アートな週末

洋服屋が”週末フォトグラファー” に ハイエースで北海道を駆け巡り和毛(にこげ)の野生動物を撮影

北海道釧路在住の自然写真家、佐藤章さん(50)の写真展『北の和毛(にこげ)』が、東京・西新宿の「ニコンプラザ東京 THE GALLERY」で開催されています。平日は別の仕事を持ち、”週末フォトグラファー”として活躍されて…

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北海道釧路在住の自然写真家、佐藤章さん(50)の写真展『北の和毛(にこげ)』が、東京・西新宿の「ニコンプラザ東京 THE GALLERY」で開催されています。平日は別の仕事を持ち、”週末フォトグラファー”として活躍されている佐藤さんが、野生動物を撮り始めたきっかけや、その魅力を伺いました。厳しい自然の中で生きる動物たちの、可愛くて尊さを感じる写真と共にご紹介します。

『霧氷滑空』マイナス20度を超える寒い朝、霧氷の中を飛ぶエゾモモンガ

大人になって出会ったエゾフクロウの赤ちゃんに感動

佐藤さんは、今から22年ほど前に父親の体調不良がきっかけで、地元の北海道釧路市で営む実家の洋服屋を継ぎました。写真を始めるきっかけとなったのは、7年前に参加した経営セミナーの講師から聞いた話でした。

それは、講師が新しい事業を始めるタイミングでたまたま訪れた摩周湖の星空が、見たこともないほど美しく、これからスタートすることの背中を推してくれるかのように”天命を感じた”というものでした。

この話に感銘した佐藤さんは、「摩周湖の美しい夜空を見てみたい、それを写真で撮ってみたい」と、思ったそうです。カメラはよくわからなかったので、知人に聞いてコスパが良いと言われて購入したのが、一眼レフカメラ「Nikon D750」でした。

そして摩周湖へ星空へ撮りに行ったのは、同じ年のクリスマスイブ。幸運にも、夜空には天の川が広がり、その感動と美しさをカメラに収めました。

『急カーブですよ!』クマが運転注意を促しているような一枚

星空など風景を撮り始めた佐藤さんは、カメラ仲間が少しずつ増えていきます。今から5年前の12月、カメラマンの1人に「動物は撮らないの?」と聞かれました。「動物がいる場所もわからないし…」と答えると、エゾフクロウが見える釧路のある森へ連れて行ってくれたそうです。

フクロウを見たのは、子供の頃に行った釧路市動物園。当時はライオンとか目立つ動物を見るのが好きで、じっと動かないエゾフクロウは面白くなく感じて好きではなかったそうです。

でも、大人になって自然の中で見たエゾフクロウは、”森の賢者のような風格”があり、神秘的で魅了されたそうです。ダメ押しとなったのは、エゾフクロウのヒナを見たときで、可愛すぎてハマってしまい、そこから野生動物を撮ることに夢中になり、北海道内の四季を通じた撮影場所へ向かうようになりました。

エゾフクロウのヒナを写した『アザラシじゃないよ』は、佐藤さんにとって特に思い出深い一枚です。

『アザラシじゃないよ』ふわふわの毛とあどけない表情が可愛いエゾフクロウのヒナ

撮影に向かうのは、仕事が終わった金曜の夜から日曜を終日利用した週末です。北海道内の移動に使うのはワンボックスカー「ハイエース」。座席の後ろには、布団を引いていつでも寝泊まりできるようにしています。

北海道内を毎週のように移動しているという走行距離は、「3年で13万キロ走ってます。前の車が10年で8万キロだったので、結構いってますね」と佐藤さん。今までで一番遠かったのは、釧路市から国道40号経由で450㎞ほど離れた、日本国内で最北端と言われる稚内にゴマフアザラシとイタチ科のキタイイズナを撮りに行ったときで、運転に半日を費やすそうです。 

一期一会の出会いと緊張感

佐藤さんが辛くもどかしく感じた出来事は、鴨の一種のカワアイサを追っていた時のこと。子育てに木の穴を使うカワアイサは、オシドリから巣穴を奪ったようで、その中にオシドリのたまごが一つ残っていたそうです。たまごからかえったオシドリのヒナは、カワアイサをお母さんだと思って一生懸命ついていきますが、カワアイサのお母さんに自分の子どもとは認識されなかったため、一緒に移動することはできませんでした。

「人間社会にいるだけでは決して気づかないところで、動物のある意味残酷にも見える厳しい現実が起きているということを目の当たりにすると、命の尊さを強く感じます」。

また、「野生動物を撮っていると、生死の瞬間を目の当たりにすることがあります。カワアイサの親子が連なって川に向かう途中、親の後をついていく子どもがカラスやキツネに連れ去られ食べられてしまうこともあります」

佐藤さんは、生物が他種の生物を捕えて食べる「捕食」の瞬間を、生きるための”命の交換”という言葉で表現しました。

『カワアイサの親子』母のあとをついて泳ぐヒナたち

「目の前にいる動物が他の動物から食べられることは、人間からすれば残酷なシーンですが、動物から見たら僕たちと同じ食事で、生きて行くためにしていることと変わりない」

だからこそ、佐藤さんは「もう二度と会えないかもしれないという偶発的な出会いの瞬間と緊張感」が好きで、野生動物を撮り続けているといいます。

『青い目』キタキツネの赤ちゃん

”癒し”になるような可愛い写真がいっぱい

今回の写真展では、野生動物の可愛い姿に観る人たちが癒されて欲しいということをテーマにしていますが、”命の尊さ”を伝えらえたら…という思いもあるようです。写真展では、心が和むような可愛い野生動物の写真が観られます。

『笑顔にするトーテムポール』食事中のエゾモモンガが縦に並んでいます

個展名は、観る人を”癒したい”、”和んで欲しい”という願いを込め「北の和毛」という名前が付けられています。「和毛」とは、モフモフとした”柔らかい毛”を指す言葉です。

展示作品は、「和毛」を象徴するような”雪の妖精”と呼ばれる「シマエナガ」のほか、「エゾフクロウ」のヒナなど野生動物の可愛い写真を中心に全76点を観ることができます。

『冬毛』”雪の妖精”と呼ばれるシマエナガ

頬がパンパンになったシマリスを写した「ほぺぱん」や、満月の夜に現れた2匹のエゾモモンガ「お月見」など、ユニークでストーリー性のあるタイトルにも注目です。北海道の自然を背景に、普段目にすることのない北海道に生きる野生動物の貴重な瞬間を、観ることができます。

『ほぺぱん』巣材にする落ち葉で頬がパンパンのシマリス
『お月見』満月の夜にひょっこり現れたエゾモモンガ

自然写真家・佐藤章プロフィール

1972年北海道釧路市に生まれ、釧路市在住。動物、風景、星空などを中心に撮影する”週末フォトグラファー” 

近年の受賞歴

2023年・第61回富士フイルムフォトコンテスト ネイチャーフォト部門 銅賞

     ・Try & Discover フォトコンテスト2022 入賞

2022年・第70回ニッコールフォトコンテスト ネイチャー部門 特選

・TOKYO INTERNATIONAL FOTO AWARDS 2022 Nature/Wildlife部門 Honorable Mention

2021年・Nature’s Best Photography Asia 2021 HIGHLY HONORED BIRDSなど多数の賞を受賞

【「北の和毛」概要】

【開催場所】東京都新宿区西新宿1-6-1新宿エルタワー28階 ニコンプラザ東京 THE GALLEY

【開催日時】2023年6月6日~19日/10時30分~18時30分(最終日は15時まで)

【観覧料】無料

【休館日】日曜

【電話】0570-02-8080

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