まだまだ暑さが残る夏、秋に向けて新しいことを始めたい。そんなあなたのために、金継ぎ体験をご紹介。古くは縄文時代、漆を使った土器の修復から始まり、茶道が隆盛を極めた室町時代に技法が確立。そして江戸時代に陶磁器の修復需要が増えたことで大衆文化となった金継ぎ。傷や割れを隠すのではなく、器の“景色”として楽しむという金継ぎの世界を、少し覗いてみませんか。前編となる今回は、金継ぎ作家・金継ぎ教室主宰の林聖子さんにお話を伺った内容をお届けします。
【教えてくれる人】金継ぎ作家・金継ぎ教室主宰:林聖子さん
金継ぎ作家・金継ぎ教室主宰。鎌倉彫なども手掛ける作家に師事して金継ぎを習得後、漆芸・蒔絵を修める。現在は金継ぎをベースに幅広い漆芸表現を展開。東京都中央区にて教室を主宰。
Instagram:@lin_shengzi
壊れても再び蘇る…日本人の美学が宿る
大事にしていた器がガチャンと割れた時の衝撃ときたら、それはもう世界から一瞬で色が消え去ったような絶望感である。思い返せば室町時代、茶人たちはその「割れた絶望」をあえて愛でるという、最高にイカした文化(金継ぎ)を発明したのであった。
今回、金継ぎを教えてくれた林聖子先生も、「大事な器を割ってしまった時のショックから立ち直れるのが金継ぎなのです」と、明るく、きっぱりと答えてくれた。
多くの生徒さんを抱える人気金継ぎ教室を主宰する林さんは、金継ぎの魅力についてこう語る。
「壊れたものが蘇るという癒しもありますし、金で継ぐことで器に新しい景色が生まれるのです」。
なるほど。かつての茶人たちも、傷を隠さずに装飾し、それを景色として愛でることで、不完全なものの中に価値を創造するという日本人の美学を発見したのだ。
そもそも金継ぎは、陶磁器を天然の漆で接着し、継ぎ目に金や銀などの金属粉を蒔いて装飾する日本の伝統的な修復技法だ。現代では樹脂接着剤を使った簡易金継ぎなどもあるが、林さんの教室では、天然の本漆(ほんうるし)を用いる。
本漆は口に触れても安全なため、器を食卓に蘇らせるには最適。ただし、ゆっくりと硬化するため、工程の合間に何日も待つ必要がある。また、生の漆はかぶれるので取り扱いにも注意が欠かせない。
伝統技法と聞くと少し敷居が高いようにも思えるが、林さんはそんなことはない、というのだ。
「真っ白なキャンバスに絵を描くのは難しいかもしれません。でも、金継ぎは、割れた通りに直すという制約があるため、実は初心者でも取り組みやすいんですよ」。
制約の中で、そこにどんな表情の線を描くか。装飾を銀粉やカラフルな色漆に変えてみるなど、微細なデザインの選択に、自分だけのオリジナリティが宿るのだ。
撮影/松田麻樹、取材/岡本ジュン
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
※画像ギャラリーでは、金継ぎ体験の画像をご覧いただけます。
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