電気蓄音機を取り入れ、名曲喫茶を目指した
さらに、店主の立野は開業時から本格的な名曲喫茶を目指し、電気蓄音機とクラシック音楽の新譜レコードを買い揃えていたそうだ。ベートーヴェンやモーツァルト、シューベルトなどのレコードが多いが、選曲は友人の声楽家・作曲家である関忠亮(せき・ただあきら)が担当していた。
当時は、一般的な家庭に音楽を聴ける環境がなかったため、ここに足を運べば、誰もが好きなだけ音楽に浸ることができた。現在は一般的なスピーカーを使用しているそうだ。
凛とした佇まいの固めプリンにうっとり
そんな歴史の深いこの喫茶店で今、熱い視線を集めるのがこの端正な佇まいの特製プリン。コーヒーか紅茶付きの「プリンセット」(1550円)として楽しめる。このメニューは一度、終了した期間もあったものの、2021(令和3)年に行われた『京都市京セラ美術館』とのコラボ企画から復活したのだとか。
特製プリンは、固めのむっちりとした食感、しっかりとしたたまごの風味、甘さ控えめのほろ苦いカラメルソースが魅惑的。トップに乗った自家製のドライオレンジは、甘みと酸味のバランスが絶妙で全体の程よいアクセントになっている。
5カ国のオリジナルのオーガニックコーヒーを2段階の焙煎度合いでブレンドしたコーヒーは、濃厚な甘さとまろやかなコク、芳醇な香りが魅力。スタンダードは、生クリームに無糖の練乳をプラスした「フレッシュクリーム」で、やさしい味わいだ。