今や一大ジャンルとなったグルメ漫画。食をテーマにした作品を描くくらいなのだから、作者もきっと食いしん坊に違いない!そこで、現在連載中の人気作の作者たちに、そのグルメっぷり!?を伺った。1人目は、『天狗の台所』を連載中の田…
画像ギャラリー今や一大ジャンルとなったグルメ漫画。食をテーマにした作品を描くくらいなのだから、作者もきっと食いしん坊に違いない!そこで、現在連載中の人気作の作者たちに、そのグルメっぷり!?を伺った。1人目は、『天狗の台所』を連載中の田中相(たなか・あい)さんです。
【田中 相さんの行きたいお店】
『中国料理 桂花』 @成城学園前
駅に隣接するビル2階にある、四川を中心とした中華料理店。うま味調味料不使用で仕上げる料理は上品な味わいで、近隣の住民だけでなく、遠来するファンも多い
[住所]東京都世田谷区成城6-4-13 成城フルールビル2階
[電話]03-3483-8581
[営業時間]11時半~14時LO、17時~20時半LO
[休日]無休
[交通]小田急線成城学園前駅北口から徒歩1分
【食べないからこそ、そのおいしさを想像する楽しみがあるんです】
「『新筍のフリッター』『海老のマンゴー豆腐』『牛頰肉の柔らか煮込み』もおいしいです。私はお酒を飲まないので、白ご飯といただきます!」。田中さんはテキパキと注文する。そこへ「本豆苗の炒め物もおいしいよ。今日はあるから食べてきな。あなた、食い道楽だから(笑)」とご主人が顔を出す。横尾忠則さんがお昼を食べる店、というのを雑誌で知って2〜3ヶ月に一度のペースで通うようになった。田中さんは食いしん坊?
『中国料理 桂花』牛頰肉の柔らか煮込み
「…というわけでもないんです。名もなき野菜炒めを毎日食べていても平気なタイプでして(笑)。友達に食の探求者がいるんですけど、見てると、食いしん坊はクリエイティブ。現状に満足せず『まだおいしくできる』と少量でもいいから食べたことのないものを食べたいと言って、新しい何かを探している。生きるエネルギーが強くて自分と違うなあと感じます」とは言うものの、彼女の描くご飯はとてもおいしそうなのだ。おいしく描く秘訣を知っている?
「まだまだわからないです。リアルに描けばいいわけではないとは感じており、簡略化された線で描くことを目指しています」『天狗の台所』は、第1話から、キャラメルくるみ、茄子の水餃子、唐揚げおむすび、けんさん焼き…と描くのがなかなか難しそうな品目が並ぶ。「そうそう。あんまり深く考えずに料理漫画に手を出したし、描けるかどうかわからないのに、品目を決めています。だから『くるみ!?どう描くんだろう』とか。毎回「しまった!!」と思っています(笑)」
漫画に出す料理は毎回、自分の家の台所で作る。そして、千枚ほど写真を撮り、そこからトレースしたり、よくよく見たりしながら、“おいしい絵”を仕上げていく。料理は、コロナ禍があったせいで、2年前から家で積極的に作るようになった。作るようになったら、描き方も変わった。一番は「人に食べさせることを想像した」ことだ。そうするとスイッチが入った、と彼女は言う。
「食べてみないと、登場人物の感情が描けないし、私は見たことがないものは描けない。(思い出して)水餃子を白黒で描くのは難しかったです。半透明で、プルってなって、中に少し具が透けて見えているけど…。えらいものを選んでしまったと大後悔。でも一番難しいのは鍋もので、扁炉(ピェンロー)を描いたとき。湯気を描かなくちゃいけないし、湯気をフィーチャーしすぎると具を描けないし、グツグツを表す泡も描かなきゃならない。鍋は情報量が多い。『くつくつ』『ふあ』と手書き文字で補填して乗り切ります!!(笑)」
この漫画を始める前に、小さな畑をひとつ借りた。野菜をいくつか作ってみて、にんじんがおいしくできたという。ニューヨーク育ちの主人公が、田んぼを見て「米畑?」と訊ねるアイデアも思いついた。谷崎潤一郎の美食文学『食魔』も読んでみた。「備え(準備)はできるだけして挑みます。この連載が終わったら料理を全然やらなくなるんじゃない?と友達にもからかわれました(笑)」…の話途中で、待望の「筍のフリッター」が到着。「はい、そんなことより、みなさん食べて下さーい!!」と田中さん。
『中国料理 桂花』新筍のフリッター
彼女の原点となる好きな料理漫画はなにか。「『ガラスの仮面』に出てくるケーキいまだによく思い出します。食べたことがないものが漫画に出てくると憧れが生まれて、どんな味なんだろう?と考えているときが楽しみのピークで。本当に食べると、食べることは現実で、全ての想像がそこで終わってしまうでしょう?だから、いっそ食べずにいるのがいいんですよ。漫画のなかで『おいしい』という人の顔を見て、『うんうん、どういう味なのかなあ』と想像しているときが私は一番幸せですね」
田中 相さん(たなか・あい)/三重県出身。2010年、講談社主催の第1回「スーパーキャラクターコミック大賞」受賞。主な作品に『地上はポケットの中の庭』『千年万年りんごの子』『LIMBO THEKING』(全て講談社)などがある。現在『アフタヌーン』(講談社)で『天狗の台所』を連載中。2月に第2巻が発売されたばかり!
『天狗の台所』(講談社『アフタヌーン』連載中)
天狗の末裔である兄・基とNY育ちの弟・オンは、自然豊かな都内某所でふたり暮らし。天狗としての葛藤も抱えつつ、餃子におにぎり、鍋など、何から何まで手作りな、おいしいスローライフを過ごすふたりを描く。
撮影/橋本真美、取材/輔老心
※2023年4月号発売時点の情報です。
※全国での新型コロナウイルスの感染拡大等により、営業時間やメニュー等に変更が生じる可能性があるため、訪問の際は、事前に各お店に最新情報をご確認くださいますようお願いいたします。また、各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いいたします。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
画像ギャラリー