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ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

新婚1年目!
ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

「デンジャラス!?
日本食に挑戦」

ドイツ人の男性と結婚した日本人女性。
食生活の違いに戸惑う日々を、イラストとともにお届けします。
第2回目は、ドイツ夫曰く“デンジャラス”な日本食に挑戦。
日本の食事に馴染もうとする姿に喜ぶ妻でしたが、その結果は……。
(ふたりは主に英語で会話していますが、日本語に翻訳してお届けします)

間違った日本食愛好家

「旦那さんって、日本食好き?」

友人たちから最も多くされるのが、この質問かもしれません。対して私は、「う~ん、そうねえ。好き、と言えば好きなんだけど……」などと、いつも歯切れ悪く答えるのです。

小腹が空いたらコンビニでおにぎりを買い、ドイツに帰るときもインスタントのお味噌汁と一緒。夫は一見すっかり日本食愛好家になったように見えます。
ですが、選ぶおにぎりは必ずシーチキンマヨネーズだったり、お味噌汁にはオリーブオイルをひとたらししたり……と、どうにも日本食の“本当の美味しさ”をわかっているとは言いがたい。

あるとき、長い休暇をドイツで過ごし、東京に戻ってきた夫。
ペットボトルのほうじ茶を飲みながら「あ~、これこれ、ジャパニーズテイスト!」と満足気に言うので、「じゃあ今夜はなにが食べたい? うなぎ? 寿司?」と聞いてみました。

すると、帰ってきた答えは「そうだねえ……あ、あれが食べたい! 『すき家』の高菜明太マヨ牛丼!」。がっくり。思わず膝の力が抜けます。

とにかく夫はその「高菜明太マヨ牛丼」が大好き。放っておくと、週に何度も『すき家』に通って、「今日も食べちゃった」といらぬ報告をしてきます。

夫がそれほど愛するものなら、と、私も今回初めてトライしてみました。

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“デンジャラスフード”が食べたい

たしかに、明太子マヨネーズがピリッときいて、肉、高菜とひと口ごとに変化があって楽しい。しかし、いかんせん油っぽく、味も濃い。中学生のころの自分なら喜んでがつがつ食べたかもしれないけれど、いまとなっては「“高菜明太丼”でいいなあ」と思ってしまう。

しかし恐ろしいのはそのカロリー! 私が選んだ「ミニ」サイズでさえ626kcal、一番大きな「メガ」サイズになるとなんと1355kcal! ひええ。夫がいつもメガを頼んでいないことを祈るばかりです。

この人、日本食の味をわかってないんじゃ……、と思った出来事はほかにもあります。

ある日、夫が「ねえ、あれが食べてみたいんだけど。日本人がよく食べてるデンジャラスフード」といきなり言ってきました。

「なにデンジャラスフードって。あ、あれでしょ、フグ」
「ちがう、ちがう。ほら、あの、ニューイヤーに食べる白いやつ」
「ああ、なんだお餅のことね!」

伊丹十三監督のコメディ映画『タンポポ』が、夫の大好きな日本映画のひとつ。中でも、故・大滝秀治さん扮する老人が喉に餅を詰まらせてしまい、その口に掃除機を突っ込んで救うシーンがとくにお気に入り。あの“危ない白いやつ”に挑戦してみたい、というわけなのです。

お餅は私の大好物! 一緒に楽しめるならこんなにうれしいことはありません。
さっそく切り餅を買ってきて、いそべときなこにして出してあげました。
わくわく顔でひと口いそべをかじった夫が発した言葉に、私は心の底からがっかりしました。

「ノーテイスト……」

「待って待って! 味、あるじゃん!! ノーテイストってひどすぎる!!」

私が叫ぶのに若干引きつつ、「う~ん、あんなに日本人が好きなものだから、もうちょっと素晴らしい味がするのかと思って期待しちゃってて……」ともごもご答える。

「はあぁ」。私が深い深いため息をつくと、「あ、でもデンジャラスなのはよくわかったよ!」と追い打ちをかけるのでした。

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ドイツ人は食に保守的

食べたことないものにトライしよう、口に入れてみようとしているだけ、ドイツ人としてはまだいいほうなのかもしれません。

旅館などで、ひと目には素材が何かわかりづらいような懐石料理がずらりと並ぶと、「うちの家族はこれ、ひと皿も手をつけられないかも」なんて言うとおり、ドイツ人は食に対してずいぶん保守的らしい。

「和菓子は難しいだろうけど、お茶なら……」と、義兄の家にお土産に持って行った緑茶ですら、封を開けた気配がありませんでした。

フランス人の恋人がいる友人が「彼が蕗味噌で白いごはんをおかわりしてた」なんて話を聞くと、うらやましくてたまらないのです。

ひとつ忘れていましたが、冒頭の友人の質問にたいてい加わるセリフ。

「たとえば納豆とか」

夫は納豆は完全にNG。うぇっと顔を背けます。ほら、やっぱりぜんぜんわかってない!


イラスト/なをこ

●文:溝口シュテルツ真帆(みぞぐち しゅてるつ まほ)/
1982年生まれ、石川県加賀市出身。編集者。週刊誌編集、グルメ誌編集を経て、現在はドイツ人の夫とともにミュンヘン在住。ドイツを中心に、ヨーロッパの暮らし、旅情報などを発信中。私生活ではドイツ語習得、新妻仕事に四苦八苦する日々を送っている。

2014年4月27日公開

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「パンとハムとチーズの無限ループ」
「きっかけはパスタ。声を荒らげて大喧嘩」
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