『ムーダンジアン』@八丁堀 名店出身の店主が作る季節感いっぱいのオリジナル料理に舌鼓 初鰹にホタルイカ、菜の花にセリと、手書きの黒板メニューには、日本料理と見まごうほどに春らしい食材を駆使した料理が並んでいた。例えば「カ…
画像ギャラリー“町中華”と呼ばれるようになってからますます親しみが込もってきた、みんな大好き中華食堂。さらに最近ではどんどん進化(深化)しちゃいまして、アレとコレのミックスもアリなんだ、高級中華レベルなのにこんなに手頃なの!?本国より先行ってるんじゃないの~! な店、続出。そんなうれしい悲鳴を上げに、今宵ゆるりと出かけませんか?
『香記豚記(ホンキートンキー)』@新中野
扉を開ければそこは香港の屋台 異国情緒に酔いしれる
今日は旅行気分で楽しく中華を食べたい! そんな気分にぴったりな、カジュアルかつ本場の空気感あふれる店が続々と登場している。香港のストリートフードを集めた『香記豚記』はその代表格だ。
青菜やシュウマイが素朴な食器で出てくるさまは、まるで現地の屋台。部屋着風の客までいるが、まったく違和感がない。それはきっと、低めの丸椅子やテーブルが、現地のラフな風景を忠実に再現しているから。
しかし中華だからと紹興酒にこだわる必要もない。たとえば、チャーシューにはバーボンをどうぞ。豚の脂の旨みとバーボンの甘い香りが口内で調和して、思わず「こんな美味しさあったんだ……」とため息が漏れる。ほろ酔いになった頃には、ここが日本であることを一瞬忘れてしまうのである。
[住所]東京都中野区本町6-21-16 カーサ新中野1階
[電話]03-5340-7359
[営業時間]11時半~14時半(14時LO)、17時半~23時(22時LO)
[休日]月・火
[交通]地下鉄丸ノ内線新中野駅1番出口から徒歩5分
『旬菜china 口水(コウスイ)』@神田
すーっと上品に口の中から消えていく 美しい味に心奪われる
ギャップが大きいほど惹きつけられるのは人も店も同じだ。
店内はカジュアルな雰囲気で、前菜や揚げ物は600 ~ 800円といった居酒屋価格。すっかり気を抜いて座っていたが、厨房から運ばれてきた見目麗しい「特製よだれ鶏」に一瞬で目が覚めた。
ふっくらとしたツヤツヤの骨付き鶏モモ肉は、食べる前から柔らかくてジューシーだとわかる。ラー油を混ぜた真っ赤なタレは辛すぎない上品な味。黒酢やスパイスの風味が食欲をそそり、二度漬け(いや、三度でも四度でも)したくなる。嗚呼!
シェフの鄭(てい)晃さんは横浜中華街で生まれ育ち、『ホテルオークラ』に26年勤めた経歴の持ち主。本格中華の技と味はそのままに、価格だけぐっと親しみやすくしてくれているのがありがたい。この店の登場に、心から感謝したい!
[住所]東京都千代田区神田紺屋町6-3
[電話]03-6674-9959
[営業時間]17時~22時(21時半LO)
[休日]日・祝
[交通]JR山手線ほか神田駅東口から徒歩4分※昼(11時半~14時半)は、担々麺と醤油ラーメンの2種のみで営業
『中華 汀』@江戸川橋
若き店主が始めた実力派のネオ町中華 日常のごちそうが勢揃い
町中華といえば、いつでも気軽に行けて、地域の人々の胃袋の支えになってくれる、ありがたい存在。四川の名店「神楽坂芝蘭」で料理長も務めた、若き店主・江崎さんが目指すのも、まさにそれだ。
麻婆豆腐や成都担々麺といった伝統的な四川の味はそのままに、焼餃子や焼売、チャーハンなどの日常の料理も大事にする。しかも夜でも麺類だけ、はたまたメインにご飯を付けて定食でという楽しみ方もあり。
一方、飲んべえに向けては、紹興酒や白酒に加えて、中国各地の地酒・黄酒なんて変化球も。晩メシも、飲みたい気分もかなえてくれる懐の深さも町中華のスタンスだ。
店名は水のほとり、波打ちぎわといった意味。転じて心おだやかになれる場所という想いも込めて、たくさんの料理を作って待っていてくれる。
[住所]東京都新宿区山吹町128 米川ビル1階
[電話]070-8373-4767
[営業時間]11時半~13時半LO、17時45分~20時LO
[休日]日(他に不定休あり)
[交通]地下鉄有楽町線江戸川橋駅1b出口から徒歩6分
『喜記(ヘイゲイ)』@銀座
本場香港で広東料理を学んだシェフが腕を振るう
聞けばこの店、ひとりで来店し点心のコースを注文したり、紹興酒を飲みながら前菜をつまんだりするツウな客が多いらしい。酒好きにとっては頼もしい情報だ。
料理長・山﨑浩一さんが心がけているのは「塩や調味料を控えめにして、余計な味付けをしないこと」。だが、どの料理も味わいの輪郭がしっかりとしていて、食べ応えがある。香港で修業を積んだ山﨑さんが熟練の技を使い、素材本来の味を最大限に引き出しているからだ。
たとえばアワビの乗ったパイは、少しずつかじってチョビチョビと酒をすすりたくなるほど、旨みが凝縮。
自分へのご褒美にきれいな中華料理を食べに行きたい。そんな日にピッタリの一軒だ。
[住所]東京都中央区銀座5-7-10 EXITMELSA7階
[電話]050-3173-1505
[営業時間]11時半~15時(14時半LO)、17時半~21時(20時半LO)、土・日・祝は11時半~21時(20時半LO)
[休日]無休(*施設に準ずる)
[交通]地下鉄銀座線ほか銀座駅A2出口から徒歩2分、JR山手線ほか有楽町駅銀座口から徒歩7分
『宝味八萬』@代々木八幡
透き通った皮、吸い付くような質感の点心が美しい
『羊香味坊(ヤンシャンアジボウ)』など中国東北地方の料理の店を複数展開する「味坊集団」が、「自然派ワインと点心を楽しむ」をコンセプトに昨年9月にオープン。
その空間は、店内に流れる中国語のラジオ、敢えて中国語のみで書いたメニューなど、現地の雰囲気を忠実に再現。日本語で解説する代わりに料理写真が壁一面にずらりと並んでいるのだが、それがまた海外のフードコートのようなのだ。
蒸し餃子や腸粉(チョウフン)は肌に吸い付くようなもっちりとした食感が特徴的で、焼餃子や水餃子に慣れた日本人には新鮮に感じられる。旅の3日目くらいに、自分が旅行者であることを忘れて、雑踏に溶け込みながら町中で飲むような、妙に安心感のある店なのだ。
[住所]東京都渋谷区富ケ谷1-53-4
[電話]03-5761-6066
[営業時間]11時半~15時(14時半LO)、17時~23時(22時LO)
[休日]無休
[交通]小田急線代々木八幡駅南口、地下鉄千代田線代々木公園駅1番出口からともに徒歩1分
『食彩雲南 湯島店』@湯島
にぎやかに食卓を囲む雲南の名物料理に胃袋も舌も踊り出す
家族や仲間と同じ料理を分かち合う、それも中華の醍醐味。雲南料理を得意とするこちらもそんな楽しさのある1軒だ。
まず不思議な型の鍋でやって来るのが薬膳スープ。“汽鍋”と呼ばれる名物料理で、鶏肉と漢方を5時間かけて蒸し上げた滋味が胃に沁み渡る。
さらに具だくさんの酸味煮込みや、山椒を利かせたジャガイモのガレットなどなど、卓をにぎやかに埋め尽くさずにはいられなくなるけれど、少しだけお腹を空けておいてほしい。現地を代表する米麺料理も控えているのだ。使うのは乾麺ではなく、手間暇かけて国産米の粉から作った自家製生麺。えも言われぬツルモチ具合に、歯も舌も、口中が快感で満たされる。
[住所]東京都台東区池之端1-1-1 MK池之端ビル2階
[電話]03-3836-1898
[営業時間]11時半~14時半LO、17時~23時(22時15分LO)
[休日]無休
[交通]地下鉄千代田線湯島駅1番出口から徒歩1分
『チーフォ 台湾屋台縁食区』@学芸大学
楽しい、美味しい台湾ローカルフードに食いしん坊がやって来る
まるで台湾の夜市に遊びに来たかのような楽しさだ。調理場と一体となったカウンターに座れば、知らぬ者同士でもワイワイ食卓を囲んでいるかのような、そんな気分。
料理は店長の菊田さんが現地を旅して学んだローカルフードがメイン。「台湾式ごった煮」と名付けたのは、薬膳スパイスの香り立つスープで、野菜やキノコ、インスタント麺なんかも入れてさっと煮た、屋台料理の“滷味(ルーウェイ)”で、ちょっと濃いめの味付けが、台湾地ビールや自然派ワインで揃えた酒のつまみに打ってつけ。
「本場の味を超えるのがモットー」との意気込みあふれる料理に、夜な夜なチーフォ(食いしん坊)な人々が集まってくる。
[住所]東京都目黒区鷹番2-21-14 学大横丁1階
[電話]070-8549-7210
[営業時間]12時~14時半LO(土・日・祝のみ)、18時~23時(22時LO)
[休日]月、隔週火
[交通]東急東横線学芸大学駅西口から徒歩1分
『ムーダンジアン』@八丁堀
名店出身の店主が作る季節感いっぱいのオリジナル料理に舌鼓
初鰹にホタルイカ、菜の花にセリと、手書きの黒板メニューには、日本料理と見まごうほどに春らしい食材を駆使した料理が並んでいた。例えば「カツオの刺身 ふきのとうみそ付き」なんて、字面だけ見れば完全に和食だろう。しかし、そこに利かせた黒酢や腐乳の風味によって、口の中ではれっきとした中華になるのも楽しい驚きだ。
さらに、低温でしっとり仕上げたチャーシューや、皮パリパリの油淋鶏といった定番ものも、品良くどこかオツな味。店主は名店『赤坂璃宮』の出身と聞き、そんな旨さの理由も腑に落ちた。
加えてどの皿も小ポーションってものありがたい。ひとりでふらっと訪れるなら、こんな店が一番だ。
[住所]東京都中央区入船1-5-1
[電話]03-6280-3575
[営業時間]17時半~翌1時
[休日]月(祝は営業)、第1・3火
[交通]地下鉄日比谷線八丁堀駅A2出口から徒歩3分
『REI』@代々木上原
町中華をモダンに解釈。上質に仕上げられた料理をアラカルトで満喫
代々木上原の街並みになじむモダンで明るい店内。一見するとカフェやビストロのようだが、実はこちら2020年8月にオープンした本格中華料理店である。
店のコンセプトを伺えば、「親しみやすいメニューを上質に仕立てた、町中華の進化版でしょうか」と店主の高島さん。メニューを見ると、「エビチリ」や「チンジャオロース」といったド定番なメニューが並んでいるが、たとえば「チンジャオロース」には希少部位のカイノミが使われるなど、すべての料理が食材や調理法を含めブラッシュアップされている。
前菜や点心も豊富なうえ、サービスも臨機応変。立派な「町中華」になる要素が詰まった、代々木上原の良心的中華なのだ。
[住所]東京都渋谷区元代々木町10-8 関ビル1階
[電話]03-6416-8803
[営業時間]11時半~14時半(14時LO)、18時~22時(21時LO)
[休日]日
[交通]小田急線代々木上原駅東口から徒歩5分
『日々の中華食堂』@代々木上原
友人の家に招かれたような空間で、絶品のクリスピーチキンを!
個性的な新店が登場する代々木上原エリアに、2021年7月にオープンしたのがこちら。「友人の家に招かれたような親しみやすい空間で、名物のクリスピーチキンをワイワイ言いながら楽しんでいただけたら」と店長の高橋さん。
メニューを見ると、「焼餃子」のような定番的なものから、「高野豆腐の上海煮物」のようなセンスが光るものまで幅広く、今夜は何を食べようかと悩ましくなるほど。
初めてなら「中華小鉢盛り合わせ」で始めるのがいい。香り高くセンスあふれる小鉢の数々はクリスピーチキンへの最高の序章になるはず。「3~4人で来ていただくのがベストかもしれません」と鈴木シェフ。“日々通いたくなる中華食堂”だ。
[住所]東京都渋谷区上原1-33-11 TOPCORT4 1階
[電話]03-5790-9655
[営業時間]11時~15時(14時半LO)、17時~23時(フード22時LO、ドリンク22時半LO)
[休日]不定休
[交通]小田急線代々木上原駅南口から徒歩30秒
撮影/西崎進也(香記豚記・口水・喜記・宝味八萬)、竹崎恵子(汀・ムーダンジアン)、鵜澤昭彦(食彩雲南・チーフォ)、貝塚隆(REI・日々の中華食堂)
取材/吉田彩乃(香記豚記・口水・喜記・宝味八萬)菜々山いく子(汀・食彩雲南・チーフォ・ムーダンジアン)、編集部(REI・日々の中華食堂)
※2022年5月号発売時点の情報です。
※全国での新型コロナウイルスの感染拡大等により、営業時間やメニュー等に変更が生じる可能性があるため、訪問の際は、事前に各お店に最新情報をご確認くださいますようお願いいたします。また、各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いいたします。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
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