チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。記念すべき第30回は、著者の地元・愛知県尾張地方へ。隠れた人気店で、昔ながらの中華そばとチャーハンをいただきました。
画像ギャラリー今どきの、複雑な味わいのラーメンを食べていると、なぜか逆に昔ながらのシンプルな中華そばが無性に食べたくなる。子供の頃に食べたラーメンの味を再確認するための揺り戻しなのだろうか。
愛知県尾張地方に展開する隠れた人気店
そんなわけで今回訪れたのは、愛知県小牧市にある『しな喜(しなき、本来の表記は「喜」=「七」を三つ重ねた文字) 小牧店』。筆者の自宅から近いこともあり、たびたび足を運んでいる。小牧市のほか、江南市や犬山市、大口町、扶桑町にもある、昔ながらの中華そばが人気の店である。
セットメニューも充実していて、好きなラーメンに+330円で天津飯や中華飯、日替わりの丼などを付けることができるのだが、「チャーラーの旅」なので、やはりここは炒飯をセレクト。
ラーメンは、ここの名物ともいうべき厚切りのチャーシューが3枚のる「Aラーメン」(790円)を注文。ちなみに5枚のるのが「Oラーメン」(990円)。AやOって何の略だろう。いくら考えてもわからない。まぁ、どうでもイイか。
12、3分経ったところで、目の前に運ばれたのがこれ。チャーハンのボリュームがやや少なめなのは否めないが、フワッと立ち上る湯気とともに鼻孔をくすぐる醤油の香りにヤラれてしまった。
余談だが、店内にカメラを持ち込むと警戒されるため、この連載で使用しているチャーラーや店の外観などすべての写真はiPhoneで撮影している。iPhoneでも窓際の外光が入る席など条件が揃うと、ここまでキレイに撮ることができるのだ。ご参考までに。
口の中で崩れる厚切りチャーシューが旨い
さて、これが「Aラーメン」。湯気がイイ感じでしょ。具材は厚切りチャーシュー3枚とメンマ、そして、たっぷりのネギ。レンゲでスープとネギをすくって飲んでみる。熱々のスープに浸されて甘みが出たネギがやたらと旨い!
麺は細めの縮れ麺。これがスープと絡んでこれまたおいしい。ちなみに麺の大盛は、たったの70円。大盛りにすればよかったと少し後悔したほどだ。
しかし、厚切りチャーシューのボリュームがハンパないので、やはり並盛にして正解だった。チャーシューは赤身が多く、形をギリギリ保っている状態。口に入れるとホロホロと崩れていく。うーん、旨い!
物価の高騰が続いている今のご時世、デフォルトのラーメンでも800円台。チャーシューをトッピングしたら1000円超えも珍しくはない。にもかかわらず、800円を切る790円で提供しているのが素晴らしい。店としてもラーメン単品では儲けが薄いが、セットの注文で利益が出る仕組みにしているのだろう。
紅ショウガの好アシストで最後まで飽きることなく完食
これがチャーハン。ご飯茶碗1杯よりもやや少なめくらい。具材は、チャーシューとネギ、ニンジン、卵。そして紅ショウガが添えられている。
味付けは塩・コショウベースだが、どこか複雑な味わいもする。シャンタンや味覇っぽい調味料を使っているかもしれない。
食感はしっとり系。以前に江南店で食べたときは、パラパラだったものの、明らかに炒めすぎ。きっと作り置きのものを再度炒めたからだろう。しかし、ここのチャーハンはきちんと作ってあるのが伝わってくる。
ラーメンのスープとチャーハンの相性も抜群に良い。チャーシューをおかずにチャーハンを食らうという贅沢も味わえる。
厚切りチャーシューとチャーハンの組み合わせに飽きてしまうかもしれないと思ったものの、合間に紅ショウガをつまんだら、それが箸休めとなって最後まで飽きることなく食べることができた。チャーハンに添える紅ショウガも重要なアイテムであることを再認識した。
そうそう、このセットにはデザートも付くのだ。アップルかな。フルーツ味のゼリー。これがしょっぱ辛くなった口の中をリセットさせてくれる。
やはり、昔ながらの中華そばはチャーハンとの相性も抜群の上、何よりも心がホッと和む。これがイチバン! と、今は思っているが、今どきのラーメンもまた食べたくなるんだろうな(笑)。
取材・撮影/永谷正樹
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