素泊まりの一人旅、夕食は地元の居酒屋で
今回は素泊まりの一人旅。温泉街で夕食の店を探すことにした。ネットで口コミ評価の高い店に目星をつけて、15分ほど歩いてみたが、その店はグループ客が多く、一人では居心地が悪そうだった。再び商店街まで戻り、飛鳥乃湯泉の斜め右前にある居酒屋『福福亭』の扉を開いた。
馬刺し、おでん、タコワサを注文。馬刺しには、女将さんがサメ肉をサービスしてくれた。
常連客が多かったが、カウンター席があるので一人旅にもやさしい雰囲気。大阪からバイクで旅していた男性と意気投合し、楽しく飲んだ。温泉旅館の中だけでは出会えない、旅の醍醐味がここにはあった。
この居酒屋、女将さんの愛想があまりないせいか、口コミ評価は低めだったが、一人旅にはちょうどいい店だった。チェーンの鯛めし店よりも、ずっと地元らしさが味わえる。
「刺身3種盛りを頼んだら、7種盛りが出てきた」と話す知人もいたから、サービスは日常的なのかもしれない。
締めは、自分だけのセレクトができる坊っちゃん団子
数年前に訪れたときよりも、洒落たカフェが増えた気がする。
愛媛県松山市といえば「坊っちゃん団子」。夏目漱石の小説『坊っちゃん』に登場する団子にちなんで作られた銘菓で、通常は小豆餡、黄身餡、抹茶餡の三色からなる。
この坊っちゃん団子が進化し、30種類の餡から好きなものを選んで、自分だけの団子が作れる店が『my botchan dango 30』だ。
「シナモンリンゴ餡」「いちごミルク餡」「ゆず餡」など、選ぶ楽しさもひとしお。持ち帰りだけでなく、抹茶やほうじ茶を注文してカフェとして利用するのもおすすめ。組み合わせは2万7000通りにもなる。
今回頼んだのは、赤ワイン餡、マロン餡、ラムネ餡。見た目のカラフルさに負けず、甘さも上品。1つ70〜120円と、意外とリーズナブル。温泉めぐりの小休止に、ぜひ立ち寄ってみてほしい。
【道後温泉】
道後温泉は、3000年もの歴史があるといわれる日本最古の温泉。神代の時代、大国主命が少彦名命の病を癒したという伝承も残る。道後の湯神社の主祭神はこの二柱の神が祀られている。『古事記』『日本書紀』にも登場し、「有馬の湯」(神戸市)「牟婁の湯(白浜温泉)」(和歌山県白浜町)と並び、日本三古湯の一つとして知られる。斉明天皇、舒明天皇、中大兄皇子など、皇室の来訪記録も残る。一羽の白鷺が岩の間から湧き出す温泉に足を浸したという伝説も、道後の開湯伝説の一つとして語り継がれている。
【施設データ】
『飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)』
住所:松山市道後湯之町19-22
電話:089-932-1126
泉質:アルカリ性単純温泉
アクセス:道後温泉駅から徒歩3分
『福福亭』
住所:松山市道後湯之町14−16
電話:089-934-5412
『my botchan dango 30』
住所:松山市道後湯之町6−15
電話:089-933-2281
文・写真/野添ちかこ
温泉と宿のライター、旅行作家。「心まであったかくする旅」をテーマに日々奔走中。「NIKKEIプラス1」(日本経済新聞土曜日版)に「湯の心旅」、「旅の手帖」(交通新聞社)に「会いに行きたい温泉宿」を連載中。著書に『旅行ライターになろう!』(青弓社)や『千葉の湯めぐり』(幹書房)。岐阜県中部山岳国立公園活性化プロジェクト顧問、熊野古道女子部理事。
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