チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。第26回となる今回は、島根県出雲市で見つけた昭和レトロなオートレストランで「自販機チャーラー」を実現させました。
画像ギャラリー筆者には、チャーラーと同じくらい思い出深い食べ物がある。それは昭和の時代、国道沿いにあった24時間営業のオートレストランの自販機ラーメン。悪友と夜通し車で遊びに行った帰り、小腹が空いたときによく立ち寄っていたのだ。
お金を入れると、自販機内部の電子レンジのスイッチが入って、30秒ほどで自販機下部の取り出し口からニョキッと出てくるアレだ。とはいっても、Z世代にはわからないだろう。40代以上にしか通じないかもしれない。
ラーメンにはチャーシュー増量の「当たり」も
先日、島根県出雲市へ行ったときにネットでチャーラーの店を探していたら、偶然見つけてしまったのだ。その名も24時間営業のオートレストラン『GAME & REST コウラン』。
店は出雲空港と出雲大社のほぼ中間にある出雲市斐川町上直江の国道9号線沿い。仕事の現場からはかなり距離があるが、遠回りしてでも行かねばならないと思った。
店を訪れたのは、出張の翌日。この日は仕事をオフにして出雲大社へ行く途中に立ち寄った。店内に入ると、ラーメンのみならず、天ぷらそばやカップ麺、丼もの、焼そばなどの自販機がズラリ。しかも、その中に五目チャーハンを見つけてしまったのだ。
と、いうことは、「チャーラーの旅」が成立するではないか。ってことで、今回は特別編としてみなさまにお届けする。いつもよりたくさん撮ってきた写真とともに楽しんでいただきたい。
店の壁にはラーメンの調理プロセスがパネル写真で紹介されていた。麺は生麺を茹でて丼に小分けしていて、チャーシューも手作り。しかも、多めに入っている「当たり」まで存在するようだ。これは楽しみ♪
一方、五目チャーハンや丼もの、焼そばの自販機はラーメンと違って温める機能はない。メニューは調理済みで、自販機から取り出したら店内にある電子レンジで温めるシステム。すべてのメニューは店に隣接するキッチンで調理されているようだ。
小腹を満たすにはぴったりのボリューム
では、まずは電子レンジで温めなければならない「五目チャーハン」(350円)を購入。ご飯茶碗に1杯くらいだろうか。この値段ゆえにサイズは小さめなのは仕方がない。オートレストランはガッツリと食事をする場ではなく、小腹を満たすためにあるのだ。
ところで、「五目」という名を冠しているからには、5種類の具材を使っていると考えるのが普通だ。定番のチャーシューとネギ、卵はすぐに確認できた。よーく目を凝らしてチェックしてみると、小さいニンジンとシイタケもあった! うん、たしかに「五目」だ。
五目チャーハンを温めている間に「ラーメン」(400円)を購入することに。お金を入れると、ランプが点灯し、残り時間が表示される。それが懐かしくてたまらない。ワクワクしながら待つと、取り出し口からラーメンが登場!
残念ながら「当たり」ではなかったが、そんなのはどうでもよい。今、こうして目の前に自販機ラーメンがあることに、ただ感動するばかり。
これ、これっ! 学校給食で使っていそうなプラスチック製の丼! 通常のラーメン用の丼の3分の2くらいだろうか。これもチャーハンと同様に量は少なめ。ということは、麺も1玉ではなく、3分の2玉くらいのボリュームか。
具材はモヤシとバラ肉のチャーシューのみ。彩りにネギが欲しいところだが、原価計算をすると赤字になってしまうのだろう。何しろ、分厚いチャーシューが原価率を上げているのだから。
コンビニやファストフードにはない手作りの温もり
そんなことを考えていたら、チャーハンを温めていた電子レンジからチン! という音が聞こえた。これで『GAME & REST コウラン』のチャーラーが完成!
まずは、私の流儀に則って、ラーメンからいただく。おっ、持ち上げたときに手へと伝わるフニャッとした丼の感触すらも懐かしくて泣きそうになる。
予想通り、麺は茹で置きしているためコシはないし、スープも若干ヌルい。しかし、これはこれでよいのだ。記憶に残る味というか……わかるかなぁ。そもそも自販機ラーメンに巷のラーメンとしてのクオリティは求めていないのである。
ただ、チャーシューのレベルは高い。しっかりと味が染みていて、柔らかい。さすがは手作りである。チャーシューの味の余韻を残しつつ、チャーハンを頬張る。うん、旨い! 冷食っぽい味ではあるものの、オートレストランというシチュエーションがおいしく感じさせるのだろう。
オートレストランの発祥は1970年代。当時はコンビニも都市部にしかなく、24時間営業の店も今より少なかった。他の店が開いていない深夜や早朝にラーメンやうどん、そばが食べられること自体がありがたかったのである。
コンビニやファストフード店の増加でオートレストランは衰退していくのだが、無人であってもコンビニ弁当やハンバーガー、牛丼にはない手作りの温もりが伝わってくるのがオートレストランのよいところだと思う。
これからも出張先にオートレストランがあったらレポートしようと思う。
取材・撮影/永谷正樹
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