蕎麦前を超え居酒屋並みに一品料理を充実させ、お酒もこだわって揃える店が増えている。ここではここ2023年中旬から2025年の間に開店した、居酒屋として楽しんだ後、唸る蕎麦をも楽しませてくれる新店を集めてみた。
画像ギャラリー蕎麦前を超え居酒屋並みに一品料理を充実させ、お酒もこだわって揃える店が増えている。ここでは2023年中旬から2025年の間に開店した、居酒屋として楽しんだ後、唸る蕎麦をも楽しませてくれる新店を集めてみた。
多彩な酒肴と名店仕込みの蕎麦に思わず頬が緩む『蕎麦割烹 ながの』@曳舟
まずやって来たのが前菜の盛り合わせ。この日は才巻エビの味噌漬け焼きに、梨の白和え、鴨の煮こごりと、酒飲みのツボを的確に捉えた揃えに思わず頬が緩んでしまった。
前菜8点盛り合わせ 1980円
店主の永野さんは和食歴20年。蕎麦屋としては珍しく、刺身を置くのもそれゆえだ。料理人としての日々を過ごすなか、蕎麦の面白さに気づいて門を叩いたのが千歳烏山の「東白庵かりべ」。
名店仕込みの蕎麦は畑作りに真摯に向き合う成田の農家から丸抜きで仕入れ、石臼で微粉に挽いてから十割で打つ。細打ちの凛とした風情のそれを手繰ってみれば、すべるような口当たりから、豊潤な甘みが膨らんで、醤油のキレを感じるツユがその風味を鮮やかに立たせていた。
さらに「にしんそば」も名作で、和食の技法で5日間かけて仕上げた身はふっくら。熱いツユに浸せば、その脂と煮汁がにじんでぐんと深みが増していく。
夫婦ふたりで切り盛りしています。
[住所]東京都墨田区東向島2-20-6
[電話]03-6675-0167
[営業時間]11時半〜14時半、17時半〜21時半 ※蕎麦がなくなり次第終了
[休日]月・火
[交通]東武スカイツリーライン曳舟駅西口から徒歩4分
器一面に咲くすだちの花は目も喜ぶ美しさ『明神下 蕎麦 おしん』@末広町
蕎麦屋の酒肴なら派手な創作は必要ない。王道がひと通り揃うのがいい。板わさ、焼き味噌、ニシンの煮付け……これです、これ、「おしん」の品書き。
「定番がきちんとおいしい蕎麦前の基礎を大事にしたい」と話す店主の言葉に大いに納得。胃袋がむくっと起き出して、何にしよかと迷うひと時、いいですねえ。
唸ったのが「関西風だし巻き卵」。カツオダシを限界まで入れたそれはふるふると揺れながら形を保ち、口に含むと上品なダシがあふれ出す。杯が進む「大山鶏の西京焼き」など乙な肴で飲んで和んで、〆はどの蕎麦にしましょかね。
大山鶏の西京焼き 1850円、関西風だし巻き卵 950円
修業先「土山人」の味を受け継ぐ温かい「すだち蕎麦」なら柑橘の香り際立つ大人の味。蕎麦は温と冷で挽き方や配合を変えており、前者は九一でやや太め、後者はのど越しがいい極細の十割。季節のつけ汁もいいなあ。迷う間に、もう一杯飲みましょか。
のど越しを楽しんでもらう打ち方を意識しています。
[住所]東京都千代田区外神田2-8-2
[電話]03-5577-5709
[営業時間]11時半~15時(14時半LO)、17時半~22時(21時半LO)
[休日]水、第1・3火
[交通]地下鉄銀座線末広町駅3番出口から徒歩6分・JR中央線御茶ノ水駅聖橋口などから徒歩8分
酒がすすむつまみは気が利く30品目。身も心も温まる『酒とつまみと〆蕎麦 よし川』@幡ヶ谷
下町っぽさを残しながらも、芸能人も多く住む幡ヶ谷に今年2月にオープンした。「締めはラーメンじゃなくて、軽めのそばが食べたい」という飲み助店主の理想が実現した落ち着く酒場だ。
店の華は客の目の前で揚げる天ぷらのライブ感だが、定番の板わさやだし巻きのほかに、旬のひと皿が魅力的だ。元々は日本料理店で腕を磨いただけあって細工が行き届いている。
人気の「牡蠣とほうれん草のおひたし」はそばのかけツユに甘みを足したダシで炊いていて、ちぢみほうれん草の苦甘さがアクセントに。「なめこの揚げ出し」は薬味のネギにひと工夫し、紫蘇の香りを忍ばしており、華やか。
牡蠣とほうれん草のお浸し 1100円、飛騨ジャンボなめこの揚げ出し 780円
締めのそばはのど越しのよい、細めの二八そばを製麺所と開発し、店名の通り“〆”まで楽しめる。毎日来ても飽きないもてなしがうれしく、蕎麦飲み好きは要チェックの“いい店”の誕生だ。
普段づかいで来ていただければうれしいです。
[住所]東京都渋谷区西原2-28-4 宮嶋ビル1階
[電話]080-4608-2024
[営業時間]12時〜14時半、18時〜23時
[休日]日・祝
[交通]京王新線幡ヶ谷駅南口から徒歩4分
高コスパで楽しむ端正な一品たちと、味わい深い蕎麦『十音(toiro) 手打ち十割蕎麦と和食』@板橋
軽く一杯楽しんだら〆に蕎麦をすすろう。そんな気持ちで立ち寄ったはずなのに……蕎麦&フレンチ店で腕を振るっていた大将の料理は端正かつ美味で、しかもリーズナブル。
十音のつまみ盛り合わせなんて2人前で1500円って、信じられますか?肉豆腐の豆腐もあえて味を染み込ませず、たまり醤油で表面にのみ味を入れることで、中は白のまま。見た目と味わいのコントラストを活かすという仕上げぶりなのだ。杯が進んでしまうのも致し方ない。
十音のつまみ盛り合わせ 1650円(2人前)
が、ここで満腹満足してはいけない。主に北海道産を仕入れ、十割で打つ蕎麦が待っているからだ。温蕎麦のツユはカツオ節のみ使用し、キリッとした味わい。
鴨南蛮そばはそこに小鴨のローストと刻んだ九条ねぎが入り、さらにコク深く香り豊かで、すするたびに笑顔になり、そしてお腹をさすりつつ退店すること間違いなし。
蕎麦のみ、酒飲みと気分によって使い分けてください。
[住所]東京都北区滝野川7-3-2 互恵板橋ハイム1階
[電話]03-6903-5529
[営業時間]11時半〜13時半LO、17時〜22時半(フード21時半LO、ドリンク22時LO)
[休日]月・日 ※火・水・木が祝日の場合、祝日が休みで月曜は営業
[交通]JR埼京線板橋駅東口から徒歩1分
撮影/貝塚隆(ながの、おしん、十音)、小澤晶子(よし川)、取材/菜々山いく子(ながの)、肥田木奈々(おしん)、輔老心(よし川)、編集部(十音)
※2025年1月号発売時点の情報です。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
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