チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介。今回もひとり旅でのお話。富山ブラックとチャーハンの相性を探りました。
画像ギャラリーふと、富山へ行きたいと思った。お盆もずっと仕事をしていたし、1日くらい休んでもバチは当たらないだろう。お盆明けの日曜日、遅めの夏休みをとって富山へ向かって車を走らせた。
富山といえば、富山湾産のノドグロやブリ、白エビ、ホタルイカなどの魚介だろう。国道沿いにある回転寿司店でも十分旨い。もう頭の中は寿司のことで頭が一杯に。富山に着いたら絶対に寿司を食べようと心に決めていた。
富山県へ入ったのは、11時頃。まだ時間が早いので、岐阜と富山の県境にある道の駅「細入」で休憩をすることに。道の駅に併設の物産センターをブラブラしていたら、あるお土産物が目に飛び込んできた。
それは、富山ブラック。ガツンと濃厚な味わいの漆黒のスープで味わう、富山のご当地ラーメンである。筆者は仕事とプライベートと合わせて3、4回くらいは食べたことがある。が、濃い味が大好きな名古屋人である筆者でさえ、あまりの濃さに辟易するほど。でも、なぜかまた食べたくなるのが富山ブラックの魅力なのだ。
「元祖」と「ヤング」、2種類の醤油ラーメン
ついさっきまで寿司を食べようと思っていたのに、完全に頭の中は富山ブラック一色に。富山ブラックはライスと一緒に食べるのが地元のスタイルだが、そういえばメニューにチャーハンがある店は聞いたことがない。
スマホに「富山ブラック チャーハン」と入力してググってみたら、何軒かヒットした。そのひとつが富山市上飯野2丁目にある『ダルマヤラーメン 新庄店』である。
12時すぎに到着すると、日曜日ということもあって、駐車場はほぼ満車。隅の方に空いているスペースを見つけてすべり込んだ。駐車場の車を見ると、ほとんど富山ナンバー。地元の人が食べに来る店のようで期待できる。店内は満席だったので外で席が空くのを待つことに。
10分ほど待ったところでカウンター席に案内された。で、メニューはこれ。醤油ラーメンは、「元祖」と「ヤング」(各700円)の2種類あり、違いは味の濃さ。後者が富山ブラックのようなので、「ヤング」を注文。メニューの写真を見ると、真っ黒なスープに食べ応えのありそうなチャーシューがドーン。これ1杯で満腹になりそうだが、チャーラーの旅ゆえにチャーハンも食わねば。
メニューの裏面にはサイドメニューとドリンクが。「チャーハン」は500円で「ミニ(半)チャーハン」は400円。たった100円の差ならば、並を選びたくなるが、ラーメンの量が多そうなのでミニを選択した。
ラーメンとチャーハン、それぞれの味が口の中で大暴れ
まず、運ばれたのがラーメン。うわー、くっ、黒い! メニュー写真通りの巨大なチャーシューまでもスープが染みて黒くなっているではないか! 全国の「ブラック」の名を冠したラーメンの中でも、ここまで漆黒のスープは富山ブラックだけだろう。
ちょっと怖いけど、スープを飲んでみる。舌先を突き刺すような醤油辛さが口の中で炸裂する。後味に苦味を感じるほど味が濃い。そういえば、東京の知り合いが生まれてはじめて味噌煮込みうどんを食べたときに「苦い」と言っていたが、これと同じ感覚だったのだろうか。
麺はこのスープに負けないようにするためなのか極太の縮れ麺。しっかりとしたコシがあって旨い。店内に入って正面に製麺機が置かれていたので自家製麺なのだろう。
おっと、ここでミニ(半)チャーハンが出された。この量! 全然ミニじゃない(笑)。並を注文していたら大変なことになっていただろう。
いや、それよりも富山ブラックを食べて口の中に広がった辛みを一刻も早くチャーハンで緩和させたい。レンゲを山盛りにして思いっきり頬張った。
ん? あれっ!? かっ、辛い! チャーハンもかなり味が濃いのだ。ラーメンとチャーハン、それぞれの味が口の中で大暴れしていて、これではまったく箸休めにならない。
とてもこれは食べられない……と思った瞬間、濃い味の奥というか、互いにぶつかり合うふたつの味の向こう側にある美味しさのようなものを感じた。ひょっとすると、富山ブラックとチャーハンのセットの醍醐味はこれかもしれない。
その証拠に富山への旅から1週間経った今、また食べたいと思う自分がいる。
取材・撮影/永谷正樹
画像ギャラリー