チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」…
画像ギャラリーチャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。今回は、チャーハンに力を入れている店で実食。名古屋人にはたまらない組み合わせのチャーハンとのペアリングで、チャーラーの奥深さを知ることに……。
充実のセットメニューに名古屋人テッパンの組み合わせを発見
チャーハンに力を入れているラーメン店はないものかと探していたところ、名古屋人にはたまらないチャーハンを出している店があるらしい。それが今回紹介する『豚骨ラーメン専門店 一兆』である。
店は愛知県一宮市の国道155号線から一本入った場所にある。店の外壁には「チャーハンが美味すぎるラーメン屋」との看板が。探していたのはまさにそれだ。こりゃ期待が持てる。
店内はカウンター席のみ。訪れたのがお昼時のピークだったため、満席。店内の待合スペースで待つことに。すると、5分も経たないうちに案内された。
メニューを見ると、セットメニューがやたらと充実している。例えば、ラーメンの代金に+290円で半炒飯が付く「半炒飯セット」とか……。あっ、なるほど! そうか! 名古屋人にはたまらないチャーハンというのは、「ふわ玉肉味噌半炒飯セット」(+500円)に違いない。
味噌おでんの玉子や玉子入りの味噌煮込み、卵黄をのせたどて飯など名古屋人にとって味噌と玉子の組み合わせはテッパンなのである。それをチャーハンでやってしまうとは! ということで、ラーメンはデフォルトの「豚骨ラーメン」(790円)を選択。計1290円と、何とも豪華なチャーラーになってしまったが、おいしければよいのだ。
クリーミーで濃厚な味わいの豚骨スープ
まず、目の前に運ばれたのが「豚骨ラーメン」。注文する際、麺のかたさを粉落としとハリガネ、バリカタ、カタめ、普通、柔らかめから選べるのは豚骨ラーメンでは当たり前といえば当たり前。
ここのラーメンは山椒の効いた「シビレ」と唐辛子の効いた「辛味」も抜きと少なめ、普通、増し、増し増し(1段階につき+30円)でそれぞれ選ぶことができるのだ。
シビレと辛味といえば担々麺の「麻」と「辣」。しかし、豚骨ラーメンのそれは味がまったく想像できないため、筆者はいずれも「普通」を選択。麺のかたさは「カタめ」にした。丼の左側にちょこんと盛られているのが山椒と唐辛子だろう。これらをスープに混ぜて飲んでみる。
うん、たしかにシビレと辛味を感じるものの、豚骨の風味の方が強いためかき消されているような気がする。とはいえ、スープ自体はクリーミーで濃厚な味わい。ストレートの細麺にもよく合う。
ラーメンを堪能していたら、「ふわ玉肉味噌半炒飯」が目の前に。もう、このビジュアルだけでヤラれる。チャーハンの上にふわとろの玉子、そして、たっぷりの肉味噌がオン。何度も言うけど、名古屋人にとって味噌と玉子の組み合わせはテッパンなのである。
肉味噌とふわとろ玉子がテンコ盛り
肉味噌と玉子、チャーハンをレンゲですくって頬張る。うっ、旨ぇ~っ! ベースとなるチャーハンはパラパラ系だが、覆い被さっている玉子がしっとり感を生み出してちょうど良い塩梅に仕上がっている。肉味噌は見た目ほど辛くはなく、名古屋エリア特産の豆味噌ならではのコクを感じる。それをよりマイルドな口当たりにしているのが玉子なのだ。本当にイイ仕事をしているなぁ。
ベースとなるチャーハンだけを食べてみると、味付けはやや薄め。肉味噌を合わせる前提で作っているからだろう。だからといって、肉味噌がチャーハンの味を壊しているわけではない。お米一粒ひと粒にコーティングされた複雑な味わいや香ばしさもしっかりと感じるのである。チャーハンとしてレベルが高いのは間違いない。
「チャーハンが美味すぎるラーメン屋」というのは本当だった。
たったひとつだけ苦言を呈するとするならば、チャーラーとしての完成度である。ラーメンが豚骨だからなのか、チャーハンとラーメンを交互に食べても味の相乗効果が今ひとつ弱いのだ。
豚骨ラーメンとしてはおいしいものの、この「ふわ玉肉味噌半炒飯」と合わせるならシビレや辛味は要らないような気がするし、相性はシンプルな塩か醤油の方がよいと思う。
ふと、席を見渡すと、「ふわ玉肉味噌炒飯」の単品(950円)だけを注文している客がたくさんいた。中には+200円で大盛りにしている猛者も。完成されたチャーハンと完成されたラーメンを合わせても、完成したチャーラーになるとは限らない。それぞれの足りない部分を補い合うのが本当に美味しいチャーラーなのである。
やはり、チャーラーは奥深い。
撮影・取材/永谷正樹
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