札幌市中央区の狸小路に昨年7月、新しく誕生した話題の都市型の水族館「AOAO SAPPORO(アオアオサッポロ)」があります。複合施設「moyuk SAPPORO(モユクサッポロ)」の4階から6階にあり、「生命のワンダー…
画像ギャラリー札幌市中央区の狸小路に昨年7月、新しく誕生した話題の都市型の水族館「AOAO SAPPORO(アオアオサッポロ)」があります。複合施設「moyuk SAPPORO(モユクサッポロ)」の4階から6階にあり、「生命のワンダー~みえないものがみえてくる~」をテーマに、水辺の生物や自然を肌で感じられるこだわりの展示がされています。元・テレビ北海道アナウンサーで、現在、地理系イベントなどを手掛ける森順子さんがその魅力に迫りました。
オシャレでアクセスの良い都市型水族館
私は長らく札幌に住んでいたのですが、昨年3月に関東に引っ越してしまい、水族館オープンのニュースを見てずっと行ってみたいと思っていました。そこで、仕事で札幌に行く機会に合わせて、札幌のママ友家族を誘って訪れてみました!
到着してまず何を感じたかというと、アクセスがとても良いことです。
地下鉄南北線の大通駅やすすきの駅から徒歩約5分。さっぽろ地下街ともつながっているので、天候が悪くても、雪の心配をしたり、雨にあたることもなく訪れることができます。
私の下の子はまだバギーに乗ることがあるので、バギーだけではなく、ベビーカーでも来やすいと思いました。中に入ると、とてもオシャレで洗練された空間が広がっていました!
たべっ子水族館とのコラボイベントが人気 スタンプラリーが子どもたちの探求心をくすぐる!
昨年12月から今月29日まで開催しているのが、水族館とたべっ子水族館がコラボした「たべっ子水族館meets AOAO SAPPORO」。入口に隣接するミュージアムショップでは、「たべっ子どうぶつ」をモチーフにしたお土産もたくさん売っていて、多くの子どもたちがお土産を親にねだっている姿も見かけました。
クイズラリーつきガイドブック「ワンダーブック」も販売していて、館内でスタンプとクイズをすべて集めるとシールがもらえます。ワンダーブックでは、水族館の生き物を飼育員さんがワンダーポイントで解説してくれていて、ページをめくるたびに「そうなんだ!」と勉強になりました。
子どもたちは「次のスタンプを探せ!」と、スタンプを探してワクワクしながら進んでいきました。ただ見るだけではなく、このような仕掛けがあると、子どもたちもさらに楽しいのだなと思いました。
「人と水の世界がつながる」4階エリア
展示は3つのゾーンに分かれていて、4階のテーマは「CONECT」。
入口を入ってまず目にするのが、大型の2つのタンクです。人工海水を製造するためのもので、通常の塩を含んだペンギン用のタンクと、ミネラル豊富な塩を含んだ魚類用の水槽2基が設置されています。通常の水族館のように海から海水を引けないので、ここでつくられた海水が館内のフロアに送られます。
徐々に海の世界にコネクトする(つながる)ようにという、テーマに沿ったエリアです。
バックヤードと水族館の仕組みを知る!
ここを抜けると入口があり、最初に見えてくるのが、「水の生き物のラボ」。館内では「たべっ子水族館」の仲間たちがパネルで出迎えてくれ、見どころを分かりやすく紹介してくれています。
あえてバックヤードを公開し、スタッフが働いているところを見せるつくりになっているので、水族館で働くことについて、子どもたちの職業選択を考える教育にもつながると思いました。
キタサンショウウオやエゾトミヨなど、ここでは北海道ならではの海の生き物も見ることができます。スジアオノリの生育の過程が水槽ごとに並んでいるので、分かりやすく面白かったです。
「見えなかった世界を見つめる」5階
5階のテーマは「SCOPE~見えなかった世界を見つめる~」。「ネイチャーアクアリウム」が並ぶ空間は、まるでアート空間のようでした。美しい音楽や見た目の「聴覚」や「視覚」だけではなく、アロマを使った香り、「嗅覚」も楽しめます。水草がゆらゆらと動く中、小さな魚たちが泳ぐ姿に癒されました。
なかでも興味深かったのが「パルダリウム」。パルダリウムとは、熱帯雨林を再現した水槽です。水もなく、魚もいないのですが、水槽の中に霧が立ち込めたりして、ジャングルの生態をリアルに体感できる展示です。あまりの美しさにしばらくその場に立ち止まってしまいました。
関係者の方の話によると、このエリアは大人やカップルが椅子に座って長い時間ゆっくりと眺めていることも多いそうです。
まるで図書館のような「観察と発見」の場!
さらに進むと、「ライブラリーアクアリウム」のエリアがあります。本のページをめくるように、ひとつひとつの生き物をじっくりと観察することができます。展示生物に関する書籍も置かれています。
ここの展示はユニークで、「ぺったんこ」「にょろ」とテーマをくくり、あえて生き物の名前を全面に出さず、その形状で集めた海の生き物たちが一堂に会しています。
チンアナゴやヘコアユなど、見た目がユニークな生き物も多く、子どもたちは「にょろにょろしてる!」「ほんとにぺったんこだ~」などと言いながら、水槽にくぎ付けになっていました。
大小さまざまな水槽は360度から見られるようになっているほか、水槽の高さが子どもたちの目線に近く、より間近で海の生き物の生態を見ることができるのがいいなと思いました。
また、ここにはサッポロカイギュウの全身骨格復元標本も展示されています。
体長は約7m、約820万年前、今の札幌が海だったころに暮らしていた生き物で、世界最古の大型海牛の化石です。迫力あるこの標本を見て、昔の札幌や北海道の歴史を肌で感じることもできます。
ひとつの世界を分け合う「6階」
続いて6階へ。テーマは、「COMMONS~ひとつの世界を分け合う~」です。目玉ともいえる「キタイワトビペンギン」はここで見られます。タイミングが合うと、飼育員さんの餌やりをそばで見ることができます。
ガラスなどで覆われていないので、手が届きそうなところにいるペンギンたち。六角形の陸場は変えられるそうで、環境を変えながら展示を行う、世界初の仕組みだそうです。
さらに、6階で目を引くのが、「プランクトンルーム」にある、ミズクラゲの水槽です。大小さまざまな水槽でゆっくりと回転するクラゲたち。ずっと見ていたいと思うくらい癒されます。
何より驚いたのが、6階にはカフェがあり、買った飲み物や食べ物を自由に館内で食べられるということです。17時以降はお酒も飲めます。カフェでは、道産小麦を使ったさまざまなクロワッサンが販売されています。
私はカフェオレとチョコミントクロワッサンを注文。ペンギンが泳いでいる姿を見ながらゆっくり食事でき、なんとも贅沢な時間を過ごすことができました。
ブルールームとグリーンルーム
6階には2つの色の名前がついた部屋があります。「ブルールーム」と「グリーンルーム」です。
「ブルールーム」では、大きなスクリーンにデジタルアートが投影され、海の中にいるような気分を味わえます。
ここでは夜、ヨガや音楽ライブなどのイベントが不定期で行なわれているそうです。さまざまな方法で活用できる、本当に新しいタイプの水族館だと思いました。
一方、「グリーンルーム」には、熱帯地方の植物が置かれているほか、道内で初めての展示となる世界最小のフェアリーペンギンも見ることがでます。フェアリーペンギンは小さくてかわいかったです。
「グリーンルーム」では、イベント開催期間中の土日は、ワークショップでトートバックに色を塗ることもできます。オリジナルのトートバックは良い思い出になりそうです。
今回一緒にまわったママ友の娘さんは、「楽しかった。普通の水族館で見れないものが見れた。ペンギンが近かった!」と興奮気味に感想を伝えてくれました。
ママ友も一緒にまわりながら「すごーい!」の連呼。「ようやく来れてよかった。座れる場所がたくさんあるのがいいね。車じゃなくても来られるから来やすいし。夜までやっているので、仕事が終わったら一人でも来たい」と、新たな観光スポットの誕生に喜んでいました。
どの世代にも、どんなシチュエーションでも活用できる
館内にはベビールームがあり、おむつ交換や授乳室、キッズルームが設けられています。
キッズルームにある本はすべてペンギンがテーマです。
子どもが小さい頃は、おむつを替える場所を探して彷徨ったり、飽きてしまうことも多かったので、このような空間があるのと、小さいお子さん連れの家族には嬉しいのではないかと思います。
他にも、コワーキングスペースがあり、ネット環境も整っています。非日常的な空間で会話をすることでアイデアも出やすいのではないかと感じました。
AOAO SAPPOROはデジタルが融合した新しい形の水族館で、どの世代でも楽しめると思いました。現に、私が訪れたときには、家族、カップル、シニア、インバウンドと、幅広い層のお客さんがたくさん訪れていました。今後もAOAO SAPPOROでは、さまざまなイベントを企画しているそうです。常設展示だけではなく、今回のようなイベントがあると、何度も行きたくなりますね。今度は私も子どもを連れて訪ねてみようと思います!
文/写真・森順子