お笑いコンビ「ティモンディ」前田裕太さんの、「目指せ、理想の大人」をメインテーマに掲げた連載コラム。30代を目前にした前田さんが「大人」を目指して過ごす日々を、食・趣味・仕事など様々な視点で綴ってくださいます。連載は、第1・3木曜日に更新です。「(理想の)大人ってなんだろう?」を一緒に考えながら、前田さんの成長を見守りましょう! 今回は、「食編」の4回目です。ジャガイモは、間違いなく野菜。でも不思議なことに、フライドポテトなどに加工されたとたん、野菜とは認識されなくなってしまいますよね。前田さんが、そんなジャガイモや最近飼い始めた猫を通して、「周りからの評価」について考えたお話です。
画像ギャラリーティモンディとジャガイモの共通点
「アメリカ人はフライドポテトも野菜だって言って食べるらしいよ」
そんなことを耳にした。
その時の周りの友人は、いやいや、フライドポテトは野菜じゃないでしょう。という反応だったけれど、ハッとさせられた。
ジャガイモは紛れもない野菜としてジャンル分けされて生まれてきたというのに、我々の手元に加工されて届く頃には、ジャンクフードと化してみんなからはベジタブルとは呼べないものだという認識になってしまう。
これは、まさしく我々ティモンディではないか。
芸人として生まれて舞台に出て育ってきたというのに、相方の運動能力やキャラクターが先行しすぎて、それをテレビで加工されて視聴者の手元に届いた結果、ティモンディは芸人だという認識がない人が多い。
野球好きな子供達とロケで話す機会があったのだけれど、
「好きな野球選手は誰?」と聞くと相方の名前を挙げてくれたのに、
「では、好きな芸人は?」と続けて聞くと、ザキヤマさんと即答していた。
相方は、単なる野球選手としてリスペクトを集めているようだ。
フライドポテトそのものじゃねぇか。
周囲の評価に迎合しない、根菜芸人の意地
かつては、新宿の小さいライブ会場でお客さん1人に向かって(しかもそれは私の友達)8人ぐらいの芸人が2時間近くトークをするような痩せこけた土地で育ってきたとはいえ、紛れもなく野菜であるのにも関わらず、今となっては野菜とはジャンル分けされない食べ物になってしまっている。
ハンバーガーのサイドメニューとされることは別にいいけれど、みんなから「何馬鹿なこと言ってるんだよ、あれは野菜な訳ない」だなんて言われたくない。
マッシュポテトもフライドポテトも野菜でしょう。
え、違う?
私は、自分に野菜としての自覚があるし、野菜として認識してもらうべく頑張りたいと思っている。
ふざけんな!俺は野菜だ!いや、芸人だ!今に見てろ!なんて熱を上げていたら、ある日先輩から「メニューに載せてもらってるだけでありがたいと思わなあかんよ」と言われた。
そんな先輩は、誰が見ても間違いなく野菜だった。
青々しい葉野菜。
緑黄色野菜に、この根菜の気持ちが分かる訳ねぇだろ!と思ったけれど、こう見えて今年30歳になるので、思ったことを全て口にするのではなくグッと堪えた。
昔だったら、包み隠さずにガンガン喋っていたけれど、少しは大人になれたのかもしれない。
ただ、本当の大人であれば、周囲の評価に寛容になって、野菜と思われなくても別にいい、と思える日が来るのかもしれない。
飼い猫と過ごす時間が心地良い理由
最近になって雌猫を飼い始めた。
法律上では物に分類される彼女は、今では我が根城の覇権を握り、家主を部屋の隅に追いやっている。
そんな我が物顔で起臥寝食の地を占拠してくる彼女と一緒に時間を過ごしていて何故か心地良いと思う。
その理由はきっと、彼女は私のことをジャガイモだとも根菜だともなんなら野菜だとも思っていなくて、フラットな目で接してくれるからだろう。
いや、単に餌をくれる生き物としか思っていないかもしれないけれど、私にとっては、それくらいラフに接してくれる人の方が楽で良い。
心健やかでいるためには、他人にどう思われても許容できる精神を持たないといけないけれど、今の私は、とりあえず猫を精神的に頼りたいと思う。
前田裕太(まえだ ゆうた)
1992年8月25日生まれ、神奈川県出身。愛媛県の名門、済美高校野球部の同期である高岸宏行とのお笑いコンビ「ティモンディ」のツッコミ担当。趣味はサッカー観戦、読書。テレビ番組で披露した絵の実力も話題になるなどマルチな活動で注目を浴びている。コンビの野球経験をいかしたYouTubeチャンネル『ティモンディベースボールTV』は登録者数25万人超え。