1ヵ月うなぎ食べまくり!覆面調査隊が教える「新店の実力」と「うなぎ業界の新トレンド」

2024年、最近出店した新店の傾向は如何に?過去掲載のザ・ベスト店は何がスゴイのか?地方旅で出合った超感動の味とは?そしてうなぎ業界の最新情報から知られざる(!?)豆知識まで!2024年8月号で「うなぎ」特集を担当したライター池田・菜々山・肥田木&編集武内・戎が汗と涙の取材を振り返り、日本人が愛してやまないうなぎの今、そしてこれからを語ります。

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2024年、最近出店した新店の傾向は如何に?過去掲載のザ・ベスト店は何がスゴイのか?地方旅で出合った超感動の味とは?そしてうなぎ業界の最新情報から知られざる(!?)豆知識まで!2024年8月号で「うなぎ」特集を担当したライター池田・菜々山・肥田木&編集武内・戎が汗と涙の取材を振り返り、日本人が愛してやまないうなぎの今、そしてこれからを語ります。

今年大注目の新店の実力に感涙

武「今年もやってきました、うなぎ特集。今回は新店に加え、過去に掲載した中でも特にココ!というザ・ベスト的な店や旅の目的にしたいうなぎ店等を紹介しています。だからいつもよりリサーチは少なめ。いやあ、残念なようなホッとしたような(笑)」

戎「武内さん、前回の特集では2週間で25軒食べてましたもんね。今回僕は新店リサーチで結構きつかった!でも見つけましたよ、自分の一番を超える店を。この道50年以上の店主と、その息子さんが営む『神楽』です」

『うなぎや 神楽(かぐら)』うな重(上) 7700円

『うなぎや 神楽(かぐら)』うな重(上) 7700円 身はふっくら盛り上がり均一で美しい飴色をまとった見た目からも職人の腕前が伝わってくる。「四万十鰻」のほか「かぐや」などのブランドうなぎを使用する。半身を使用する「並」は4400円

菜「7月開店の大注目店だね。校了ギリギリで取材が間に合った。ちょい高いけどハチャメチャに旨いよ。使うのは『四万十鰻』などのブランドうなぎで、親父さんが納得したものだけ。腕もピカイチ」

戎「そう、思い出すと恍惚……確かに高いけどがんばって働いて、もしくは競馬で当てて(笑)、また食べに行きたい!」

池「って、うな重いくら?」

菜「上で7700円だね」

肥「ひょえ~蒲田の立ち飲みなら3軒行けるじゃんっ」

池「あはは、肥田木さんは飲み命だもんね。で、他の新店の傾向はどうだった?」

戎「やはり関西風地焼きが増えてますね。なので調査序盤は関東風を食べる機会が少なくて。だからこそザ・ベストで掲載の『はし本』で食べた時はこれぞ江戸前と思うふっくらした味に感激」

『八重洲 鰻 はし本』鰻重「ろ」 5280円、肝吸 275円

『八重洲 鰻 はし本』(手前)鰻重「ろ」 5280円、(右奥)肝吸 275円 美しい飴色に惚れ惚れ。キレがある後味のタレは質のいいうなぎをくぐらせて深みを重ねたもの

肥「私もそうだけど、ココはヒロシ(注:編集長)もおすすめの店なんだよ~。養鰻池を指名買いするほど質にこだわってるし、まるで工芸品のような美しい姿と江戸前の仕事は老舗の矜持。しかも値段も高過ぎない。歴史も味も値段も店主の姿勢も全部いい。今は建て替え中のため仮店舗だけど、今秋に完成する新店はカウンターで江戸前の仕事を見られる造りなんだって。ヒロシ誘って行こ~っと」

菜「食べて飲んで全部ゴチになりますって訳ね、同行するわ(笑)。私のお気に入りはとろけるような口当たりの『わたべ』とキリッと辛口のタレがいい『梅田』。ここに肩を並べる店は何年も出てない。先の『神楽』は今年エース入りしたけど」

味わいに生命力や深み、余韻…一色産

池「俺も浜松、東京、千葉と食べ歩いてみて、やっぱうなぎは“もの”と“仕事”によって味わいが違うと実感した。“もの”の良さは『うな正』の共水うなぎと、ザ・ベスト『高瀬』の生産者にこだわる“健康なうなぎ”。

それと別角度で『鰻家』の一色産6年もの。前のふたつはきれいな水と自然な餌(抗生剤など薬剤を使わない)でストレスを与えずゆったり育てているから脂も味もきれい。澱みなくうなぎを感じられる。後者は味わいに生命力や深み、余韻がある」

『鰻家(うなぎや)』うな重 特上 7150円

『鰻家(うなぎや)』うな重 特上 7150円 見た瞬間に旨そうな黄金色の焼き上がり。どちらかといえばさらりとしたタレも塩梅よく、うなぎ自体の旨さを引き立てる。「特上」はお重からはみ出んばかり。「特」は4950円で味わえる

菜「6年ものってすごい」

池「でしょ?若いうなぎ(新仔)は皮が柔らかく小骨も細い。対して1年以上経過したうなぎ(ヒネ仔)は皮も硬く小骨も太くなる傾向があるんだけど、やっぱ特筆すべきはこの道70年の店主の焼きな訳よ。白焼きで何度も返しながら小骨を焼き切るようにしてとろとろにしちゃう。焼き一生というけどスゲー」

肥「小骨が気になる店ってあるよね。『安川』の店主は丁寧に毛抜きで取るそう。町場の店だからお客に子供も多いし、1回でも小骨が喉に刺さったらトラウマになるじゃん。おいしさのためはもちろん、小骨でうなぎ嫌いになってほしくないんだって」

武「素材の吟味、蒸し&焼き加減、タレの濃さ、ご飯とのバランス……各店とも考え方や手法が違うので、改めて今回の特集は自分のベストを見つける参考になるかと。比べて活用してほしいですね」

肥「私は肉厚&中まで熱々ふかふかで何というか勢いのある仕上がりが好み。希少な青うなぎを割きたてで提供する『流木』が近い」

『町田 うなぎ 流木』上うな重(肝吸い・香の物付き) 6300円

『町田 うなぎ 流木』上うな重(肝吸い・香の物付き) 6300円 上質な脂とクセのない身は厚くてふっくら。コク深いタレが食欲をそそる。タレは米にかける飯ダレと肝焼き用とそれぞれ違う調合を使い分けるそう。米は青森の農家直送

武「僕は蒸しやや長め、焼きはしっかり、タレはほんのり甘めが好き。が、岡山で食べたシャコうなぎは白焼きが美味でした。肉厚で脂も乗っていて、旨み、甘みが養殖とはひと味違う。たっぷりのわさびと食べれば鮮烈さで甘みが際立ち、大ぶりな1尾もあれよあれよという間に無くなって。地酒と合わせれば感動の旨さでしたよ」

菜「うん、シャコうなぎは味がものすっっごく濃かった!関東風とは味も食感も別物。でもこれを蒸しの入った関東風で食べたいとも思っちゃった。岡山の漁師さんのところで買い付けて、そのまま新幹線でトンボ帰りして、どこかの店で関東風に仕立ててもらうってことをしてみたい」

池「俺は浜松取材だったから関東風と関西風の境目ということもあってそこにも注目して食べていたんだけど。その中でも『鰻丸』の地焼きはレベルが飛び抜けてて驚いた。適度に脂が落ちてこんがりした外側はサクサクサクの食感。中はとろり。関東風とはまるで違う世界観だけどウメー!また行きたい」

菜「地方だと値段もぐっと下がるし、うなぎ目当て&観光の旅は大いにアリだよね」

うなぎ業界に新しいトレンド?

池「もうひとつ浜松で驚きの出合いはうなぎの刺身。『魚魚一』のそれはフグの薄造りのような弾力で、噛むと甘い脂の旨みが溶け出して旨い。ぜひ味わってほしい」

『魚料理専門 魚魚一(とといち)』うなぎの刺身 2980円

『魚料理専門 魚魚一(とといち)』うなぎの刺身 2980円

戎「浜松はうなぎの多種多様楽しみ方ができる街でしたね。僕は生産地である愛知の三河一色にも取材に行き、『一色うなぎ漁業協同組合』のみなさんにお話を聞いたのですが、3代目となる若手の方が団結して一色うなぎを盛り上げようとしている姿には感銘を受けました。

今後は『葵うなぎ』というブランドを新たに立ち上げるとのこと。エサを工夫して雌化させると。和牛と同じで雌が好まれる動きはうなぎ業界のトレンドになるやも?楽しみです」

武「雌化の技術開発も含め、少しずつですがうなぎの生態もわかってきています。卵からの完全養殖がキチンと確立し、もう少し気軽に食べられるようになるといいですね。

では、まとめます!うなぎのうの字は『うまい』のう。なの字は『なつの味わい』のな。ぎの字は『で、ギンギンだぜ』のぎ。決まった♪」

肥「へ~、アナタの場合、蓄えた脂でギトギトのぎ、がピッタシかと。ひゃはは」

武「『う』うるさいぞ『な』ななの酒癖『ぎ』ギネス級。今年もうなぎで猛獣ライターの扱いも酷暑も乗り切りまーす!」

取材で聞いた現代うなぎの豆知識

【豆知識1】雄が9割以上だが雌化が進む!?

養殖で飼育したうなぎは9割以上が雄になるといわれる。雄は成長すると皮や身が硬くなるため、早い段階で出荷されることが多い。

ところが技術開発により、うなぎの稚魚のシラスウナギに大豆イソフラボンを混ぜた餌を与えると、飼育期間の長さもあるが、そのほとんどが雌になるのだそう。雌は雄に比べて大きく、身質も柔らかくておいしいとか。

『和膳 玄多(くろだ)』

【豆知識2】山椒は身とご飯の間にかけるべし

山椒の使い方。ある店主によると「うなぎに山椒を直接振りかけるのではなく、身を持ち上げ、ご飯との間にハラリと振る」のがおいしく味わうコツだそう。つまり直接だと山椒が舌にダイレクトに当たるため、うなぎの味がわかりにくくなるからでは?もともと山椒は臭み消しだった訳だし、今の養殖うなぎはクセがほとんどない。山椒ナシもおすすめ。

【豆知識3】天然のおいしさは生育地と餌次第!

天然うなぎは(そのうなぎが育った)川の風味を楽しむ心持ちで味わうのがいいとのこと(『しま村』会長)。天然は獲れる場所や餌等が味に大きく影響する。

川独特の風味まで楽しみたい人は天然を、クセが苦手という人は養殖がいいのでは。ただし天然はきちんとした仕入れの店で食べること。何を食べて育ったかわからないモノはおいしくないことも。

【豆知識4】天然の旬は秋から養殖は今が旬!

土用の丑の日があるため、うなぎの旬は夏と思われがち。けれど天然でいえば本来の旬は9~10月頃から初冬だ。12月頃からの冬眠に備えてしっかり栄養を蓄えるこの時期は身に脂が乗って一番おいしくなるという。天然を食べるなら秋冬を狙うべし。一方、養殖は夏の需要増に合わせて飼育されているので、皮も身も柔らかい6~8月頃が旬。今です!

撮影/小島昇(神楽、 魚魚一 )、貝塚隆(はし本)、西崎進也(鰻家、流木)、文/肥田木奈々

2024年8月号

※2024年8月号発売時点の情報です。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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