噺家が後世に語り継ぎたくなる名湯
⼤浴場では1200年前からこんこんと湧き出てきている茶緑⾊の源泉が湯船に滔々と流れ込み、源泉の⾳だけが厳かに響いていた。⻑⽅形の湯船の縁は源泉の含有物が厚く付着してその湯質を物語っている。
早速、俺たちは熱い湯に肩まで浸かり、⾝体全体でその効能を堪能してみた。⾵ちゃんは、⽕照った顔で感動のあまり突然温泉の実況中継を始めた。
「さあ温泉好きのみなさま、源泉100%のここ早⼾温泉『つるの湯』は加⽔無し、加温無しのまさに、まさしく本当に正しい温泉であります。この薬湯に浸かれば、あ〜ら不思議、体のコリというコリが瞬時にほぐれ、神仏に揉みしだかれたように筋⾁が柔らかくなってくる感じがするのでございます。窓を開けて外を⾒渡せば只⾒川の絶景が⼀望に⾒渡せるこの湯船のなんと素晴らしいことでしょう」
「あ〜っうるさいやつ! 全く他にお客さんがいなくてよかったよ! ⾵ちゃん、この温泉の効能と⾵ちゃんの感想が⼤きく違わないか?」
「親⽅ぁ〜ん!無粋なことを⾔うもんじゃありませんよ。疲労回復ってパンフに書いてあったでしょう !!! セツはこの温泉に浸かった感動をセツなりに語っている最中でありますから、多少の誇張は聞き流してくださいな。
まったく親⽅は表現の⾃由ってやつも知らないでやんすか」
「わかった、わかったから、少し静かに⼊ろうよ」
「いんや、親⽅、この感動は噺家の意地にかけて後世に語り継がれなくてはいけないのでございます」
「ずいぶん惚れ込んだね」
「まっこと素晴らしく気分の良い湯でありんす」
「本当だよな、しかも飲泉できるって書いてあったけどさぁ、どんな味かな〜……?」
「どうれセツが味⾒を!!! おおっ。この味は……..タラちり鍋タラ無しの味」(飲泉所は別にちゃんとありますからね)
「おもろいこと⾔うね、さすが噺家!! するってえと具が無い鍋の具は俺たちかい……(笑)」
「(笑)…….そうでガスな! はっはっはっ」
「ところで⾵ちゃん、早⼾温泉つるの湯のお湯とかけてなんととく」
「おぅ、のってきましたね」
「早⼾温泉つるの湯とかけまして、寄席の不埒(フラチ)なお客様と解く」
「早⼾温泉つるの湯さんとかけて、寄席のフラチ‼ なお客様と解きましたか!?」
「そのココロは⁇」
「只⾒にて⾄福の時間を過ごしました」
「お後がよろしいようで」
■「早⼾温泉つるの湯」
[住所]福島県⼤沼郡三島町⼤字早⼾字湯ノ平888
[電話番号]0241-52-3324
[泉質]ナトリウム塩化物温泉(低張性中性⾼温泉)
[泉温]53.5℃ pH7.0
[使⽤状況]かけ流し
[湧出量]192.7l/分(動⼒揚湯)
[成分総計]5718mg/kg
[効能]特に外傷、術後の回復に⼤きな効果があり。慢性⽪膚病、やけど、慢性婦⼈病、神経痛、慢性消化器病、疲労回復
[入浴時間帯]10時〜20時(最終受付は30 分前)
[料⾦]⼤⼈600円、⼩⼈400円(3時間)/夜間17時以降 ⼤⼈400円、⼩⼈200円/1⽇⼤⼈1200円、⼩⼈800円
[設備]男⼥内湯、男⼥露天⾵呂
[備品]ボディーソープ、リンスインシャンプー、ドライヤー
[施設]休憩室、有料休憩室、リラクゼーション、マッサージ機、売店、⾷事処宿泊湯治施設 全8部屋(⾃炊)
[施設料⾦]⼤⼈2名以上の利⽤の場合、1⼈1泊4990円~、⼦供3670円~
チェックイン15時、チェックアウト10時、詳しくはホームページ参照
[交通]JR)只⾒線早⼾駅を出て、国道252号線を徒歩約10分※早⼾駅までの送迎は無料(事前に要連絡)
⾞)磐越道会津坂下インターチェンジから23.5km 25 分。
[駐⾞場]30 台
[ホームページ]https://www.okuaizu-tsurunoyu.jp/
文・撮影/鵜澤昭彦