はじめに
銅板に流し込んで時間をかけて焼く、厚みのあるホットケーキはなかなか自宅で作ることができません。昔はどこの喫茶店でもメニューにあったホットケーキですが、作り置きができず、焼くのに20分前後かかるため冷凍食品に変わったり、メニューから消えたりと少なくなりました。そんな現代でも、オーダーを受けてから時間をかけて作る基本のスタイルを守っている東京都内のホットケーキの名店をご紹介します。
作り手に嫌われてしまった悲劇のおやつ
ホットケーキは家庭でも作れるおやつだが、喫茶店のホットケーキは、厚みといい、香ばしさといい、素人が真似して作れるものではない。
だからこそスペシャル感があり、わざわざ食べに行く価値があるのだ。
ただ、 昔はどこの喫茶店のメニューにも存在していたが、今はメニューから消えているところも多い。何しろホットケーキは “鮮度”が命。ほかのケーキのように、“作りおき”ができないのだ。旨いものを提供しようとしたら、焼きたてを出すしかない。
そのうえ短時間では作れないクセもの。弱火でジワジワと根気良く火を通すしかなく、非常に時間がかかる。とくに厚みのあるものなど、焼き上がりまで20 分要することもあるため、あまりの効率の悪さに冷凍食品に切り替える喫茶店や提供をやめてしまう喫茶店が増えていった。
あれだけ身近だったホットケーキは、いつしか遠い存在になっていく。
ここで紹介するのは、その手間があっても、オーダーを受けてから作り始めるというスタイルを崩さない4 店舗だ。
なぜなら、店主や店のスタッフが、「ホットケーキが好き!」で、「だったらいちばん美味しいものを、お客様に食べてもらいたい」という熱い思いを抱いているからにほかならない。
スイーツというより“昭和のおやつ”という言葉がぴったりなホットケーキを食べに、ぜひ足を運んでほしい。
ニットのホットケーキ(錦糸町)
ニット
創業51年になる純喫茶はレトロな外観に惹かれて店内に入ると思った以上に広く、落ち着く明るさの照明、革張りのソファが何時間でもいられそうなくつろぎの空間を作り出しています。看板メニューのホットケーキは銅板に生地を流し込み20分ほどかけて焼いたら完成。外はパリッ、中はふわもち、大判焼きにも似たほのかに甘いホットケーキに、バターとシロップをかけていただきます。2枚で高さ8cmほどもあるのにぺろりと食べられるから不思議です。
[電話番号]03-3631-3884
[営業時間]月〜土8時~20時、日・祝8時〜18時
[休日]指定の日・祝
[アクセス]JR総武線ほか錦糸町駅から徒歩約4分
“溶ける途中で落ちないように”、とバターを爪楊枝でとめた「ニット」のホットケーキは、純喫茶好きの間では有名だ。創業51年目。週末には家族連れの姿も目につく。平成生まれの子どもたちにも受け継がれている、まさに昭和の味だ。ニット[交]JR総武線ほか錦糸町駅から徒歩約4分 ※ランチタイム有
珈琲家のホットケーキ(東上野店)
珈琲家 東上野店
茅場町の珈琲屋で修業したのち、暖簾わけしてできたこちらのお店は、ホットケーキ大好きな店主がこだわりぬいて完成させた究極の味です。オーダーを受けてから焼くので少し時間がかかりますが、サクふわな触感がクセになるホットケーキです。シロップは、ホットケーキの味を際立たせるとのことでザラメを溶いたものを、マーガリンは塩気の強いものを使用。1枚ずつ注文できてリーズナブルなので小腹がすいたときにもおすすめですよ。
[電話番号]03-3836-4860
[営業時間]8時~19時
[休日]土・日・祝
[アクセス]JR山手線御徒町駅から徒歩約5分
茅場町の純喫茶「珈琲家」で修業後、暖簾わけしてできたのがここ。店主自身が大のホットケーキ好きで、研究に研究を重ねてたどりついた究極の味だ。珈琲家 東上野店[交]JR山手線御徒町駅から徒歩約5分 ※ランチタイム有
オンリーのホットケーキ(南千住)
オンリー
昭和45年にオープンした老舗では、粉の配合もシロップの配合もお店オリジナルのものなので、ここでしか味わえない至極のホットケーキが堪能できるんです。厚みのあるホットケーキはナイフを入れると手ごたえを感じるほどのもっちり弾力のある焼きあがりでボリュームたっぷり。甘いものを食べると口がもたれるからと数年前からお口直しのサラダもついてくるように。淹れたての珈琲と一緒に頬張りたいホットケーキで男性にも人気です。
[電話番号]03-3807-5955
[営業時間]9時~19時
[休日]日
[アクセス]JR常磐線ほか南千住駅から徒歩約5分
オンリーは昭和45年頃オープン。ホットケーキの粉の配合もシロップの配合も店オリジナル。[交]JR常磐線ほか南千住駅から徒歩約5分 ※ランチタイム有
はまの屋パーラーのホットケーキ(有楽町)
はまの屋パーラー
昭和41年にオープン、厚焼き玉子のサンドウィッチが人気だったお店は先代が高齢になり平成23年に一度閉店したものの、その味を惜しむ声が多くリニューアルオープンとなりました。新しく加わったホットケーキは、薄めの生地でワッフルにも似た感じの香りのよい焼き上がり。さらに、季節限定の予定が好評すぎて継続となった「自家製ラムレーズンのホットケーキ」は生地にもレーズンが練り込まれ、上にアイスがトッピングされた大人気メニューです。
[電話番号]03-3212-7447
[営業時間]月〜土9時~18時、日10時~17時
[休日]祝・年末年始
[アクセス]JR有楽町駅から徒歩約1分
昭和41年にオープンした「はまの屋パーラー」、ここの厚焼き玉子をはさんだサンドゥイッチは、知る人も多いだろう。しかし先代の高齢化により、平成23年に閉店。その味を惜しむ声があまりにも多く、リニューアルオープンした。[交]JR有楽町駅から徒歩約1分 ※ランチタイム有
喫茶店 ペドラブランカのホットケーキ(戸越)
喫茶店 ペドラブランカ
うっかり通り過ぎてしまいそうな、一見喫茶店とはわからない佇まいのお店の店内はブラウンの家具を基調としたあたたかみのある雰囲気です。ホットケーキは国産の小麦粉などを使用しておりメレンゲを加えてふっくらと、20分かけてじっくりと焼きます。表面はさくっとしていて、中はしっとり、卵の味がしっかりと感じられます。シロップは使わずにバターのみでいただくホットケーキは完成度の高さに思わずうなってしまうほど。
[電話番号]03-6426-6912
[営業時間]11時~18時(17時LO)※ランチタイム有
[休日]月・火
[席]カウンター7席、テーブル20席 計27席/全席禁煙/予約可/カード不可/サなし
[アクセス]都営浅草線戸越駅A2出口から徒歩8分、東急大井町線戸越公園駅北口から徒歩10分
戸越にある喫茶店 ペドラブランカのホットケーキは厚さ3、4㎝の2段重ねとは何とも幸せ! トッピングはバターのみという潔さにもグッとくる。[住所]東京都品川区戸越2-8-18
ミモザのホットケーキ(浅草)
ミモザ
若者から年配の方まで幅広い客層が集う明るい雰囲気の店内。こちらの名物となっている「ビッグホットケーキ」は注文後に銅板で焼き上げるので表面はさくっとしているのに中はふんわりと優しい口どけ感が味わえる自慢の味。五重塔のように重ねられた大小5枚のホットケーキの頂上には幻のバターとも称されるカルピスバターがのっています。カルピスを30本製造する過程で450gしかとれないという高価なバターなのでこちらも楽しみの1つですね。
[住所]東京都台東区浅草4-38-6
[電話番号]03-3874-2933
[営業時間]8時~17時
[休日]月 ※祝の場合、翌火休
[アクセス]つくばエクスプレス浅草駅から徒歩12分、東武鉄道・都営浅草線・東京メトロ銀座線 浅草駅から徒歩13分
路地裏の魅力たっぷり、おとなの週末「浅草 観音堂裏」特集掲載店。注文後に銅板で焼き上げるホットケーキ5枚を、ドーンと重ねた「ミモザ」の名物メニュー「ビッグホットケーキ」。[交]つくばエクスプレス浅草駅から徒歩12分、東武鉄道・都営浅草線・東京メトロ銀座線 浅草駅から徒歩13分 ※ランチタイム有
おわりに
香ばしく甘い香り、ふんわりした柔らかさとほのかな甘さのホットケーキは食べるたびに懐かしく、私たちを優しい気持ちにさせてくれます。ちょっと疲れたとき、小腹がすいたとき、甘いものが食べたいとき、もちろんがっつり食べたいときでも構いません。ゆったり座れるソファに落ち着くBGM、コーヒーの香りとホットケーキ。些細なことのようで、実は毎日の忙しさで忘れていることをホットケーキと喫茶店は思い出させてくれそうです。
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