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群馬県前橋市の「食」が面白い。古くから地元の人に愛されてきた名店もいくつもあるが、ここ数年、おしゃれで、新しい店が何軒もオープンしている。前橋出身の筆者としては、紹介したい店はいくらでもあるのだが、キリがないので、この記事では、「ここ数年でできた新店」「しゃれオツ系」にしぼって紹介したい。

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老舗「白井屋旅館」が現代アートホテルとしてリニューアルオープン

18歳で前橋を離れ、すでに人生の大部分は東京で過ごしている筆者だが、もちろん生まれ故郷には愛着がある。子どもの頃、お祭り騒ぎのような賑わいを見せていた商店街が衰退し、帰省のたびにゴーストタウン化していくことには一抹のさみしさを感じていた。同時に仕方ないとも思っていた。新幹線も通っていない(上越新幹線の群馬県内の駅は「高崎」と「上毛高原」)、なんの特徴もない地方都市に誰が、用事もないのに訪れるというのだ。

その前橋に大きな転機が訪れたのは、2020年12月のことだ。300年以上の歴史を誇った「白井屋旅館」が廃業後、70年代の既存建物を、今をときめく建築家の藤本壮介氏が改装を手がけるかたちで、「白井屋ホテル」がオープンしたのだ。同ホテルの特徴は、なんといっても国内外のアーティストやデザイナーが協演を果たしているところ。

「白井屋ホテル」内に設けられたハーブガーデン

たとえば、4層の床を抜いた吹き抜け大空間には、アルゼンチン出身の現代アーティスト、レアンドロ・エルリッヒ氏による煌びやかな作品《ライティング・パイプ》が張り巡らされている。エルリッヒ氏は、さらに、唯一無二の“泊まれるアート作品”であるコラボレーションルームも手がけた。

レアンドロ・エルリッヒ氏によるインスタレーション《ライティング・パイプ》

フロントには、現代美術家の杉本博司氏の代表作「海景(かいけい)」シリーズから写真《ガリラヤ湖、ゴラン》が掲げられ、ゲストを出迎える。新設された建物の屋上部分に設置された、宿泊のゲストのみ入ることができる小屋には、現代美術家の宮島達男氏の立体作品が飾られている。いま紹介したのはほんの一部。とにかく至るところにアートが点在している。

メインダイニング「ザ・レストラン」のある日のコース料理より

海なし県・群馬で養殖した「ヒラメ」が絶品

この「白井屋ホテル」の誕生を機に、全国、いや全世界から、建築好き&アート好きが、前橋にやってくるようになった。そして、同ホテルのメインダイニング「ザ・レストラン」がまた楽しい。群馬県の素材を積極的に使用した、フランス料理の手法で仕立てた「上州キュイジーヌ」を提供しているのだ。ディナーコース1万6500円、ペアリング(アルコール・ノンアルコール・MIX)1万円。(いずれも税込・サービス料別)。シェフ、ソムリエ共に群馬県出身。季節を変えて、何度か足を運んでいるが、毎回、必ず何かしらの驚きがある。

印象に残っている料理はいくつもあるが、海なし県で養殖した「まえばしヒラメ」には度肝を抜かれた。そもそもそんなヒラメが存在しているのを知らなかったし、筆者がこれまで食べたヒラメの料理のなかで、いちばん美味しかった。

「群馬の朝ごはん」(和食)。「炊き立てのご飯、身も心も温める味噌汁祖母の作った卵焼き、母から受け継いだ糠漬け、地元食材をふんだんに使った副菜」など、片山シェフの幼少期の『思い出』の献立で構成されている

メインダイニングのシェフ、片山ひろ氏が監修した、朝食「群馬の朝ごはん」(3800円。税・サービス料込)も郷土愛にあふれている。和食と洋食を用意しているが、舞茸の炙り、下仁田納豆、地鶏のオムレツ、赤城山麓に位置するヒュッテハヤシのベーコンとソーセージなど、いずれも群馬の食材の豊かさを十分に味わえるラインナップで構成。事前の予約で、宿泊のゲスト以外も利用可能だ。ちなみに、先日、ホテルに行った際は敷地内の畑でハーブを育てていた。料理やカクテルに利用するそうで、今後の展開も楽しみだ。

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ハイレベルなフランス料理、ランチで手軽に楽しめるのがうれしい...
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この記事のライター

長谷川 あや
長谷川 あや

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