さぁ近藤勇ゆかりの地を回り終え、今度は土方歳三に会うべくJR中央線の日野駅(東京都日野市)にやって来た。 新選組のふるさと日野 この駅、通過したことは何度もあるけど降りるのは初めてじゃないかなぁ。駅のホームには早速、歳三…
画像ギャラリーさぁ近藤勇ゆかりの地を回り終え、今度は土方歳三に会うべくJR中央線の日野駅(東京都日野市)にやって来た。
新選組のふるさと日野
この駅、通過したことは何度もあるけど降りるのは初めてじゃないかなぁ。駅のホームには早速、歳三の写真と共に「新選組のふるさと日野」と書かれたディスプレイが。つくづく、地元の誇りなんだなぁと思い知る。
バス乗り場は駅西側のロータリーにあるらしい。ここから京王バス「高32」系統に乗れば「土方歳三資料館」の目の前に着くことができる。事前に調べてあった。
ところが、「あぁここだ」バス乗り場に辿り着き、時刻表を見て、愕然!! 何と土曜の10時30分に一本しか出ていない、超レアもの路線だったのだ。同じバス停の「分53」系統は平日の7時37分に一本だ。「資料館」の開館日に合わせてやって来たから、今日は日曜日。つまり一日中、一本も運行はされていない。その前に既に午前11時過ぎ、つまり平日か土曜だったとしても“終バス”はとうに終わってしまっている。
さぁ、弱った。どうするか? バスが走ってないんなら、しゃぁない。立川駅までJRで戻って、多摩モノレールに乗り換えるか。「バスグルメ」というタイトルにはそぐわないけど、行けないのでは話にならない。
いやいや、待て待て。あくまで「資料館最寄り」にこだわれば「高32」「分53」かも知れないけど、ちょっと歩けば着くところを通るバス路線なら、あるんじゃないの!?
そしたら目の前に、日野市が運行しているコミュニティバス「ミニバス」の停留所があった。そうして見てみたら、「市内路線」が多摩モノレールの「万願寺駅」まで行くことが分かったのだ。万願寺駅なら「資料館」から歩いてすぐ。ほらほらちゃぁんといい路線があったじゃないの。
考えてみれば今回の「武蔵野編」、第1回の「武蔵国分寺跡」に第3回の「玉川上水羽村堰」と、2回もコミュニティバスのお世話になっている。これで3回目というわけだ。やはり地元民の足。細かいニーズに対応してくれる存在なんですねぇ。やれ、ありがたや。
日野市のミニバスに乗車
てなわけで「日野市ミニバス」に乗り込み、目的地を目指します。
日野駅前のメイン通りを走り出したと思ったら、やはりぐねぐね曲がり始めましたねぇ。中央高速(中央自動車道)の高架下に沿って走ってたら、何てことないとこでパッと急カーブを切って離れたり。コミュニティバスはこうでなきゃいけません(笑)。ただその後、多摩モノレールの高架下に出たら、ずっとその下を走り続けました。「万願寺駅」バス停で無事、下車。
時計を見てみるとまだ12時前。「資料館」は開いてません。なので先に、お墓の方に行くことにします。
ところがスマホの地図を頼りに行こうとするんだけど、住宅街のど真ん中にあるお寺らしく、道も曲がりくねっててなかなか方向感覚がつかめない。
あぁ、ここが目印にしていた公園だ。そんならこの道を、あっちの方に行けば多分いい筈だぞ。やっと位置関係が把握でき、余裕を持って歩き出します。
そしたら目の前に「石田寺(土方歳三の墓)」と書かれた道標がありました。道順が分かったらこれ、なんだものなぁ。
それより面白かったのが、すぐ近くに「土方」の名前を冠したアパートがあったこと。そりゃこんなとこに立地するんだもの。ファンじゃなくたってその名をつけたくもなりますよ、と勝手に納得。
ところが歩いてる内に気がつきました。そこにも、あそこにも「土方」の表札の家がある。何だこの辺、歳三の縁戚(?)だらけなんだ。だったらさっきのアパートも、単なるオーナーの苗字だったのかも知れませんね。
土方歳三のお墓がある「石田寺」
そうこうする内に無事に「石田寺(せきでんじ)」に到着。こちらも立派な本堂でした。近藤勇の時と同じくまずは手を合わせ、それからお墓を探します。ところが―――。
ない。分からない。そこら中「土方家」のお墓ばかりなんです(爆笑)。見た感じ、墓地にあるお墓の半分以上はそうみたい。でも目的の「歳三さん」のお墓は、どれなの!?
結局、山門を入ってすぐ右手にありました。本堂の方にさっさと行ってしまったため、かえって分かりにくくなっちゃったんですね。
前編でも述べた通り、土方歳三は箱館五稜郭の闘いで命を落とした。近藤勇が捕まった後も官軍と戦い続けたわけですね。だから遺骨はここに収められているわけではない。供養のための、いわゆる「引き墓」です。
でもまぁいいじゃないですか。やっぱり生家に近いこの地で、英雄の御霊に手を合わすのはとても意義深いものがありますよ。
それに気がつくのは、この境内のすぐ裏手には多摩川が流れてて、支流の浅川(あさかわ)と合流する水の要衝、ということ。近藤勇の墓も野川(のがわ)のすぐ近くにありましたからね。
考えてみれば彼らは、普段は農業が生業だったのだから、水の便のよいところを本拠地にしたのは理の当然。ただやはり、新選組の2人とも今は川のほとりで静かに眠ってる、と思うと感慨深いものがありますよ。
行列ができていた“生家跡” 土方歳三資料館
さぁさすがにもう12時も過ぎた。いよいよ土方歳三の生家跡である「資料館」に行ってみましょう。
そしたら万願寺駅前の交差点に出、「土方歳三資料館」の案内板が見えて来たところでその先に、スゴいもの発見!! 「ラーメン魁力屋(かいりきや)」の看板。全国展開してるチェーン店ではあるんだけど、ここ、京都北白川(きたしらかわ)で創業したラーメン店なんですよ。
京都。そう、新選組が徳川幕府を守るべく、倒幕派を取り締まって大暴れしたのが京都じゃぁないですか。その地元ラーメンの支店が、何と土方歳三の生家跡の近くにある! これ、偶然? いやいや魁力屋さん、絶対、意識して出店されたでしょう!?
もうこれで、食べる店は定まった。今日はここに行かずして、どこで食べるというんです!?
てなわけで、改めて「資料館」に行ってみる。ところが何と、入口は延々長蛇の列。まぁ前述の通り開館日も、開館時間も限られてますからね。おまけに歳三愛用の刀も展示されてるという。おまけにおまけに11月末で、いったん休館されてしまうとも。そりゃファンからすれば、押し掛けたくもなりますわな。
京都北白川で創業、「魁力屋」の特製醤油ラーメン
でもこれじゃ、入れない。
仕方ないのでラーメンを先に食べることにします。ところがこっちも長蛇の列。「創業17周年」のキャンペーンやってて、それでなくても人気店のところ、こちらもファンがどっと押し掛けて来たんでしょう。
あんまり列が長いんで、ちょっと浅川の方まで歩いて橋の上から川面を眺めたりなんかして、時間を潰しました。もういいかな、と見当をつけて戻ったんだけど、それでも30分くらい待たされました。まぁ、しゃぁない。
そうしてようやく、お目見えの叶った特製醤油ラーメンが、これですよ!
おおぅ!! 「京都北白川」と言えば昭和23年創業の老舗「ますたに」が有名だが、まさにその流れを汲むラーメン。あの「天下一品」総本店も、「白川通」沿いにあるんだけど、あの辺りってラーメンの名店を生む何か土壌でもあるのかしらん?
鶏ガラ中心の濃厚スープに、豚の背脂が浮かぶ。見るからに脂っこそうなのに、でも食べてみると意外とあっさりなんですよ。こんなに脂が浮いてるのになぁ、不思議。
この特製醤油スープが独特の細麺に絡む、絡む。また入れ放題の九条ネギが合う、合う。チャーシューも何枚も入ってて、少食の私にはヘビーかなとも思ったんだけど、あっさり味なこともあってスーッと入っちゃいました。
土方歳三生誕の地で、彼が活躍した京都のラーメンを味わう。いやぁ〜、縁ってのは本当にどこでどうつながるか分からないものですよねぇ。運命の邂逅を感じる味でした。並んだ甲斐があった!
胸像のある高幡不動へ
満腹になって、「資料館」に戻ってみたんだけど、まだまだ長い列が延びてるままでした。もう3時半。これから並んでも、4時までの開館時間に間に合わないでしょうに。
元々、ここに来るために日程も時間割も組んだのに、なぁ。コースだって……
ただ、まぁ、このまま帰ってしまうというのも、惜しい。
そこで、歩いて20分ほどの場所にある高幡不動尊「金剛寺」(日野市高幡)に行くことにしました。ここの境内には、土方歳三の銅像が立っている。近藤勇はお寺の前に胸像がありましたからね。やっぱり片っぽだけしか見てない、というのでは寂しい。
多摩モノレールで万願寺駅から高幡不動駅まではたったの1区間なので、歩いて行っちゃいました。来てみると隣には、お二方を顕彰する石碑も立ってた。あぁ、いいなぁ。死に場所も別で、お墓の場所も違うけれど、やっぱり2人は一緒でなくっちゃ、ね!!
てなわけで、新選組と武蔵野を味わい尽くした一日となりました。
今回の「武蔵野編」はこれで終わりますが、「東京路線バスグルメ」はまた新たなテーマを定めて帰って来ます。
次回は「アニメの聖地巡り編」でもやろうかな。乞うご期待!
『土方歳三資料館』の情報
[住所] 東京都日野市石田2-1-3
[電話]非公表
[営業時間] 12時〜16時(通常は毎月第1・第3日曜日の開館)
※新型コロナウイルス感染拡大の影響で、営業時間や定休日は異なる場合があります。
[入館料]大人500円、小・中学生300円
[交通]多摩モノレール万願寺駅から徒歩約5分
『ラーメン魁力屋 日野万願寺店』の店舗情報
[住所] 東京都日野市石田2-9-15
[電話]042-514-8689
[営業時間] 11時〜23時
※新型コロナウイルス感染拡大の影響で、営業時間や定休日は異なる場合があります。
[休日]年末年始
[交通] 多摩モノレール万願寺駅から徒歩約7分
西村健
にしむら・けん。1965年、福岡県福岡市生まれ。6歳から同県大牟田市で育つ。東京大学工学部卒。労働省(現・厚生労働省)に勤務後、フリーライターに。96年に『ビンゴ』で作家デビュー。2021年で作家生活25周年を迎えた。05年『劫火』、10年『残火』で日本冒険小説協会大賞。11年、地元の炭鉱の町・大牟田を舞台にした『地の底のヤマ』で日本冒険小説協会大賞を受賞し、12年には同作で吉川英治文学新人賞。14年には『ヤマの疾風』で大藪春彦賞に輝いた。他の著書に『光陰の刃』『バスを待つ男』『バスへ誘う男』『目撃』、雑誌記者として奔走した自身の経験が生んだ渾身の力作長編『激震』(講談社)など。
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