国宝の金印がある由緒ある島
玄界灘と博多湾の境目に浮かぶ志賀島(しかのしま)は、後漢の光武帝から贈られた「漢委奴国王」と刻まれた国宝の金印が発見されたことで知られる島だ。
島といっても地続きで、バスや鉄路など公共の交通機関の便もいい。発見場所の金印公園では、金印をかたどった金印碑を見ることもできる。
歴史ロマンだけでなく、ぐるりと海に囲まれた立地で、マリンスポーツや海水浴、サイクリング、ドライブなど福岡市民をはじめ、観光客のレジャースポットになっている。
また、志賀島に隣接する海の中道には、水族館やレジャー施設が揃った海浜公園もあり、多くの市民で1年を通して賑わう。
志賀島に行ったら、並んででも食べたいサザエ丼
一方で、魚介に恵まれた漁村の風情も色濃い。特に、サザエやワカメの美味しさで知られている。中でも、志賀島の名物グルメで、観光客の多くが目当てにしているのが、地元『中西食堂』のサザエ丼だ。
店構えは変哲もない庶民的な食堂だが、休日ともなれば行列必至の有名店。「サザエ丼」(800円)は、並んででも食べたい名物どんぶりというわけだ。
『中西食堂』は、現在の店主の母である中西雪子さんが1969年に創業。開店時のメニューにサザエ丼はなく、カツ丼、親子丼、ちゃんぽんなどごく普通の食堂メニューが並んでいただけだったが、その味の良さで人気があった。
今も昔も志賀島を代表する海産物のサザエは、開店当時漁獲量が多く、現在の比ではなかったらしい。当時は大勢いた海女さんが、獲れたサザエを売りに来ていたほどだ。でも、食堂で出せるメニューといえば、つぼ焼きくらい。
もっと、サザエを生かしたメニューを作りたいということで、試行錯誤の末、35年ほど前に生まれたのがサザエ丼だった。丼には、サザエのほか、玉ネギや卵、エビ、同じく志賀島名物のワカメもたっぷり入る。サザエは切り身だけでなく、肝も入って見た目にも楽しい。
食べると、ちょっと甘めの懐かしい味がやさしい。老若男女に愛される味わいだ。「また食べたくなる」と、多くの客を引きつけ、店の名物丼になっていった。