※料理や使用食材は日ごと、時期ごとに多少の変動がありますのでご了承ください。
撮影/西﨑進也、貝塚 隆 取材/岡本ジュン
三ぶん 離亭(最寄駅:東銀座駅)
銀座の人気立ち飲みが手がけた着席スタイルの離れ
銀座の人気立ち飲み『三ぶん』が離れを開店。
こちらはゆっくり飲んでもらおうという着席スタイルで、しかもハイクオリティな料理は内容も価格も立ち飲みとほぼ共通というから見逃せない。
『三ぶん』といえば、ひとひねり遊びを加えたつまみが特長だが、アンチョビならぬ秋刀魚を使った自家製のサンチョビソースもそのひとつ。
アンチョビ以上にコクと旨みがあり日本酒が止まらない。
伝統調味料の煎り酒や地がらしを料理に使うセンスのよさにも脱帽だ。
刺身を始め、丁寧な仕事が光る自家製の酒肴も健在。
立ち飲み以上にゆっくり、じっくり料理と酒を味わえる。
●刈穂山廃純米超辛口 500円(六勺)
「ぬる燗で楽しんで」というこの酒は、スッキリしたシャープな味わいの中にも上質できめ細かな米の旨みを感じさせる。
食事と合わせるより、最後の〆としておすすめ。
店舗情報
酒蔵きたやま(最寄駅:大塚駅)
酒呑みの心をくすぐる古典酒場の雄
銘酒居酒屋の激戦区・大塚にあって、古風な酒場スタイルで30年以上も愛されてきた『きたやま』。
こと1階のコの字カウンターは最上の空間だ。
料理長が築地に出向いて仕入れる魚を始め、スタンダードな居酒屋メニューがとにかく豊富。
壁に貼られた品書きの短冊を眺めるだけで食いしん坊にはたまらない。
昔ながらの辛口の定番酒から軽やかでモダンなもの、この時期はひやおろしと、日本酒も幅広い揃えで「どんなお好みにも応えます」と頼もしい限り。
最初の一杯に迷ったら、さらりと飲める手取川をぜひ。
選べる小鉢三品をアテに飲りつつ、じっくり作戦を立てるのもいい。
店舗情報
つねまつ久蔵商店(最寄駅:月島駅)
水よし、米よしの国島根の美酒を気軽な立ち飲みで
意外と知られていないが島根県は酒処。
「人口に対する酒蔵の数が多く、一人当たりの日本酒を飲む量は全国で3本の指に入るんです」というのはオーナーの常松さん。
実家は明治から続く島根の酒屋で、日本酒の仕事にも長年に渡って携わってきた。
地元を愛し、島根の観光大使を務める傍ら、島根の酒を広く知ってもらおうと月島に立ち飲み居酒屋をオープン。
李白や月山などの有名なものから東京ではあまり見かけない蔵まで約20種類。
島根から直送の鮮度のいい魚もこれから寒くなればますます味がのってくる。
そんな島根が誇る酒と魚を東京の下町で味わうのもまた一興だ。
店舗情報
電話番号 03-6204-9740
銀座魚勝(最寄駅:銀座駅)
魚とおばんざい名物コロッケが旨い銀座の人気店
数寄屋橋交差点からすぐという好立地にありながら、美味しい料理と日本酒がリーズナブルな価格でいただける日本酒居酒屋。
料理の主軸はカウンターに並ぶ大皿料理のおばんざいと築地から仕入れる魚だ。
実は店主の柳橋さんは築地出身で、実家は魚屋というから目利きも確か。
忘れずに食べたい名物が「尾崎牛コロッケ」。
尾崎牛は生産者の名前が付いた宮崎和牛で、出荷量が少なく東京でも食べられる店が限られている。
これをアテに飲む七賢のひやおろしの旨いことったら。連日満席という人気ぶりも頷ける。
店舗情報
日本酒バル 福33(最寄駅:神田駅)
お燗酒とつまみでゆるりといい時間を過ごしたい
この店は、通りすがりではなかなか見つけられない神田バル横丁の2階にある。
スタイリッシュなカウンターで迎えてくれるのは、はんなりした美人女将の村岡さん。
「お燗酒の楽しさをもっと知って欲しい」と、燗上がりする純米酒をズラリと揃えている。
しっかり味がのったひやおろしを常温とお燗など、温度帯を変えて味わうのもこの季節ならではのお楽しみだ。
料理にも力を入れていて、おすすめのくじら刺しは上質なナガスクジラしか使わないなど、吟味を重ねた素材が光る。
日本酒バルというだけに1杯からでも気軽に飲めるので、ハシゴ酒が楽しい神田にぴったりだ。
店舗情報
【コラム】“ひやおろし”って、どんなお酒なんですか?
〈ひやおろし〉は秋になると出回る季節ものの酒。
日本酒好きなら一度くらいは飲んだことがあるのでは?
でも、意外とその実態を知らないという人は多いようだ。
今回の〈ひやおろし〉企画撮影中に、カメラマンNは「これは〈ひやおろし〉だから、お燗じゃなくて冷やですよね?」と口走った。
ライター岡本(元唎き酒師)は「ナニヲイッテイルンダ、コイツハ」と思わずのけぞってしまった。
その瞬間にカメラマンNの評価が5段階ぐらい下がったことは本人には内緒にしておこう。
というわけでいまさら(←ここ強調)ですが〈ひやおろし〉について語っておこう。カメラマンNよ、よく聞くのだ!
冬に仕込んだ日本酒を蔵で貯蔵し、夏を越して気温が下がる秋になってから出荷するのが〈ひやおろし〉。
一般的な日本酒は貯蔵の前と出荷前の2度火入れ(加熱処理)をするが、〈ひやおろし〉は貯蔵前に1度しか火入れをしない。
つまり生詰め(ひや)で出荷する(卸す)ことが語源と言われている。
ひと夏越した酒なので熟成が進み、味に深みが増している。
だから秋になって脂がのった魚や栗、里芋、きのこなどの秋の味覚に合うというわけ。
飲み方は、冷酒や常温でもいいが、熟成が進んでいるだけにお燗もおすすめ。
ちなみに、秋になって酒の品質が上がることを「秋上がり」という。
それゆえに最近は「秋上がり」と書いてあるものもあるが、その使い分けは明確にはなっていないようだ。
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