油揚げは、刻んでお味噌汁に入れたり、柔らかく煮たあとにすし飯を入れてお稲荷さんにしたり……。そんなイメージがありますが、ステーキのように焼く食べ方で熱い支持を得ている油揚げが北陸にあります。「谷口屋の、おあげ」のことです。
画像ギャラリー創業大正14年 油揚げと豆腐の老舗
福井県坂井市の竹田(たけだ)地区。自然豊かな山間部に、谷口屋はあります。創業は大正14年。油揚げと豆腐の老舗です。
看板商品「谷口屋の、おあげ」の特徴は、そのサイズにあります。「一番の特徴は大きさです。『こんなに分厚くて大きい油揚げは見たことがない』とお客さんに言われます」。こうお店の方は言います。地名から、“竹田の油揚げ”の愛称で、長年にわたって親しまれてきました。
ほぼ正方形の1枚の大きさは、一辺が13cm超で、厚さは3・5cmほどもあります(購入した「谷口屋の、おあげ」を計測)。重さもお豆腐1丁ほどのずっしりとした手応えがありました。お店の担当者によると、約300gはあるそうです。
「報恩講」が背景に 福井市は油揚げ購入額が58年連続で1位
坂井市に隣接する福井市は、1世帯当たりの「油揚げ・がんもどき」の購入額が、全国の県庁所在地と政令指定都市の中でトップ。調査が始まった1963(昭和38)年から58年連続で全国1位です。
なぜ、こんなに消費量が多いのでしょうか。背景には、「報恩講」があります。北陸は、浄土真宗が盛んな地域。「報恩講」は親鸞聖人を偲ぶ法要です。「報恩講」の影響もあって、油揚げは福井県民にとってとても身近な食べ物です。
「福井県はお寺が多く、報恩講で出す精進料理で、油揚げは貴重なたんぱく源でした」(お店の担当者)。谷口屋の油揚げは、大きいと豪華に見えるということで、現在のようなサイズになったそうです。
表面はパリっ、中はふわふわ 1日3000枚を揚げ師が揚げる
谷口屋の油揚げには、もう一つ大きな魅力があります。それは、食感。「パリっと香ばしい表面の食感と厚揚げではないからこその内側のふんわり柔らかい食感は絶品」(谷口屋のホームページより)。これが、絶大な人気の一番の理由といえるでしょう。
その絶妙な味わいを生み出すこだわりが、いくつかあります。
(1)北海道産100%の菜種油で揚げている
(2)契約有機栽培で育てた非遺伝子組み換えの菜種だけを使用
(3)国産大豆100%で作っている
(4)越前の海から取れる天然にがりを使っている
(5)職人が1枚につき、1時間近くかけて手作業で揚げている
(6)添加物は不使用
「揚げ師」と呼ばれる数人の職人が、1日当たり3000枚も揚げています。谷口屋の併設レストランでは、太白ごま油で揚げた名物「太白おあげ」が味わえ、休日には行列ができるほどの人気だそうです。
油抜きせずに調理
その自慢の油揚げを食べてみます。調理のポイントは「油抜きしない」こと。「油にとてもこだわっていますので、油抜きせずにそのまま調理してみて下さい」と、お店の担当者からアドバイスをいただきましたので、袋から取り出してそのままお皿に移して電子レンジで1分弱、温めます。この後、フライパンかオーブントースターで焼くのですが、フライパンを使ってみました。
フライパンには油をひかず、蓋をして弱火で表と裏を5分ずつ焼けば、出来上がりです。大根おろしをのせてネギと醤油をかければ、「あげ焼きステーキ」の完成です。
日本酒、ビールのお伴に最適!!
焼き目のついた表面が、なんとも美味しそうな色合いです。箸を入れると、パリっと表面が割れ、中身が現れます。まずは、大根おろしなど何もつけずに、一口。商品パッケージに「外はさくさく食感、中はジューシーでふわふわのやわらかさ」との記載がありましたが、まさにこの通りです。調味料を用いなくとも、油と大豆の甘み、濃厚な味わいが口に広がります。うん、うまい!!
次に、大根おろしをのせて醤油をかけた部分を味わいます。ご飯のおかずに、とても合う味です。ポン酢を垂らすと、さっぱり感が出ました。これも、いけます。
お店の担当者には、シンプルに一味唐辛子を振りかけて食べる方法も教わりました。試してみて、これは日本酒のつまみになると直感しました。福井の銘醸「黒龍 いっちょらい」を合わせてみます。ピリリとした辛味がいいアクセントになって、大豆の旨味を引き立てます。芳醇な吟醸酒で、さらに油揚げの美味しさを実感することができました。
ビールと一緒に味わうのも、最高です。ガブリとかじって、舌に残った油分をビールで流し込みます。ビールが至福の一杯に昇華しました。
大根おろし、ネギ、醤油、ポン酢、一味、塩……。薬味と調味料で、味の変化を楽しめるのも魅力です。
福井県のアンテナショップ「ふくい南青山291」で、1位の売り上げ
「谷口屋の、おあげ」を購入したのは、東京・南青山にある福井県のアンテナショップ「ふくい南青山291」です。副店長の伊藤多佳子さんによると、「谷口屋の、おあげ」は、「ふくい南青山291」の月間食品売上ベスト10で、常に1位か2位という人気商品。冬場は、福井の冬の風物詩「水ようかん」がトップとなりますが、春から秋にかけては「不動の1位」とのことです。
「焼くとクロワッサンのように、表面がさくさく。油揚げなのに、中がふわふわのやわらかさです」と、福井県出身の伊藤さんが太鼓判を押す美味しさです。店頭価格は1枚648円と通常の油揚げに比べるとかなり高価ですが、食べれば納得の味です。
谷口屋や、ふくい291のオンラインショップから“お取り寄せ”もできるので、巣籠り生活のちょっとした贅沢として、味わってみたい絶品グルメです。
「ふくい南青山291」の店舗情報
福井県のアンテナショップの青山店。1階にショップ、2階に観光情報コーナーや企画展示コーナー。1階ショップには、食品や地酒に加え、越前焼、越前和紙など伝統工芸品も含め約4500種類の特産品が並んでいます。銀座店の「食の國 福井館」は食に特化した店舗です。
[住所] 東京都港区南青山4-41グラッセリア青山
[電話]03-5778-0291
[営業時間]11時~19時 ※営業時間は異なる場合があります
[休日]年末年始
[交通] 地下鉄千代田線・銀座線・半蔵門線表参道駅B3出口から徒歩5分
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