自動車検査登録情報協会の発表によると、令和5年(2023年)3月末における乗用車の平均車齢(保有年数)は9.22年で、前年に比べ0.19年延びた。31年連続で長期化しており、29年連続で過去最高を更新している。経済的な理由や、クルマへの愛着など理由は様々だろう。ところが、保有年数が13年を超えると、自動車税や重量税が値上がりしてしまうのだ。その仕組みを解説する。
画像ギャラリー自動車検査登録情報協会の発表によると、令和5年(2023年)3月末における乗用車の平均車齢(保有年数)は9.22年で、前年に比べ0.19年延びた。31年連続で長期化しており、29年連続で過去最高を更新している。経済的な理由や、クルマへの愛着など理由は様々だろう。ところが、保有年数が13年を超えると、自動車税や重量税が値上がりしてしまうのだ。その仕組みを解説する。
13年超えで2L以下の普通乗用車の自動車税は4万5400円
今は古いクルマを所有すると、高額の税金を納める必要がある。増税される税金は、自動車税/軽自動車税と自動車重量税だ。
これらの内、自動車税と軽自動車税は、最初の登録(軽自動車は届け出)から13年を超えると増税の対象になる。例えば2019年9月末日以前に新規登録を受けた1501~2000ccエンジンを搭載する小型/普通乗用車では、自動車税は年額3万9500円が基本だ。それが最初の登録からに値上げされる。金額にして1万5000円、比率に換算すると15%の値上げだ。
軽自動税は、2016年3月末日以前に届け出された場合は年額7200円になる。これが最初の届け出から13年を超えると1万2900円に値上げされる。増税額は5700円で、比率に換算すれば約80%の値上げだから1.8倍に増えてしまう。
自動車重量税は13年と18年の2段階の増税
自動車重量税は、2段階にわたって増税される。登録や届け出から13年を超えると最初の増税が行われ、さらに18年を超えるとさらに税額が増える仕組みだ。
例えば車両重量が1001~1500kgの小型/普通乗用車では、エコカー減税車を除くと、継続車検時に納める2年分の自動車重量税は2万4600円だ。それが13年を超えると3万4200円に増税される。9600円の増税で、比率に換算すると約40%、つまり税額が1.4倍に増える。
18年を超えると3万7800円だから、増税を受ける前の2万4600円に比べると1万3200円の増税で、比率に換算すると1.5倍以上に達する。
本当に環境負荷の少ない車両への乗り替えになっているのか?
古いクルマを増税する理由は「環境負荷の少ない車両への乗り替えを促進するため」としている。設計の新しい車種には新しい環境技術が採用され、燃料消費量や二酸化炭素の排出量が少ない。そこで新型車に乗り替えてもらうために増税するわけだ。
見方を変えると、自動車税と軽自動車税のグリーン化特例、自動車重量税のエコカー減税によって環境負荷の少ない車両の税額を安く抑える代わりに、環境負荷の高い車両を増税してバランスを取っている。
ただしこの考え方と制度には誤りが多い。まず減税や増税のベースになる燃費基準は、車両重量と燃費数値のバランスで決まる。そのためにボディの重いハイブリッドなどは、燃費数値自体が悪くても税額が大幅に安くなる場合があるのだ。
逆に車両重量が700kg以下に収まるスズキアルトは、13年を超えた車両でも燃料消費量は少ない。それでも古くなれば軽自動車税と自動車重量税が増税される。
また新車を製造したり流通させる時にも二酸化炭素は排出される。特に電気自動車などに使われるリチウムイオン電池は、製造過程で二酸化炭素の排出量が多いとされる。そして走行距離の少ない場合は、新車に乗り替えても、二酸化炭素の抑制効果が発揮されるまでには長い時間要する。
低燃費でも、製造/流通時の二酸化炭素排出量をなかなか取り戻せない。
税金値上げで何が起こっているのか?
しかも最初に登録や届け出をしてから13年を超えた車両のユーザーには、生活に困窮している人も多い。例えば公共の交通機関が未発達な地域では、高齢者が古い軽自動車を毎日の買い物や通院に使っている。運転免許を返納したくても、クルマがなければ病院にも行けない。せめて衝突被害軽減ブレーキを装着したクルマを買いたいが、高価で購入できない。
あるいは新型コロナウイルスの流行で所得が減り、13年を超えた車両を使い続ける人もいる。昨今の納期遅延のため、納車を待つ間に車検を取り、13年を超えてしまうこともある。このような困っている人達、仕方なく古いクルマを使う人達を増税で攻め立て、無理矢理に新車を買わせようとするのが今の自動車税制だ。
自動車工業会は「日本は税金が高い!」と主張しても「増税をやめろ!」とは言わない。増税が不幸を生み出す悪法でも、クルマの販売促進に貢献するからだ。結局のところ、自動車業界と国は結託している。
「古いクルマのユーザーが増税に耐えれば、国の税収が潤う。増税に苦しんだ揚げ句に新車を買えば、自動車業界が儲かる」という構図が成り立っている。だから困っている人達を攻め立てる増税が続くのだ。
文/渡辺陽一郎(わたなべ よういちろう):自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。執筆対象は自動車関連の多岐に渡る。
写真/トヨタ、スズキ、Adobe Stock(アイキャッチ画像:J_News_photo@Adobe Stock)