×

気になるキーワードを入力してください

SNSで最新情報をチェック

icon-gallery

ひつまぶしだけではない 愛知うなぎの魅力とは

筆者の記憶が正しければ、いち早く東京へ進出したのは、愛知県・大口町に本店がある『ひつまぶし 備長』である。

“07年、「銀座マロニエゲート」にオープンし、店名も『ひつまぶし 名古屋 備長』と変え、名古屋の店であることを強調している。その後、池袋パルコや銀座三越、丸ビルにも出店。

さらに名古屋市天白区に本店がある『まるや本店』も”19年3月、東京ミッドタウン店を開店させた。このように、名古屋生まれのひつまぶしは着実に東京で浸透しつつある。

しかし、ひつまぶしはひとつのメニューであり、愛知のうなぎを語るにはそれだけでは足らない。

愛知のうなぎの最大の特徴は、蒸さずに焼く「地焼き」であること。強火の遠火で皮はパリッと、身はふんわりと仕上げていること。深いコクのある地元のたまり醤油とみりんを使っていることが挙げられる。

同じ地焼きでも、タレがあっさりめの関西のうなぎとはまったく別物なのである。

それを体現しているのが、名古屋市昭和区の『炭焼 うな富士』と、『うなぎ 四代目菊川』だ。実際、両店はひつまぶしも用意しているが、それ以外のメニューの方がよく出ている。

両店を訪れる客は、職人の技術によって引き出されたうなぎそのものの味を目当てに足を運んでいるのである。

“20年の土用丑の日(7月21日)、『炭焼 うな富士』の前には長蛇の列ができた。開店から閉店まで客足が途絶えることはなかったという。
コロナ禍でも、やはり夏場になると人々はうなぎが食べたくなるのだ

創業者が完成させた味を余すことなく伝えたい

「創業者の水野さんが完成させた味を継承し、伝えたいんです」と話すのは、”18年に『炭焼 うな富士』の事業を継承した「かぶらやグループ」の岡田憲征社長だ。

その言葉通り、”18年1月には地下鉄伏見駅近くに暖簾分け店『鰻う おか冨士』をオープンさせた。このコロナ禍でも通販やデリバリーで順調に売り上げを伸ばしている。

その秘密は、職人の育成にほかならない。創業者の水野尚樹氏は今も店に出て弟子たちの指導にあたっているのだ。彼らが職人として成長してきたこともあり、岡田さんは東京での出店を決断した。

「東京からわざわざ来られるお客様も大勢いらっしゃいますので、勝算はあると思っています。何よりも、水野さんの味を東京の方にも伝えたいという気持ちが大きいです」と、意気込みを語った。

『炭焼 うな富士』は、”20年9月10日開業のJR有楽町駅から新橋駅高架下にできた商業施設「日比谷OKUROJI」にオープンした。

『炭焼 うな富士 有楽町店』@日比谷OKUROJI

肝入りうなぎ丼(5273円)

脂の乗りが抜群の特大“青うなぎ”を使い、1000℃を超える備長炭の炎で豪快に地焼きする。

熟練の職人による焼きの技術で旨みが凝縮。さらに門外不出のコクのあるタレをまとったうなぎの、なんと香ばしいことか。プリッとして濃厚な味の肝も格別だ。

うなぎ丼には吸い物、香の物のほか、小鉢(取材時はうざく)が付く。

[住所]東京都千代田区内幸町1-7-1
[電話]03-6457-9688
[営業時間]11時~15時(14時LO)、17時~22時(21時LO)
[休日]施設に準ずる
[交通]JR山手線ほか有楽町駅日比谷口、JR山手線ほか新橋駅銀座口から徒歩6分

『うなぎ 四代目菊川』が目指すのは世界進出!

一方、『うなぎ 四代目菊川』も、”20年9月1日に開業した東京・芝浦の「msb Tamachi 田町ステーションタワーN」にオープン。

さらに、羽田空港内の『羽田エアポートガーデン』にも出店するという(新型コロナウイルス等の影響により開業日未定)。

「”18年1月にシンガポールに出店したのですが、おかげさまで大好評だったんです。特に羽田エアポートガーデン店は、世界への足がかりであると捉えています」と話すのは、『うなぎ 四代目菊川』を運営する中庄ホールディングスの菊川雄平社長だ。

羽田へ出店するにあたって、菊川社長はハラール対応のうなぎ料理を完成させた。アルコールは御法度なので、さぞかし苦労したに違いない。

しかし、それは世界人口の4人に1人といわれるイスラム教徒にも愛知のうなぎを味わってほしいという気持ちの現れである。

愛知で産声を挙げた菊川名物の「一本鰻」が東京を、そして世界を席巻する日はそんなに遠くはない。

『うなぎ 四代目菊川』@msb Tamachi(田町ステーションタワーN 1階)

蒲焼き一本重(4980円)

地焼きしたうなぎの美味しさを1本丸ごと味わえる贅沢なお重は、吸い物、小鉢、お新香付き。

約300gの立派なうなぎを備長炭の強火で一気に焼き上げ、パリッ、フワッ、トロッとした仕上がりが素晴らしい。名物のダイナミックな一本うなぎで、その確かな味をお試しあれ。

[住所]東京都港区芝浦3-1-(1田町ステーションタワーN)
[電話]03-6435-1128
[営業時間]11時〜15時(14時LO)、17時〜22時(21時LO)
[休日]施設に準ずる
[交通]JR山手線ほか田町駅芝浦口から徒歩1分

撮影/永谷正樹、西崎進也(炭焼 うな富士 有楽町店)、編集部(うなぎ 四代目菊川)
取材/永谷正樹、松田有美(炭焼 うな富士 有楽町店、うなぎ 四代目菊川)
※店のデータは、2021年1月号発売時点の情報です。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

icon-gallery
関連記事
あなたにおすすめ

関連キーワード

この記事のライター

terasaki
terasaki

terasaki

最新刊

2024年12月20日に開業110周年を迎える東京駅を大特集。何度来ても迷ってしまう。おいしい店はど…