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1986年に国鉄高森線から第3セクター鉄道になった南阿蘇鉄道。 国鉄の時代から最大の撮影ポイントが第1白川橋梁です。 美しい赤いアーチ橋で1928年から使用開始されて、約90年が経っています……。

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南阿蘇鉄道、復興へ! /1986~2018年

1986年に国鉄高森線から第3セクター鉄道になった南阿蘇鉄道。
国鉄の時代から、最大の撮影ポイントが第1白川橋梁です。
美しい赤いアーチ橋で、1928年から使用開始されて約90年が経っています。

[赤いアーチが美しい第1白川橋梁(2008年撮影)]

南阿蘇鉄道の名物列車がトロッコゆうすげ号。
トロッコの名前の通り、屋根のない貨物車両を改造しいて、大きな窓が特徴です。
この列車は、オンシーズンの休日を中心に運転しています。

[観光列車トロッコゆうすげ(2018年撮影)]

このトロッコ列車から見る車窓のクライマックスも、この橋梁の上です。
ゆっくりゆっくり走って、大きな窓から美しい渓谷を望み、車内を抜けて行く風を楽しむことができました。

[第1白川橋梁からみた渓谷(2009年撮影)]

この列車に乗るときのもうひとつの楽しみは、高森駅で購入する駅弁です。
シンプルなとりご飯ですが、さすが鶏料理の九州、おいしい駅弁でした。

[高森駅で購入することができた駅弁(2009年撮影)]

[シンプルながらおいしい鶏が並ぶ(2009年撮影)]

2016年の熊本地震からの復旧をめざして

しかし、2016年4月に発生した熊本地震によって南阿蘇鉄道も被災してしまいました。
高森駅の駅弁も、弁当屋が被災してしまい発売できなくなりました。
途中駅の中松駅~終点の高森駅までは7月に復旧したものの、第1白川橋梁のある区間は現在も運休中です。
当時、テレビ報道を見た限りでは、鉄橋自体の被害は小さく見えたのですが、その後の調査で基礎部分が大きく破損していて、そのままでの復旧は難しいという話でした。
2017年に、それまで通行ができなかった南阿蘇鉄道と併走する道路が開通。
この道から、ようやく現地を見ることができました。

[被災後の第1白川橋梁、一見すると変化なく見える(2017年撮影)]

[撮影ポイントから谷間を見ると地形が変わるほどに(2017年撮影)]

鉄橋は以前と変わらないように見えたのですが、撮影ポイントになっていた道路橋から見た谷は、まったく見覚えのない地形になっていました。
昔、撮影のために走っていた旧道も見えません。

[開業直後に、旧道付近から撮った写真。美しい渓谷だった(1988年撮影)]

2017年になって、うれしいニュースが入ってきました。
鉄橋を含めて、全線の復旧工事が行われることが決まったのです!
鉄橋は新しくコンクリートで作り直すだろうと思っていた橋梁も、いったん解体して組み立て、元の姿に戻す計画だそうです。
2018年3月には、復旧工事が始まりました。
安全に元の姿に戻るのを楽しみに待ちたいと思います。

阿蘇白川水系の豊かな湧水も楽しみたい!

現在列車が走っている中松駅~高森駅間の車窓が美しいという話は。前回38回のときにお話ししました。
この区間には風景以外にも楽しみがあります。
ひとつは、湧水です。
この路線の沿線は、阿蘇白川水源をはじめ、名水と呼ばれる湧水が多いので有名です。
列車の窓からも、何カ所かの水源が見えます。
中松駅と阿蘇白川駅間では線路のすぐ近くに水汲み場で、列車がゆっくり走って案内してくれます。

[水汲み場では列車がゆっくり走って案内してくれる(2017年撮影)]

この水源は〝吉田城御献上汲場“。
かつては、この地のあった吉田城の水をすべてまかなっていたそうです。
熊本県名水100選にも選ばれ、決して大きくない汲み場ですが、湧き出し量は毎分5トン。
こんこんと湧き上がっています。
水をいただくときは、蛇口などはなくて、容器を沈めて水を汲みます。

[湧水の汲み方はこんな感じ(2017年撮影)]

汲み場の下流でカメラを沈めて見てみると泡とともに、どんどん湧いているのが見えました。

[澄んだ水がこんこんと湧く(2017年撮影)]

水の味ですが、とにかくまろやかで、焼酎の水割りにすると、ぐっと味が増します。
この近郊の湧水をいくつか飲み比べてみたのですが、硬さなどけっこう違っていて面白いです。
私には、この吉田城献上汲場がいちばん合っていました。
このあたりに旅に来たら、ぜひ湧水の飲み比べをして、自分好みの水を見つけてください。

そして、もうひとつの楽しみが「駅舎のお店」

車窓以外の楽しみのもうひとつは駅舎にあるお店です。
南阿蘇鉄道の駅には蕎麦屋、シフォンケーキの店、カフェなどがあります。

あるとき、阿蘇白川駅のホームで手を振って見送りをしていただきました。

[阿蘇白川駅ホームの見送り(2017年撮影)]

乗車後に寄ってみると駅はきれいなカフェになっていました。
カフェの名前は〝75h st.(セブンティ・フィフス・ストリート)“。
古き良きアメリカンな雰囲気の店です。

[青い時計台の阿蘇白川駅(2017年撮影)]

[カフェの窓からホームと列車が見える(2017年撮影)]

いただいたランチは自家菜園の野菜や南阿蘇村の有機野菜の料理。
すごくやさしい味で、旅の疲れを癒してくれます。
沿線で撮影のとき、ちょうどお昼ごろには列車がないので、こちらもゆっくりとランチがいただける、ありがたい店です。

[この日のランチ(2017年撮影)]

[コーヒーサラダ付きで1000円(2017年撮影)]

まだまだ復興半ばの南阿蘇鉄道ですが、これからも応援していきたいです。

[応援列車の車内(2017年撮影)]

佐々倉実(ささくら みのる)
 鉄道をメインにスチール、ムービーを撮影する“鉄道カメラマン”、初めて鉄道写真を撮ったのが小学生のころ、なんやかんやで約50年経ってしまいました。鉄道カメラマンなのに撮影の8割はクルマで移動、列車に乗ってしまうと、走るシーンを撮影しにくいので、いたしかたありません。そんなワケで年間のかなりの期間をクルマで生活しています。趣味は料理と酒! ヨメには申し訳ないのですが、日々食べたいものを作っています。
 鉄道旅と食の話、最新の話題から昔の話まで、いろいろとお付き合いください。
 ちなみに、鉄道の他に“ひつじ”の写真もライフワークで撮影中、ときどきおいしいひつじの話も出てきます。なにとぞご容赦ください。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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