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渋谷『松濤はろう』

酒のつまみは数あれど、とりわけポテトサラダをこよなく愛すマッキー牧元氏。「ポテサラ学会」の会長でもある氏が、ポテサラが旨いと評判の店に足を運び、その美味しさを伝えるコーナーです。

ポテトサラダ=家族愛に満ちた味

「メニューを見て、まずは季節のもの、他のお店にないものをチェックするんです。それで店の個性や考え方がわかるでしょ。あとはアレ。メニューにあればもう、自動的に必然的に頼んでしまうんだよね」
 とは、美味しい料理がある、すごい料理人がいると聞けば、国内外を問わず喜び勇んで出かけてしまう食いしん坊であり、また常に感動が待つひと皿を探すタベアルキストでもあるマッキー牧元氏。そんな彼が、一も二もなく注文するアレとは、素朴で家庭的でメニューの中のいぶし銀的な……そうポテトサラダだ。

「みんな子どもの頃から好きで、食べるとホッとする安心感があるでしょ。しかもよくよく考えてみれば、ジャガイモが父親、マヨが母親、キュウリやニンジンは子供で、卵が祖母。そんな風に家族愛に満ちた味の構成にもなっているんですよ。だからおじさんの精神安定剤にぴったりっていうかね(笑)」
 そんなマッキー氏は、ポテサラへの愛情が深くなりすぎ、ついには「ポテサラ学会」なるものを設立し会長に就任。ポテサラの魅力の普及にも尽力している。

 さて、渋谷区松濤。東急本店の裏手を進み、喧騒から離れた一角に、酒と和食の店『松濤はろう』はある。大将の井上隆之氏と女将の仁美さん、夫婦二人で営む隠れ家的な和食店。刺身、煮物、揚げ物など奇をてらわない、しかし丁寧かつアイデアに富んだ料理と、料理に寄り添う厳選されたお酒。さらに店構えの端正さとは裏腹に、家庭的な居心地の良さもありと、全ての面において満足させてくれる店だ。そんな『松濤はろう』のポテサラは、やはり他店にはないアイデアが混ぜられていて、美味らしい。そんな評判を耳にしたマッキー氏。さっそく足を運んだのはいうまでもない。

 6月某日。『松濤はろう』の白木のカウンターにマッキー氏の姿があった。手にしたグラスにはきめ細やかな泡が立つサッポロラガー、通称「赤星」が注がれている。ビールを楽しみながら、ポテサラとのご対面の瞬間を待つ。

「赤星」に昭和のビールの栄光を見た

サイコロ状にカットしたベーコンを炒め、仕上げにバターを加える(左)玉子が多めのポテサラに、たっぷりとベーコンをのせるが『松濤はろう』流(右)

 ところでマッキー氏、この「赤星」にも思い入れがあるのだという。
「ビールを飲んだ! という味わいが好きで、昔、よく飲んでいたんです。大瓶でね。今飲むと昭和のビールの栄光が感じられて、店にあれば必ず頼むんですよ」

 グビリと飲んで、笑顔になるマッキー氏。そして3杯目を注ごうとしたところで、待ちに待ったポテサラの登場だ。

マッキー流ポテサラの流儀

「ポテトサラダ」(756円)

 ベースはジャガイモとゆで卵。そこにキュウリのスライスが入り、味付けはマヨネーズというシンプルな構成。しかし、そこにサイコロ状のベーコンがゴロゴロと乗り、隠し味に牛乳で煮た後に潰したニンニクと焦がしバターが使われているという逸品だ。

 そんなポテサラを前に、目がなくなるほどの笑みを浮かべるマッキー氏。しかし、すぐに箸を伸ばすわけではない。まずはポテサラの器をうやうやしく手に取ると鼻先へと運ぶ。
「最初にポテサラの匂いを楽しみます。あぁ、ジャガイモやベーコンがいい香り。次にその盛られた姿をじっくりと愛でるのです。ゆで卵が多めな色合いがいい感じですね」

 と、鼻と目で十分に堪能した後、いよいよ箸をポテサラへ。
「ただしその味を知るために、ひと口目はジャガイモのみを取って食べるんです」

 自身の流儀に従って、ゆっくりと慈しむようにジャガイモを食べるマッキー氏。そしてふた口目はベーコンと一緒にポテサラを食べる。
 「ベーコンの旨み、香り、食感が玉子多めのポテサラのいいアクセントになっているね。例えるなら、ベーコンは今はしっかりと真面目になった、元ヤンチャな甥っ子って感じかな(笑)。アイデアのニンニクもコクを加えていて、噂通り、実に美味しいね」
 その顔には笑みが浮かびっぱなしだ。

ポテサラの奥深さに感服!

 もう一度同じ食べ方をして、今度はビールをゴクリと飲む。
「オォ、赤星を飲むことで、ニンニクとベーコンの香りが引き立ちますね。しかも三者が絡んで味をより深め合うだけでなく、赤星がポテサラ全体の甘みとコクも引き出してくれますね」
 と、それまでの笑顔が驚きの表情に変わる。

「食事に負けないしっかりとしたコクある味なんですが、香りは料理を邪魔しないほどよさ。懐の深い赤星は私の料理によく合うんですよ」
大将が加えた言葉に、マッキー氏も大きく頷く。

 ベーコンとポテサラを一緒に食べたり、ベーコンを食べてからポテサラを食べたり。赤星と共にいろんな楽しみ方をしながら、きれいにポテサラを平らげたマッキー氏。
「昔はポテサラの差って、ジャガイモの潰し方の違いくらいしかなかったんですよ。それが今では、ニンニクや焦がしバターを加えてコクを出したりと、店によって個性がバラバラで、美味しさもバラエティに富んでいる。ポテサラはますます奥深い食べ物になってきてるね」
 としみじみしながらも、「次はどんなポテサラに出合えるのか、ホントに楽しみですねぇ」と目を輝かせるのでした。

●マッキー牧元
タベアルキストを自称して早30年。ひたすら美味しいものを食べ歩き、それを生業とすべく小誌の連載「おいしい往復書簡」のほか、各誌で活躍するコラムニスト。また食雑誌『味の手帖』編集主幹でもあり、近著に『出世酒場』(集英社)がある。

お酒担当、燗番の女将・井上仁美さん(左)松濤のはずれにある、隠れ家的なお店(右)

 丁寧に作られる料理の数々は派手さはないものの、アイデアに富み、口に運ぶとその美味しさに驚かされる。お酒はメインが日本酒で、料理に合うものをと、全国から厳選したものを揃えている。1合756円〜。ビールはサッポロラガー(中)756円とヱビス小瓶756円を用意。ベーコンがどっさりと乗る「ポテトサラダ」756円のほか、燻製にした豚肉で作る「ハムカツ」972円、「甕蒸し牛すじ」756円なども名物。

撮影/西﨑進也

2016年11月29日公開

マッキーさんのポテサラ酒場の過去記事も読める!
【サッポロラガービールのおいしい情報が満載!「赤星★探偵団」はコチラ】
https://www.akaboshi-tanteidan.com/

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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おとなの週末Web編集部
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