ニッポン“チャーラー”の旅

たまり醤油の甘みとコクが特徴「蒲郡ブラック」をチャーハンと共に堪能!チャーラーの無限ループが止まらない

チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。今回は「蒲郡ブラック」なるものがある情報をキャッチし、愛知県蒲郡市へ。ここで出合ったチャーラーが無限ループに陥るおいしさでした。

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富山が発祥の地とされるブラックラーメン。滋賀の「湖国ブラック」や大阪の「高井戸ブラック」、福島の「郡山ブラック」など、富山以外にも全国には「ブラック」の名を冠したラーメンがたくさんある。

味が濃すぎるせいか、とくに富山では好みが分かれるようだが、筆者は富山へ行くたびに食べている。地元の名古屋で食べられないのが残念でたまらない。

小鉢とサラダが付く豪華なチャーラー

ところが、愛知県にもブラックラーメンがあることを知り、早速行ってきた。しかも、メニューにチャーハンもあるという。いざ、チャーラーの旅へ出発!

『中国麺飯食堂 マルナカ』外観。駐車場も完備している

愛知県東三河地方の蒲郡市にある『中国麺飯食堂 マルナカ』がそれだ。場所はJR東海道本線蒲郡駅の目の前。いかにも地元で人気の町中華という店構えに心が躍る。しかも、「中国麺飯食堂」という店の名前がイイよね。麺=ラーメンと飯=チャーハンでチャーラー食堂と解釈もできるし(笑)。

メニューを見ると、冷菜や揚げ物、魚介料理、肉料理など町中華のレベルをはるかに超えた本格的な料理がズラリ。それら単品のほか、お値打ちなセットメニューも用意している。選んだのは、もちろん「ラーメンセット」(1050円)。

おや? そういえば、メニューに「ブラック」という文字が見当たらない。「ラーメン」としか書かれていないし、単品メニューにも「ブラックラーメン」の記載はない。いったい、これはどういうことだろうか。ひょっとして、情報はガセだったのか!?

「ラーメンセット」。小鉢とサラダが付くのがうれしい

待つこと約10分。目の前にラーメンセットが運ばれた。おっ、ラーメンとチャーハン以外にも小鉢とサラダが付く。チャーラーで1000円オーバーという価格はやや高いと思ったが、これなら納得。サラダがあるだけでも罪悪感は和らぐもんね。実際は屁の突っ張りにもならないだろうけど(笑)。

文化の香りがする「蒲郡ブラック」

まずは「ラーメン」からチェック。富山ブラックほど真っ黒ではないものの、たしかに黒い。例えるならば、富山ブラックが松崎しげるとしたら、この「ラーメン」は東幹久か。って、わかりにくいな(笑)。

実はここ、蒲郡市では中華料理店やラーメン店が出しているラーメンを自ら「ブラック」と名乗っているのではなく、それを食べた客が「蒲郡ブラック」と命名したようだ。もちろん、中にはその人気にあやかって「蒲郡ブラック」として売り出している店もあるかもしれないが。

スープの見た目こそ濃いが、塩辛さはなくカドのない味わい

「蒲郡ブラック」は、店が仕掛けたのではなく、地元で暮らす人々の間で自然にその名前が生まれたところに文化の香りがする。これは大切に育てなきゃ。

さて、「ラーメン」に話を戻そう。まずはスープをひと口。見た目とは裏腹にほんのり甘く、深いコクを感じる。これはおそらく、ラーメンのタレにたまり醤油を使っているからだろう。地元出身の筆者にとっては慣れ親しんだ味。

麺はやや縮れのある中太麺。町中華でよく使われているものだろうが、このスープを吸った麺がやたらと旨い。チャーハンを思いっきり頬張りたくなる衝動に駆られる。

たまり醤油を用いるのは自然の成り行き

すかさずレンゲにテンコ盛りにしたチャーハンを掻き込むと、スープのコクとチャーハンの焦がし醤油の香ばしさが相まってムチャクチャ旨い! さらにお米の甘みも加わって、レンゲを持つ手が止まらなくなる。

焦がし醤油が香るチャーハンは、ラーメンとベストマッチ

ラーメンに入るチャーシューも味がしっかりしていて、チャーハンと相性は抜群。チャーハンを食べるとラーメンが食べたくなり、ラーメンを食べると今度はチャーハンが食べたくなる。無限のチャーラーループを心ゆくまで楽しんだ

愛知県の三河地方や知多半島では、味噌や醤油、みりん、酢などの醸造が盛ん。ゆえに蒲郡市のラーメン店がたまり醤油を使うのは自然の成り行きなのだ。

その一方で、名古屋市内でたまり醤油を使っているラーメンを出す店はごくわずか。蒲郡ブラックがもっと盛り上がれば、名古屋にも飛び火するかもしれない。しかも、名古屋はアレンジを加えるのが上手いので、蒲郡ブラックとはまったくの別ものになるような気がする。そんなラーメンが生まれたら、筆者は「大名古屋ブラック」と命名する。

取材・撮影/永谷正樹

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