蕎麦店を大調査した「おとなの週末」スタッフが選ぶ“必食の一杯”とは!?

タネ物での季節感も魅力のひとつ 菜「奈々ちゃん、今回いいこと言うねえ。普段なテキトーなことばっかなのに」 肥「高田純次さんを目指してるから(キリッ)。ところで松田姐さんはどんな店を取材した?」 松「うふふ、いろいろとね。…

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「おとなの週末」2023年12月号の蕎麦特集の取材で、新しい味、驚きの蕎麦を求めて東奔西走した取材班(編集戎、ライター岡本、池田、菜々山、肥田木、松田)。中でもおいしかった店を振り返りつつ、蕎麦屋さんとどう付き合って行くかにまで話は及びました。

守っていくべき日常の幸せ

戎「毎年恒例の蕎麦特集ですね。この号を編集すると、そろそろ年末だなって気がします。さっそく“新店”部門から行きましょうか」(新店について、詳しくはこちら)

菜「今年も大豊作だよ。神田明神のすぐ近くにある『おしん』は『土山人』出身だけあって、つまみも蕎麦も優秀。それに『黒猫庵』ツユにピーマンを入れたオリジナル蕎麦も出していて、これがダシの風味と絶妙に合う!蕎麦の新風を感じた1枚だったな」

『明神下 蕎麦 おしん』蕪あんかけ蕎麦 1700円 すりおろしたかぶらを加えとろみをつけた汁が身体を温める

肥「私も新店(移転リニューアル)で1軒だけ取材した『蕎麦おさめ』は、いやもうほんっとに素敵な店。古民家の風情にひたりながら、産地と打ち方を変えた3種の在来種の蕎麦の食べ比べをぜひ体験してみてほしいの!他にみんなはなにを担当してた?」

『蕎麦おさめ』大粒なめこそば(季節のそば) 2200円 滋味深い旨さ

池「俺は“通し営業の店”ね」(通し営業の店について、詳しくはこちら)

松「なにそれ、最高じゃない。ずっと飲んでいられる(笑)」

池「でしょう。でもさ昔は通し営業が割と普通だったと思うけど、労働時間や人件費の問題もあるから、今は数を減らしている傾向」

岡「通し営業の蕎麦屋って、独特の風情があるのよね」

池「そうそう、世間様が混雑する昼飯時を過ぎた頃、ふらっと入って1杯できるのもいいし、お店の人もそんな客の気持ちを理解してくれる阿吽の呼吸があるんだな。『能登治』のご主人が “うちはチームで(家族全員)やってるからできるんだけどね”って。どこか家族的なつながりを感じさせるところが多く、そんな温かみも魅力というか隠し味かもね」

戎「『長生庵』なんて朝7時からやってる上に築地らしく本マグロや海鮮丼の頭なんかもあって、クラフトビールまで置いてました。この店に足を踏み入れたら、その日は仕事できませんよ」

菜「くぅ、たまらないね。ダメ人間になってしまう。なってるけど」

肥「こちらの“下町蕎麦”でも通し営業している店も多かった。それに年月を重ねた伝統の味もあって、それを一途に受け継ぎ、あるいは“変えないよう変えながら”守っている姿は感動した」

松「“変えないように変える”ってなかなか難しいことよね」

肥「それにどの店でも名物の味があるのも特徴かな。特に『弁天』の「はまぐりせいろう」は食べる価値アリ。ぷりぷりの地蛤は噛めばエキスが洪水の如くで、酒3合は余裕で飲める(笑)。あと『翁庵』は店の佇まいにも、飴色の店内にも、品書きの潔さにも、名物にもシビレタ。こんな粋な店を知っていると、ちょっといい大人になった気分。ひとりもいいけど、誰かを連れて行けば絶対喜ばれるよ。

蕎麦屋も高級化しているよね。寿司と同じで安い立ち食いとストイックな高級店と二極化する中、下町に息づく町蕎麦は気取らず居心地よく楽しめて貴重な存在。日常の幸せっていうのかなあ、絶対守っていかねばならない日本の文化だと思う」(下町蕎麦について、詳しくはこちら)

『翁庵』ねぎせいろ 850円 イカのかき揚げと長ねぎがツユに入る。ダシは宗田節とサバ節。ねぎせいろ専用のツユは大鍋で仕込む。多い日は1日約150食出るとか。蕎粉麦は北海道産

タネ物での季節感も魅力のひとつ

菜「奈々ちゃん、今回いいこと言うねえ。普段なテキトーなことばっかなのに」

肥「高田純次さんを目指してるから(キリッ)。ところで松田姐さんはどんな店を取材した?」

松「うふふ、いろいろとね。新店は移転リニューアルした蕎麦界のレジェンド、石井仁さんのお店『仁行』

松「プライベートで行ったら感動しちゃって。全10品の蕎麦懐石のみで、突き出しから全部がしみじみおいしい。もりそばに至っては、極細だけど十割のみずみずしい蕎麦がのど越し最高!いつものおと週で掲載する店の価格よりちょっぴり高いけど、絶対間違いない店よ」

岡「あと、一緒に“冬のごちそう蕎麦”もやりましたね」(冬のごちそう蕎麦について、詳しくはこちら)

松「ええ、『蕎麦前山都』は釜あげ蕎麦。麺が太くてモッチモチで具は九条ねぎのみ。シンプルだからこそ、十割蕎麦の滋味深さが沁みたし、生卵に絡めていただく『すずめの御宿』のすき焼き鍋蕎麦も抜群。どちらも冬のごちそうと呼ぶのにぴったりの蕎麦ね。岡本さんは?」

『すずめの御宿』和牛すき焼き鍋蕎麦 1680円(昼)、すき焼き鍋蕎麦 1980円(夜) 写真は昼のセット。夜はご飯が付かず、すき焼きの和牛が増量となる

岡「割とベテラン勢の店が多かったかな。ますます腕に磨きがかかっていて、ちょっとしたつまみもすごくおいしい。印象に残ったのは、『ながえ、』にしろ『こねり庵』にしろ具材を別添えにして、最後までおいしさを追求していること。どの店にもタネ物にはタネ物の完成度の上げ方があって、いい勉強になった」

菜「どうしてもせいろやざるに目が向きがちがけど、実はタネ物を上手に作れる店が本物だと思う

池「タネ物は季節感も感じられるし、毎年その蕎麦を心待ちにしているお客さんもいる。粋な文化だよね」

戎「みなさんのリサーチのかいあって、今年の蕎麦特集も最高の仕上がりになったと思います。やっぱり蕎麦はいいですね。小難しく考えることなく、ぜひこの号を読んでいろんな店に行ってもらい、ご自身の舌に合う味や店の風情を見つけてもらえれば、こんなにうれしいことはありませんね」

※今回の蕎麦特集のリサーチ動画(ほぼ音声)を小誌のYouTubeチャンネルで公開中!(https://www.youtube.com/channel/UCWxJoBCf10AVu2OQTXLQMQQ)

撮影/小島昇(おしん)、西崎進也(蕎麦おさめ、翁庵)、貝塚隆(すずめの御宿)、文/菜々山いく子

2023年12月号

※2023年12月号発売時点の情報です。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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