昭和時代の“文化と自由のオアシス”へ
創業者の立野はもともと美術学校に通う学生として画家を志していたが、先輩の影響を受け、労働運動に加わり、”社会主義啓発”を目的にこの喫茶店を開業したそうだ。そんな背景もあり、この場所には開店時から作家や画家、陶芸家、映画・演劇関係者が集っていたという。戦時下で言論を制限されていた当初、誰もが平和や文学、芸術について語り合える唯一の「文化と自由のオアシス」だったのだ。
ヨーロッパの街角で見かけるような粋な店構えや本格的なクラシック音楽、おいしいコーヒーで昭和の若者たちの心を掴んだ『フランソア喫茶室』。当時の物語に思いを馳せながら、タイムスリップした気分で美麗なプリンを味わってみては。
[住所]京都市下京区西木屋町通四条下ル船頭町184
[電話]075-351-4042
[営業時間]11時~22時 (LO. フード類20時、ドリンク&ケーキ21時半)
[休日]無休 ※12月31日、元旦、1月2日は休業
[交通]阪急京都線京都河原町駅から徒歩1分
文・写真/中村友美
フード&トラベルライター。東京都生まれ。美術大学を卒業後、出版社で編集者・ディレクターを経験し、現在に至る。15歳からカフェ・喫茶店巡りを始め、食の魅力に取り憑かれて以来、飲食にまつわる人々のストーリーに関心あり。古きよき喫茶店や居酒屋からミシュラン星付きレストランまで幅広く足を運ぶ。休日は毎週末サウナと温泉で1週間の疲れを癒している。