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清水焼と言えば、清水寺へ向かう山道に数多く並ぶ陶磁器店が印象的。歴史上は清水坂と五条坂一角あたりで焼かれていたものが清水焼と呼ばれてきました。京都を代表する伝統工芸のひとつですね。

では、清水焼団地をご存知ですか。1960年代後半、京都の南、山科に造成された清水焼の工業団地のこと。清水寺周辺には文化遺産として保存された登り窯があるだけで、現在は東山区周辺と宇治周辺と並び清水焼団地エリアが清水焼の一大生産地。京焼・清水焼の卸問屋、窯元、作家、陶磁器原材料屋、指物師、人形師、碍子など、‟焼き物”に関する業者が軒を連ねる“清水焼の郷”なのです。

清水焼団地には60を超える京焼・清水焼関連業者が集まる。『TOKINOHA』のような工房兼ショップもあるが、多くは工房のみ。
清水寺周辺、東山五条交差点のすぐそばにある若宮八幡宮。陶器神社としても知られる。
五条坂の中ほどから清水寺に向かう参道「茶わん坂」。五条坂で店を営む「茶碗屋久兵衛」は「金・赤・青」を彩色した陶器をつくり、清水焼の名を冠したとされる人物。その名が坂の名前に。(清水寺周辺)

ロクロを回す、色付けする。

そこで提案。現代の“清水焼の郷”でロクロを回し、色付けする体験、してみませんか。『TOKINOHA Ceramic Studio』は「見て、感じ、学べ、購入できる」というコンセプトを掲げる体験型店舗。ひときわ明るくモダンな外観、シックな色合いとシンプルなデザインの焼き物が店内に並びます。

〈TOKINOHA〉の店舗&工房はひと際目立つ。おいしいスイーツが出てくるカフェのよう。
パープルとブルーで展開される〈Copper〉は、ざらりとした手触りで存在感のあるシリーズ。トールカップ各4,180円(税込)。パープルは店頭限定販売。
どんな料理にも合うシンプルな〈shiro-kuro〉は、「料理を盛ることで完成する」というトキノハのコンセプトを一番強く感じさせる。豆皿は全種を集めたくなるかわいさ。各1,430円(税込)。
ゴマのような小さな黒い斑点が特長の〈sesame〉シリーズ。アイボリー、グレー、マスタードの3色で展開。大皿7,920円、中皿5,060円、小皿3,300円(すべて税込)。
アミューズなどコースの最初の一口を乗せる器として好まれる、高さのある台皿。器が主張しすぎず、存在感もある。〈素―siro〉で過去に制作した器のアーカイブ。
フチが特徴的なボウル。これも清水焼の自由な世界。〈素―siro〉で過去に制作した器のアーカイブ。
京都とオーストラリアのレストランに採用された、通称「ふにゃ皿」。一見使いにくそうだが、料理が映えると評判がいいそう。〈素―siro〉で過去に制作した器のアーカイブ。
自然光がたっぷり入る店内。『TOKINOHA』の焼き物の魅力である釉薬の色ムラもくっきり浮かび上がる。
2階のギャラリーは、サイズや色、素材感など、テイストの異なる陶器が並ぶ。レストランや料理人らプロのフルオーダーのほか、『TOKINOHA』メンバーズになるとセミオーダーが利用できる。

「作り手と使い手の距離をもっと縮めたい」という想いから2021年に店舗をフルリノベーションしたオーナーの清水(きよみず)大介さん。

1階では日常に寄り添う〈TOKINOHA〉のオリジナル商品を並べ、2階は細かいディティール調整が必要になるプロ仕様のブランド〈素—siro〉を提案するギャラリーに。

さらに店内の奥には工房を併設。同じ陶芸家である奥様・友恵さんとともに、新しいアイデアを実現する場となっています。

工房も明るい空間。“薄暗くてほこりっぽい、夏は暑く冬は寒い”。それでよしとする環境を変えたかった。
「飾るためでなく、使うための器をつくるほうが性に合っている」と清水さん。料理が盛られて完成するようなシンプルさを心掛ける。
特注皿の素地に色付けをする。釉薬の発色は窯の酸素量にも影響されるため、同じ釉薬を塗ってもまったく違う色に仕上がることもある。

ここで焼き物体験ができるのはふたつ。ひとつは「電動ロクロ体験」。用意された土をロクロの上で器にしていくもの。一つひとつが手づくりというのが京焼・清水焼の個性。土の手触りとロクロの回転に慣れる頃には、指導の甲斐もあって名品感が漂うなんとか器らしい形ができあがります。その後、釉薬をかけ、焼いていただけます。

もうひとつは「楽焼体験」。用意された好きな素地に釉薬を塗り900度の窯で10分ほど焼成するというもの。火バサミを使って窯から出したら、新聞紙で包み“いぶし”の作業。この作業によって色の出方が変化するとのことで、同じ釉薬を選んで焼いても雰囲気が異なり、元の釉薬の色からは想像もつかない仕上がりに驚きます。

「電動ロクロ体験」(8,800円・税込)は40~50分の器づくり。丁寧にレクチャーしてくれるので初心者や子供にも安心。完成品は後日送付(2ヵ月程度)。
「楽焼体験」(8,800円・税込)は約1時間の色付け体験。釉薬の厚みや、いぶしの違いで、出来上がりもさまざまに。その日に持ち帰ることが可能。体験予約はともに前日の15時まで。
塗り終わったら専用窯で10分程度の焼成。火バサミで取り出し、新聞紙でくるみ“いぶし”の作業へ。
『TOKINOHA』の釉薬はすべてオリジナル。清水焼ではつくり手が自分で釉薬を配合するのが一般的だとか。

自由な焼き物、それこそが清水焼の世界。

京都では清水焼以外にも粟田口焼・八坂焼・音羽焼・御菩薩池焼・御室焼・修学院焼と各地で焼き物がつくられていました。それらを総称して京焼と呼ばれ、現代の正式名称は京焼・清水焼。

一般的な陶磁器はその土地の土によって個性が生まれます。しかし、清水焼に代表される京焼は、原料が少ない京都において発展した稀有な焼き物。「しいて言えば手を使ってつくられたもの」とは清水さん。陶器も磁器もあって、個性を制限するものがない。多様な技法の集散地として発展した自由な世界。『TOKINOHA』の個性もまた清水焼のひとつなのです。

そんな自由な発想からか、店内では「陶芸を味覚で体験してもらう」をコンセプトにした、ここでしか味わえないユニークな飲み物をいただくことができます。清水さんの器に入った個性豊かな味も存分に楽しんでみて。

塗ったときの色と焼き上がりが異なる、釉薬の色変化を味覚で体感する〈トキノスミ〉(770円・税込)。液体は真っ黒でも味は赤い(!?)炭酸飲料。
粘土を飲むような体験ができる〈トキノドロ〉(880円・税込)。ドリンク袋の隙間に粘土が詰められ、それをグニョッグニョしながら飲む。中身が見えずドキドキするが、中は粘土の食感を表現した甘いソイプロテイン。
2011年にこの地に工房を開き、同じく陶芸作家である奥様の友恵さんと夫婦合作からスタート。

清水焼に触れる機会は、京都にいっぱい。

毎年秋、清水焼団地では『清水焼の郷まつり』が開催されてきました。2019年には3日間で約3万人以上の来場客が訪れています。残念ながらコロナウィルスの影響で2020年、2021年は開催を見送ってきましたが今年は3年ぶりの開催を予定しています。

京菓子屋さん、カフェ、もちろん京料理を楽しむときにも、ちょっと器を気にしてみてください。さまざまな京焼・清水焼の姿に出合えます。食べて楽しみ、見て触っても楽しむ……焼き物が彩るひととき。そんな京都体験もありですね。

TOKINOHA Ceramic Studio

[住所]京都市山科区川田清水焼団地町8-1
[営業時間]10:00-18:00
[定休日]火曜
[電話]075-632-8722

編集/エディトリアルストア
取材・執筆/成田孝男、渡辺美帆
写真/児玉晴希

※情報は令和4年7月30日現在のものです。

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おとなの週末Web編集部
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