吟味された素材がひとつにまとまった極上品 まず肝心な餅。もち米は新潟産(メインは魚沼産)の「こがねもち」を季節や気温により、蒸し布の絞り方などで水分量を変えて蒸らす。柔らかさを左右する水分量はかなり繊細に調整した後、電動…
画像ギャラリー2021年11月に開店した代々木八幡の『あいと電氣餅店』。看板商品の「生大福」は完全予約制で「賞味期限5時間」がキャッチフレーズ。5時間? いぶかしながらも予約当日、引き取り後1時間以内にいただいたところ……んっ、餅がとろける!? 飲めるほど柔らかい。
しかも、「福島県南相馬市で大正5年から作られ続けてきた、伝統ある大福」だという。なぜ、おしゃれなスイーツの激戦区に福島県から進出したのか? 話題の生大福の味わいとバックグラウンドに迫る!
美味しさの余韻が長く続き、心が満足する生大福
ひとつ手にとった瞬間、指先から伝わった感触は「柔らかい」。ここまで柔らかさを感じる餅の大福は、手作りを標榜する店でも滅多に出合えない。
食べる前から期待させられ、口に入れて驚いた。餅が伸びない。その代わりとろける。のどを通過する時は、もはや溶けているといっても過言ではなく、飲めそうなほど柔らかいのだ。
遠くにお米(もち米)の味も感じる。手作り・無添加や保存料不使用だからこそ叶う味なのだが、他にも同じように作る和菓子店はある。しかし、ここまで素材の味、お米を感じる大福を見つけるのは難しそうだ。
包まれているこしあんは、しっとり滑らか。甘さが上品でしつこくない。とろける餅とこしあんが渾然一体となり、1個完食まであっという間だ。とりわけ餅とこしあんのハーモニーを堪能できる、最後のひと口が良い。
実食してわかった。大福ではなく「生大福」であり、この柔らかさを味わうにはキャッチフレーズの「賞味期限5時間」は大げさではないということ。
ところで、生大福の生まれは福島県南相馬市だそうだ。代々木八幡で販売されるに至るまでは、どんなストーリーがあったのだろう?
閉業に瀕した地元の味を継承すべく、未経験者が和菓子界へ
店主の鈴木瞳さんは、エンタメ系の職業を経て2021年11月に『あいと電氣餅店』を開店させた。きっかけは、鈴木さんの地元である福島県南相馬市に帰省した時、老舗和菓子店『宍戸電氣餅屋』で買った「電氣餅」の味に感銘を受けたことだ。
大正5年に創業した『宍戸電氣餅屋』は、当時珍しかった電動餅つき機を導入。そして、添加物がない時代からの製法を受け継いで作られるもち米100%の「電氣餅」は、午前中には売り切れるほどの人気だったそうだ。ところが、東日本大震災の影響もあり、三代目当主は自分の代で閉業を決めていた。
この味を絶やしたくない、継承したい、もっと広めたいと熱望した鈴木さん。弟子入りは最初断られるも、熱意が通じ、福島と東京の往復生活での修業が始まった。素人だった鈴木さんが修行を始めてわずか1年半で開店に至る技術を身につけたのは、「師匠の教え方がうまかったんです」のひと言に尽きるという。
さらに、鈴木さんは「大福しか作れない」とキッパリ。ひとつの商品に情熱を傾け、生大福を作っているのだ。だから、使うのはもちろん吟味された素材のみ。
吟味された素材がひとつにまとまった極上品
まず肝心な餅。もち米は新潟産(メインは魚沼産)の「こがねもち」を季節や気温により、蒸し布の絞り方などで水分量を変えて蒸らす。柔らかさを左右する水分量はかなり繊細に調整した後、電動餅つき機でついていく。
第二の主役であるこしあんに使う小豆は、北海道産のエリモショウズ。企業秘密という数種類をブレンドした砂糖と、山口県油谷湾の汽水域の海水で、昔ながらの窯焚き製法で作られる『umi to mori』の塩を加えている。
こしあんは一般的な和菓子と比べてかなりあっさりしている。使われている塩の分量の問題か? と思いきや、かなり糖度が低いらしい。甘さに罪悪感がなかったのも納得だ。
この「生大福」を買うには、ネット予約が必須。毎週月曜日10時からサイトで予約すると同時に引き取りの日時指定をするシステムだ。5個入り2200円、10個入4000円、20個入7000円から選ぶことができる。
そして、予約した人だけのお楽しみが、「いちご生大福」(520円)。引き取り時に店頭に並んでいれば、ぜひ一緒に買いたい逸品だ。
生大福より薄い餅とこしあんの層に包まれた、大粒のいちご。栃木の契約農家から直送される前日まで畑になっていた果肉はフレッシュで、ジューシー。「いちごそのものを食べている!」ような印象で、フルーツ大福の概念を覆す。これに限っては、餅もこしあんもいちごの引き立て役だ。
都内に和菓子店は数多くあるが、パッケージの特別感と味わいが相まって年齢や性別を問わず贈って喜ばれるのは間違いなし。『あいと電氣餅店』の生大福は、おもたせリストに入れたい味わいである。
■あいと電氣餅店
[住所]東京都渋谷区元代々木町54-1
[電話番号]03-5738-7849
[営業時間]11時~15時
[休日]月・火
[交通]地下鉄千代田線代々木公園駅より徒歩7分
[予約方法]毎週月曜日10時に次回予約分の受付開始。サイトまたはLINE公式アカウントから予約(LINEのQRコードはサイト内に表示)
[URL]https://www.denkimochi.com/
取材・撮影/Naviee 撮影協力/THE REVIVAL HOUSE and Yuki
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