2倍の大きさで、新仔うなぎと同様に、身も皮も柔らかいという。ほとんど市場には出回っておらず、うなぎの出荷量が減少する秋から冬に売り出すべく量産化を目指しているそうで、実に楽しみだ。

『一色うなぎ 漁業協同組合』

[住所]愛知県西尾市一色町対米船原18
[電話]0563-72-8847

『一色うなぎ 漁業協同組合』

取材・撮影/永谷正樹

2024年8月号

※2024年8月号発売時点の情報です。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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