「Guilty」 山下達郎がプロデュース
2曲目はソロ・セカンド作として1988年4月にリリースされた『Radio Days』の「Guilty」。このアルバムでは山下達郎が3曲、プロデュースしている。
山下達郎は当時35歳。マーティンがシャネルズとしてプロになる以前から支え続けたひとりだ。マーティンは3歳年下の弟という感じなのだろう。同じドゥー・ワップ愛好者でもある。「Guilty」の作詞は竹内まりや。今でも色褪せないバラッドの隠れた名曲と思う。
「幸せな結末」 大滝詠一への愛も込められた名デュエット
3曲目は現在の新作である『DISCOVER JAPAN DX』に収められている松たか子とのデュエット曲「幸せな結末」。大滝詠一のヒット曲だ。
マーティンはデュエットの達人で鈴木聖美、菊池桃子、島谷ひとみ、鈴木愛理、伊原六花などと組んでヒット曲を残している。マーティンは偉大なソウル・シンガー、マーヴィン・ゲイを敬愛している。マーヴィンは1967年のライヴ・ステージでプライベート面でも最愛の女性だったタミー・テレルとデュエットしていた。そのステージ上でタミー・テレルは倒れ、マーヴィンの腕にもたれかかった。病院で脳腫瘍と診断され、その3年後、24歳でこの世を去った。
そのショックでマーヴィン・ゲイはステージからもレコーディングからも長い期間遠ざかった。マーティンがデュエットする時、相手はきっとタミー・テレルのように最愛の人と思い歌っているのだといつも思う。「幸せな結末」は彼の最初期を認め、かつてラッツ&スターの名作『SOUL VACATION』をプロデュースした大滝詠一への愛も込められた名デュエットだ。
日本の武士道のように義理堅く、本物のソウル・ブラザーのように愛を歌う男。それが鈴木雅之だ。
岩田由記夫
1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo(グッドストックトーキョー)」で、貴重なアナログ・レコードをLINN(リン)の約400万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。