清水焼と言えば、清水寺へ向かう山道に数多く並ぶ陶磁器店が印象的。歴史上は清水坂と五条坂一角あたりで焼かれていたものが清水焼と呼ばれてきました。京都を代表する伝統工芸のひとつですね。
では、清水焼団地をご存知ですか。1960年代後半、京都の南、山科に造成された清水焼の工業団地のこと。清水寺周辺には文化遺産として保存された登り窯があるだけで、現在は東山区周辺と宇治周辺と並び清水焼団地エリアが清水焼の一大生産地。京焼・清水焼の卸問屋、窯元、作家、陶磁器原材料屋、指物師、人形師、碍子など、‟焼き物”に関する業者が軒を連ねる“清水焼の郷”なのです。
ロクロを回す、色付けする。
そこで提案。現代の“清水焼の郷”でロクロを回し、色付けする体験、してみませんか。『TOKINOHA Ceramic Studio』は「見て、感じ、学べ、購入できる」というコンセプトを掲げる体験型店舗。ひときわ明るくモダンな外観、シックな色合いとシンプルなデザインの焼き物が店内に並びます。
「作り手と使い手の距離をもっと縮めたい」という想いから2021年に店舗をフルリノベーションしたオーナーの清水(きよみず)大介さん。
1階では日常に寄り添う〈TOKINOHA〉のオリジナル商品を並べ、2階は細かいディティール調整が必要になるプロ仕様のブランド〈素—siro〉を提案するギャラリーに。
さらに店内の奥には工房を併設。同じ陶芸家である奥様・友恵さんとともに、新しいアイデアを実現する場となっています。
ここで焼き物体験ができるのはふたつ。ひとつは「電動ロクロ体験」。用意された土をロクロの上で器にしていくもの。一つひとつが手づくりというのが京焼・清水焼の個性。土の手触りとロクロの回転に慣れる頃には、指導の甲斐もあって名品感が漂うなんとか器らしい形ができあがります。その後、釉薬をかけ、焼いていただけます。
もうひとつは「楽焼体験」。用意された好きな素地に釉薬を塗り900度の窯で10分ほど焼成するというもの。火バサミを使って窯から出したら、新聞紙で包み“いぶし”の作業。この作業によって色の出方が変化するとのことで、同じ釉薬を選んで焼いても雰囲気が異なり、元の釉薬の色からは想像もつかない仕上がりに驚きます。
自由な焼き物、それこそが清水焼の世界。
京都では清水焼以外にも粟田口焼・八坂焼・音羽焼・御菩薩池焼・御室焼・修学院焼と各地で焼き物がつくられていました。それらを総称して京焼と呼ばれ、現代の正式名称は京焼・清水焼。
一般的な陶磁器はその土地の土によって個性が生まれます。しかし、清水焼に代表される京焼は、原料が少ない京都において発展した稀有な焼き物。「しいて言えば手を使ってつくられたもの」とは清水さん。陶器も磁器もあって、個性を制限するものがない。多様な技法の集散地として発展した自由な世界。『TOKINOHA』の個性もまた清水焼のひとつなのです。
そんな自由な発想からか、店内では「陶芸を味覚で体験してもらう」をコンセプトにした、ここでしか味わえないユニークな飲み物をいただくことができます。清水さんの器に入った個性豊かな味も存分に楽しんでみて。
清水焼に触れる機会は、京都にいっぱい。
毎年秋、清水焼団地では『清水焼の郷まつり』が開催されてきました。2019年には3日間で約3万人以上の来場客が訪れています。残念ながらコロナウィルスの影響で2020年、2021年は開催を見送ってきましたが今年は3年ぶりの開催を予定しています。
京菓子屋さん、カフェ、もちろん京料理を楽しむときにも、ちょっと器を気にしてみてください。さまざまな京焼・清水焼の姿に出合えます。食べて楽しみ、見て触っても楽しむ……焼き物が彩るひととき。そんな京都体験もありですね。
TOKINOHA Ceramic Studio
[住所]京都市山科区川田清水焼団地町8-1
[営業時間]10:00-18:00
[定休日]火曜
[電話]075-632-8722
編集/エディトリアルストア
取材・執筆/成田孝男、渡辺美帆
写真/児玉晴希
※情報は令和4年7月30日現在のものです。