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ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

新婚1年目!
ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

「考えられない!ドイツ流
ジュースの飲み方」

ドイツ人の男性と日本人女性が食生活の違いに戸惑う日々を、イラストとともにお届け。今回はドイツ特有のジュースの飲み方に妻がビックリ! ふたりが「メビウスの輪」のように論争を繰り広げます(ふたりは主に英語で会話していますが、日本語に翻訳してお届けします)。

ジュースの消費量世界1位ドイツだった

今回の本題に入る前に、まずはちょっと驚きのランキングをご紹介します。
ドイツといえばビール。にぎやかなビアホールで巨大ジョッキをぐびぐび飲んでいるドイツ人のイメージが難なく浮かびますよね。
しかし、国別ひとりあたりのビール消費量を見ると、1位はなんとチェコ共和国。2位のオーストリアに続いて、3位にようやくドイツが登場します。
※日本は40位。キリン調べ(2012年)。

一方コーヒーは、1位ルクセンブルク、2位フィンランド、3位デンマークと、これまた意外な順位。ドイツは7位と、まあまあの位置につけています。
※日本は12位。AGF調べ(2010年)。

そして、こちらはフルーツジュースの消費量ランキング。
1位 ドイツ
2位 オランダ
3位 アメリカ
※日本の順位は不明。ドイツ食品普及協会ホームページより(2013年)。

と、ビールもコーヒーもたくさん飲むドイツ人ですが、世界ランキングで1位に輝くのは、「ジュース」なのです。

オレンジジュースやりんごジュースに代表されるフルーツジュースと言えば、日本ではちょっと子ども向け、女性向けの印象。
しかし、ドイツでは基本的なフルーツジュースはもちろん、抗酸化や鉄分補給などの機能別や、赤・黄色・緑と色別にわかれたミックスジュースなども安価な値段で豊富に売られていて、老若男女問わず、積極的に飲まれている様子です。

ドイツ人の夫も例にもれず、日本で働いていたころからフルーツジュースをよく飲んでいました。でも、驚いたのはその飲み方。

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ジュースの水割り!? 夫の飲み方に驚き

グラスにクリアタイプのりんごジュースを半分くらい注ぎ、私が「あれ、それだけしか飲まないの?」なんて思った瞬間、その同じグラスに、水をざざっと加えたのです。

「ええっ! 水入れちゃうの!?」
と私があたふたしても、煮出し足りない麦茶みたいな頼りない色になってしまったグラスを持ちながら、「なんで?」と不思議顔。

「だって、薄まっちゃうじゃん!」
「だって、濃いじゃん」
と、私の意見はまるでメビウスの輪のごとく反転。

ところ変われば常識が変わるもの。
その後、ドイツの親戚の家に出かけても、フルーツジュースと水差しに入った水がセットで出てきたり、ドイツ人の女友達が「オレンジジュースの水割り」を作って飲んだりするのを見るにつけ(たまたま同席していた旅行中の日本人の友人もぎょっとしていました)、どうやら、「ジュースを水で薄めて飲む」のは、ドイツでは普通なのだとわかってきました。

飲食店でもそれは同じ。
ドイツのレストランのドリンクメニューには、「アプフェルショーレ」というソフトドリンクが必ずといっていいほどあります。
これは、りんごジュースに水を混ぜたもの。
ジュースにはじめから水を混ぜたものが、レストランのメニューに載っているのです。

初めて飲んだときには、「やっぱり薄いよねぇ」と思いましたが、慣れればなかなか美味しい。
とくに暑い夏の日に、ガス入りの水で割ったアプフェルショーレは、“本家”の甘ったるいりんごジュースより爽やかですいすいと飲みやすく、ちょっと悔しいけれどクセになります。

と、ジュースの水割り、「ショーレ」は、多くのドイツ人に愛される飲み物なのです。

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ジュースはジュース、ショーレはショーレ

このショーレにまつわる納得できないできごともありました。
スーパーで買い物中のこと。
「ねえ、ジュースはまだうちにあったっけ?」と聞くと、
「ないない。じゃあ買っていこう」と、オレンジジュースに、りんごジュース、抗酸化機能のあるミックスジュース(これは私のお気に入り)などの1リットルパックを、いつもの調子でぼんぼんカゴに放り込む夫。

ですが、家に帰ってみれば、戸棚にペットボトルの「ヨハネスベーレショーレ」、つまりベリージュースの水割りが大量にストックされています。

「なんだ! 買わなくてもジュースまだいっぱいあったじゃん!」
と私があきれると、夫の表情がきりりと引き締まります。

「これはジュースじゃなくてショーレだよ」
「は? ショーレはジュースを薄めたものでしょ?」
「そうだけど、ジュースはジュース。ショーレはショーレ。一緒にしちゃダメだよ」
と、世界の真理を説くように私に言って聞かせるのです。

「なんでぇ? 同じだよー!」
と脱力しても、夫は常識人は自分のほう、とばかりにフフフと笑いながらショーレの横にジュースを並べています。
メビウスの輪がここにも。私はまた小さくため息をつくのでした。
(ちなみにメビウスの輪は、ドイツ人数学者アウグスト・フェルディナント・メビウスが1858年に発見したものだそうです。まあ、どうでもいいですね)


イラスト/なをこ

●文:溝口シュテルツ真帆(みぞぐち しゅてるつ まほ)/
1982年生まれ、石川県加賀市出身。編集者。週刊誌編集、グルメ誌編集を経て、現在はドイツ人の夫とともにミュンヘン在住。ドイツを中心に、ヨーロッパの暮らし、旅情報などを発信中。私生活ではドイツ語習得、新妻仕事に四苦八苦する日々を送っている。

2014年9月14日公開

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