東京の「食」を支えて80年以上!の築地エリア 卸売市場移転後も賑わう“世界の観光スポット”を歩く

築地

昭和10(1935)年の開設から平成30(2018)年の豊洲への卸売市場移転に至るまで、80年以上の長きにわたり東京の食生活をささえ続けた「築地」。長い歴史を持つ築地市場は、移転後の今なお愛される。昼はひと手間加えた魚介で、夜は酒と一緒に魚介を楽しめる店が健在し、歴史的スポットが残るこの地を散策する。

画像ギャラリー

昭和10(1935)年の開設から平成30(2018)年まで、80年以上の長きにわたり東京の「食」を支えてきたのが卸売市場の「築地市場」だ。卸売市場は、築地から豊洲に移転したが、隣接する「築地場外市場」は、今も多くの客でにぎわう。新鮮な魚介や旬な食材、道具を扱うお店、老舗の飲食店が軒を連ねる築地エリアは海外からの客にも人気だ。周辺には築地本願寺など由緒ある建築物もある。世界が注目する観光スポットを散策する。

銀座の台所「築地」の実力は健在!

築地といえば豊洲移転前は卸売市場があって、場外市場とともに早朝から活気を呈していた。

銀座との関係でいうならまさしく台所。銀座の美味は間違いなく築地が支えていたわけで、もとよりその実力は言うまでもないのだ。

外国人観光客で賑わう場外

豊洲移転、さらにはコロナが追い討ちをかけて、どうなる築地?どうなる築地場外市場?と一時は心配されたものの、どっこい長年培われた土地の記憶というか実力は、そんな簡単に揺らぐものではない。

場外市場はインバウンドが復活して、連日驚くほどの人で賑わっている。その一方で市場関係者や舌の肥えた客に育てられた実力店も変わらず健在だ。

その底力を今回は築地らしく魚介で味わおう。ただし、確かに旨いが寿司や海鮮丼では安易に過ぎる。魚介の旨さを味わい尽くす懐の深さもまた築地。

ひと手間加えた調理や酒と一緒に、ならではの魅力を堪能できる店。ぜひ楽しんでいただきたい。

連日多くの人で賑わう「場外市場」

YouTubeで『料理家・栗原友さんの築地散歩日和』2025年2月8日18時から公開!

築地で魚の卸業『クリトモ商店』を営む、料理家・栗原友さんによる築地散策。築地の魅力や歴史を動画で楽しくお伝えします。嬉しいプレゼントもあり!

おとなの週末YouTubeにて、2025年2月8日(土)18時より公開!

おとなの週末公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@otoshu1

築地本願寺には東西の文化が融合

場外だけが築地じゃない。築地本願寺をはじめ、由緒ある建築物巡りも築地の楽しみ方なのだ。築地周辺をもっと楽しむための「建築&歴史さんぽ」をご紹介する。

築地といえば食の街!! というのが常識ではありますが、どっこい築地の魅力はそれだけではない。

築地は戦前に建てられた歴史的建造物が、東京の中心地としては希有なほど残っている地区。なぜなら築地周辺には第二次大戦の東京空襲の被害を受けていない地域が多いのだ。

その理由は、築地(正式な町名は隣の明石町ですが)にある聖路加国際病院は、マッカーサーが信徒であったアメリカ聖公会によって設立されたからだそうな。

この話に付随するエピソードとして、昭和9年に日米野球の為に来日した大リーガーのモー・バーグ選手が実はアメリカのスパイで、聖路加国際病院の屋上から東京の地理を撮影し、それが東京空襲の資料となったという、スパイ映画さながらの話もあるのですが、それはまた別の話。

築地を代表する歴史的建築物といえば、なんといっても国の重要文化財に指定されている『築地本願寺』。

築地のランドマーク「築地本願寺」

仏教の源流・インドのみならず、東西の多様な文化をミックスさせた独特の本堂。

これはシルクロードを探検した大谷探検隊で知られる浄土真宗本願寺派門主・大谷光瑞氏と、インドやトルコ、中国に留学経験のある建築家で東京帝大名誉教授の伊東忠太博士の出逢いが生んだという。特徴的な外観だけではなく、内部の細かな意匠も息を飲む。

広大な境内にはカフェもあり、この地ならではのおかずなどが18品揃う『築地本願寺カフェTsumugi』の「18品の朝ごはん」(2200円)は必食!

『築地本願寺カフェTsumugi』名物の「18品の朝ごはん」

知っていたら“築地通”!足を運ぶべき歴史を感じられるスポット

寺に続いて素晴らしい教会建築もある。東京都選定歴史的建造物『築地カトリック教会』の聖堂は、ドリス式円柱が並ぶギリシャ神殿のような重々しい佇まい。

1874年に建てられた東京最古のカトリック教会「カトリック築地教会」

江戸時代に使われた踏み絵のレプリカも展示された、教会の歴史を伝えるコーナーも勉強になる。

仏教、キリスト教と来たらトリはもちろん神道。築地場外の奥にある『波除神社』。築地市場のすぐ近くにあることから「鮟鱇塚」「海老塚」「玉子塚」「昆布塚」など、食材に感謝する石塚が多く建立されている。

そんな中でも築地にお寿司を食べにきた皆さんはぜひ『すし塚』を一度拝んでみてはどうでしょう?

『波除神社』すし塚

大きな建造物以外の店舗や民家にも歴史的価値を持つ建築は多い。その代表が青銅に輝く『宮川食鳥鶏卵』。昭和初期の典型的な看板建築である。

『宮川食鳥鶏卵』

そして建築物ではないが知ってほしいスポットを紹介。『名犬チロリ記念碑』だ。殺処分寸前に助けられ、高齢者や障害者を補助するセラピードックとして日本で初めて認定された、名犬チロリの碑だ。

さらにこの碑の発起人であり、セラピードック活動の日本トップが、世界的ブルースシンガーの大木トオル氏であることを知り、驚き感動。

築地。驚きと感動だらけ。

阿弥陀仏の願いこもる「18品の朝ごはん」『築地本願寺カフェTsumugi』

築地本願寺が大切にする阿弥陀如来の48の願いの18番目の願いから着想された朝ご飯。

[住所]東京都中央区築地本願寺3-15-1 築地本願寺インフォメーション棟
[電話]03-5565-5581
[営業時間]8時〜17時(17時LO)※朝ごはんは10時半までの提供。予約がベター。
[休日]無休

青銅リアルレトロ店舗もちろん現在も営業中『宮川食鳥鶏卵』

昭和4年築。銅板貼の三階建木造建築。銅看板の横書き文字が右から始まっている!

[住所]東京都中央区築地1-4-7

日本初セラピードックその功績を永遠に『名犬チロリ記念碑』

『名犬チロリ記念碑』

ゴミ捨て場に捨てられたチロリが、障害者や高齢者の幸福に寄与した事実に頭が下がる。

[住所]東京都中央区築地 1-13-20 中央区築地川銀座公園内

威風堂々。東西文化が結集した稀代の建造物『築地本願寺』

『築地本願寺』特徴的な外観だが堂内はまさしくお寺。本尊の阿弥陀如 来

そもそも築地の地名自体が、明暦の大火後、幕府が本願寺に与えた現在地が海だったため、築地(埋め立て)して寺を建てたことによる地名。まさに築地本願寺こそが築地のルーツなのだ。重文である現在の本堂は昭和9年竣工。

本堂内の階段手すりなどには像や牛、獅子といった数々の動物像。そんな中、壁の隅に隠れている猿の像。

教会のようなステンドグラスもよく見れば仏教的な蓮の花。

[住所]東京都中央区築地3-15-1

食を愛する読者なら行かねばならぬ神社『波除神社』

約1トンの厄除天井大獅子、中央区文化財である境内の雌の獅子頭「弁財天お歯黒

獅子」。寿司を食べたなら『すし塚』へ。

[住所]東京都中央区築地6-20-37

カトリック教会として東京最古『カトリック築地教会』

つつましやかで厳かな聖堂。週末に行われるミサにも参加することができます

為になる教会の歴史のコーナーなど、誰でも見学できますが、教会ですのでお静かに。

[住所]東京都中央区明石町5-26

東京の魅力発信プロジェクトとは

雑誌『おとなの週末』ムック「ぶらっと東京日和」は令和6年度「東京の魅力発信プロジェクト」※に採択されています。

東京都は、国内外へ東京の都市としての魅力を発信し、「東京ブランド」の確立に向けた取り組みを推進しています。その一環である「東京の魅力発信プロジェクト」※に、雑誌『おとなの週末』ムック「ぶらっと東京日和」が採択されました。

※「東京の魅力発信プロジェクト」は、江戸時代から続く伝統と最先端の文化が共存する、東京の魅力を表現した東京ブランドアイコン「Tokyo Tokyo Old meets New」を効果的に活用しながら、東京都と民間事業者が連携し、東京の魅力の発信等を行う事業です。

「TokyoTokyo」とは

「Tokyo Tokyo」は、東京の魅力を国内外にPRするアイコンです。旅行地としての東京を強く印象づける「東京ブランド」の確立に向けた東京都の取組の中で誕生しました。

筆文字のTokyoとゴシック体のTokyoは、江戸から続く伝統と最先端の文化が共存する東京の特色を表現しています。

『ぶらっと東京日和-自分だけの東京を見つける小さな旅-』

『ぶらっと東京日和-自分だけの東京を見つける小さな旅-』

撮影/浅沼ノア、文/池田一郎、取材/カーツさとう

※2024年5月号発売時点の情報です。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

画像ギャラリー

この記事のライター

関連記事

客の9割は外国人! 絶景風呂もない大分の山奥の小さな温泉宿に、なぜ海外から客が押し寄せるのか

高知は「モーニング天国」だった! 県民に愛されるご当地パン「帽子パン」はこうして生まれた ディープな高知グルメ2日目【朝・昼・夕の3選】

福島県民の“イチ推しラーメン”がいわきにあった! 昭和を彩った「名曲の聖地」3選 美空ひばり、ちあきなおみ、八代亜紀 ご当地グルメもご紹介!

「松茸食べ放題の天国」だった“幸せの国”ブータン 「爆発的にうめえええっ!」と旅行作家の石田ゆうすけさんが心底感動した手料理とは

おすすめ記事

東京の「食」を支えて80年以上!の築地エリア 卸売市場移転後も賑わう“世界の観光スポット”を歩く

タコ焼きが恵方巻に?豪華1万円の恵方巻も発見! 地域の変わりダネ「恵方巻」で「多幸(タコ)」来たる!

“おとなの居酒屋”を掲げる名店を発見!  昭和のビルにひっそり構える「隠れ家」

【難読漢字】地名当て 旅館がたくさんあります

【1月31日】今日は何の日?大切なことを教えてくれる3文字の言葉

客の9割は外国人! 絶景風呂もない大分の山奥の小さな温泉宿に、なぜ海外から客が押し寄せるのか

最新刊

「おとなの週末」2025年2月号は1月15日発売!大特集は「醤油ラーメン」

ラーメンの原点とでも言うべき醤油ラーメンを特集。老舗から新店まで、食べておきたい、食べるべき一杯を集…