コロナ禍のステイホームを前向きに楽しむべく、外食の代わりにお取り寄せで、スイーツや地方の名物など「ちょっとしたぜいたく品」を購入する人が増えています。「おとなの週末」が展開中の「おとなの週末お取り寄せ倶楽部」も活況ですが、かくいう私も例外ではなく、日々のネットサーフィンで美味しそうなものサーチに勤しんでいます。そんな中、食通になじみ深いヒゲタ醤油が発売する1本2000円(!)の醤油を見つけました。これは一体、どんな醤油なのでしょう?
画像ギャラリー創業400年のヒゲタ醤油が発売 今年で30周年
その高級醤油とは、千葉県銚子市に蔵元を置く創業400年の老舗醤油メーカー「ヒゲタ醤油」が5月1日から予約受付を開始した「玄蕃藏(げんばぐら)」です。発売開始から今年で30周年を迎えます。
多くの名店でも使われている「本膳」
ヒゲタ醤油といえば多くの名店などでも使われる醤油「本膳」が有名です。ちなみに、この「本膳」も200mlで267円(税込)からと一般的な商品と比べ、ちょっぴりお高め。普段使いをするには勇気がいる醤油なので、緊縮財政が続く我が家の話で大変恐縮ですが、奮発して購入した刺身や寿司など「ここぞ」の機会で活躍してもらっています。
創業者・田中玄蕃の名に由来
ヒゲタ醤油のホームページによると、玄蕃藏は500mlびんで2000円(税込、450ml密封ボトル入りも同額)。前述の本膳と比べ約3倍のお値段です。何と、さらに期間限定の完全予約制で、年に一度しか購入できないというではありませんか。創業者の田中玄蕃(げんば)氏の名に由来し、「昔ながらの製法で今の時代にふさわしい醤油」とあります。うーん、気になる。ヒゲタ醤油営業企画部の常陸輝行さんに電話でお話を聞いてみました。
コンセプトは「江戸造り醤油」
――お世話になります。玄蕃藏(げんばぐら)とはどんな醤油なのでしょうか?
「もともと、ヒゲタ醤油の創業者である三代目田中玄蕃の蔵でつくっていたので『玄蕃藏』という名前になりました。コンセプトは『江戸造り醤油』で、創業当時(江戸時代初期)の製法にならい作り上げた醤油です」
――具体的に「江戸時代の製法」とはどんなものですか?
「仕込式から蔵出し式までを江戸の五節句(※)に合わせてとり行います。特に蔵出し式の日は、五節句の中でもなじみのうすい『重陽の節句』(秋の収穫を祝い、長寿を祈る菊の節句)とし、江戸の五節句を今、再現させようという社長の願いをこめたものです」
(※) 人日(じんじつ)・1月7日、上巳(じょうし)・3月3日、端午(たんご)・5月5日、七夕(しちせき)・7月7日、重陽(ちょうよう)・9月9日の五つ。
――どのような素材を使われているか教えて下さい。
「醤油づくりの3大原料である大豆、小麦、塩はすべて国産素材を使っています。富山県産の大豆『エンレイ』、北海道産の小麦『春よ恋』、香川県産『瀬讃の塩』を使用しています。あとはヒゲタ秘伝の米麹をいれることで、よりマイルドな奥深い味わいになります」
――秘伝!その米麹についても詳しくお聞きしたいのですが…
「なにぶん秘伝なので(笑)」
玄蕃藏には生醤油も
――承知しました(笑)。ヒゲタさんですと「本膳」が有名ですよね。「おとなの週末」の掲載店でも使われていると聞いています。「本膳」と「玄蕃藏」ではどういった所が違うのですか?
「『本膳』については、ヒゲタ独自の醸造技術を使って旨さを追求した醤油ですね。うまみ成分となる窒素分またはエキスの多さを表すJAS規格で、特級のなかで窒素分が特級規格より20%以上高いものに関しては『超特選』が与えられるのですが、本膳は超特選を獲得しています」
――なるほど、「玄蕃藏」は伝統、「本膳」には技術で、それぞれうまさを追求しているのですね。あと、玄蕃藏には生(なま)醤油もあると聞きました。
「はい。まず、通常の醤油と生醤油の違いですが、つくる工程で微生物を取り除くために火入れをするかしないかということですね。火入れした醤油は香ばしさ(火香)がついて、しっかりした味になりますが、生醤油はさらっとした味わいです。生醤油は火を入れる替わりに、ろ過によって微生物を取り除いています」
――それぞれ玄蕃藏と玄蕃藏生はどのような料理に合いますか?
「しっかりした濃厚な味わいですので、お刺身ですとマグロの赤身には玄蕃蔵が合いますね。一方、玄蕃藏生(税込み2000円、450ml密封ボトル入り)は色味もあざやかでさらりとしています。白身のお刺身や、だしの香りを生かしたお鍋がおすすめですね」
――お話を聞いているとお刺身をいただきたくなりました。ステイホームが続く昨今ですが、コロナ禍で売れ行きの変化などはありますか?
「ステイホームの影響でしょうか、昨年から若い世代の方からネットを通じてご購入いただくことが増えたかと思います」
納得の品質に至らず、販売を控えたことも
――HPを拝見していると、長年のファンも多いとか。
「そうですね、発売して30年ですがありがたいことに発売当初から購入を続けて下さる方もおります。発酵の具合でその年の味の違いがありますから、アンケートでも前年や過去のものと比べたご意見をいただくので、商品を送り出す度に背筋が伸びる思いです」
――長く購入されている方だからこそのご意見ですね。そのほかにエピソードはありますか?
「2013年には納得が行く品質に至らなかった為、ご予約いただいたお客様にはお詫びをし、販売を控えさせていただいたことがありました」
――味への強いこだわりを感じます。最後にヒゲタさんが玄蕃蔵のように昔ながらの製法をできるだけ守って作られる意義はどのようなものだとお考えですか?
「醤油は醸造物ですので、どんなに科学技術が進歩しても味づくりに人の力は欠かせないものと考えております。そのためにも昔ながらの製法を守り、次世代に伝承していくことは大切な使命であり、創業400年の当社の財産であると考えます」
蔵出し式は「重陽の節句」の9月9日 7月7日の「七夕」には「秘伝極めの式」
美味しさの秘密とその製法についてお話を聞いているうちに、実際に味を確かめてみたくなり、私も玄蕃藏を予約してみました。400年の時を超え、祈りの込められた「うまみ」とはどういうものか?!と、今から興味津々です。江戸の醤油づくりへのこだわりと、忘れかけていた暦の節目の意味に思いを馳せながら、玄蕃藏の到着を待ちたいと思います!
ちなみに7月7日は五節句のうち、七夕の節句です。七夕は「玄蕃藏」にとっても非常に大切な「秘伝極めの式」の日です。先ほどのインタビューで秘伝だった米麹を作り、これをほぐして玄蕃藏諸味(もろみ)に加え、攪拌します。このとき玄蕃藏諸味では米麹から当分が溶け出し熟成が進んでいきます。
この「秘伝極めの式」を経て、玄蕃藏は蔵出し式が重陽の節句である9月9日に行われ、料理の神様として知られる千葉県南房総市の「高倍(たかべ)神社」へ奉納後、全国へ出荷されます。7月末まで予約受付中なので、食欲の秋のごちそうを盛り上げる一品として、皆さんも今から準備してみてはいかがでしょうか。
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