冬季は送迎バス必須、アクセス不便でもめざす人が多い人気宿
秋が深まるほどに紅葉が深くなり、12月になると雪が降り出す。「ランプの宿 青荷温泉」はかつては冬季は休業していたが、2001年からは通年営業している。と言っても、宿までの道路が狭く対面通行が困難なため、自家用車で直接、行くことはできない。冬季はアクセスが不便になり、雪のシーズンを迎える12月になると、弘南(こうなん)鉄道弘南線黒石駅または「道の駅 虹の湖」の駐車場に車を置いて、青荷温泉まで送迎する宿のマイクロバスに乗り換えなければいけない。
訪れたときは、帰りのバスが宿の敷地内でフカフカの新雪にはまり、除雪車が出動するも数十分動けなくなるというハプニングが発生した。さらに、マイクロバスによる雪道ドライブは、アップダウンが激しく、スリリングなアドベンチャーツアーのような体験だった。ほんの1泊しただけでもこの宿を運営するスタッフの苦労が感じられて、マイクロバスの発車時刻が遅くなっても誰も文句は言わなかった。自然の厳しさの中に立つ宿なのである。
「ランプの宿=不便さを楽しむ宿」。現代社会とは対極にある秘湯へ、ぜひ出かけてみてほしい。
【青荷温泉】
浅瀬石川の支流、青荷川の渓谷沿いにある秘湯。温泉の開湯は昭和4年で、宿は「ランプの宿 青荷温泉」のみ。電力は通ってはいるものの「微弱」なため、夕暮れ以降は灯油ランプの灯りが光源となる。源泉は毎分500L、100%源泉かけ流し。
【宿データ】
『ランプの宿 青荷温泉』
住所:青森県黒石市大字沖浦字青荷沢滝ノ上1-7
電話:0172-54-8588
泉質:単純温泉
アクセス:JR新青森駅から車で約1時間15分。冬季(12月1日〜)は直接、車で行くことはできず、弘南線黒石駅から送迎バスで約40分または、新青森駅から車で約40分の「道の駅虹の湖」から送迎バスで約20分
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文・写真/野添ちかこ
温泉と宿のライター、旅行作家。「心まであったかくする旅」をテーマに日々奔走中。「NIKKEIプラス1」(日本経済新聞土曜日版)に「湯の心旅」、「旅の手帖」(交通新聞社)に「会いに行きたい温泉宿」を連載中。著書に『旅行ライターになろう!』(青弓社)や『千葉の湯めぐり』(幹書房)。岐阜県中部山岳国立公園活性化プロジェクト顧問、熊野古道女子部理事。
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