トマトソースやケチャップをまとった麺に心奪われ、味にアクセントと彩りを与えるベーコンやピーマンに胃袋を捕まれる。気づけばもう虜―そんな“赤い小悪魔”ナポリタン。ここでは、ソース、具材、トッピング……もちもち麺&ケチャップという定番の味に様々なアレンジを加え、さらなる美味に仕上げた「個性派」をご紹介!ここでしか食べられないひと皿を集めました。
画像ギャラリートマトソースやケチャップをまとった麺に心奪われ、味にアクセントと彩りを与えるベーコンやピーマンに胃袋を捕まれる。気づけばもう虜―そんな“赤い小悪魔”ナポリタン。ここでは、ソース、具材、トッピング……もちもち麺&ケチャップという定番の味に様々なアレンジを加え、さらなる美味に仕上げた「個性派」をご紹介!ここでしか食べられないひと皿を集めました。
『喫茶 gion(ギオン)』 @阿佐ヶ谷
約40年かけて改良を重ねてきた唯一無二の味
いわゆるナポリタンのオレンジ色とは一線を画す独特の色合い。口に運ぶとケチャップ感は控えめで、肉や野菜の複雑な旨みが濃厚!次に玉ねぎの甘みとともにピリッとした辛さが現れ、ハーブの香りとピーマンの苦みが清涼感を添えてくれる。
「ポイントは寸胴が満杯になるくらいの大量の玉ねぎを煮詰めることです。そこにフォンドボーやシェリー酒など約20種類の材料を加えて、溶けてしまうまで煮込んでいます。今はそこに3種類のキノコも加えてさらにおいしくなりました」と話す店主の関口宗良さん。
ナポリタン(グリーンサラダ、マヨネーズ玉子付き) 930円
あまりに個性的な味わい過ぎて「これはナポリタンじゃない!」というお客さんもいるというが、一度食べたら忘れることができず虜になる人も多いのだ。
グラム単位、秒単位で試作を繰り返して完成したレシピは20ページ以上に及び、理想の味を追い求めてきた関口さんの研究熱心さが伺える。
[住所]東京都杉並区阿佐谷北1-3-3 川染ビル1階
[電話]03-3338-4381
[営業時間]9時〜24時、金・土は〜25時
[休日]無休
[交通]JR中央線ほか阿佐ヶ谷駅北口から徒歩1分
『ラドリオ』 @神保町
ピリ辛で力強い旨さが押し寄せる大人味が魅力
レンガ造りの外装に飴色の梁や、味わいのあるランプの光。『ラドリオ』といえば戦後すぐの1949年から神田神保町ともにあるお店。
何とも落ち着く佇まいが魅力だが、いやいやここのナポリタンを見逃すわけにはいかないのだ。ナポリタンといえば太麺で少しクタっとして、かつてタモリもそれが好きと番組内で言ったとか。
「それとは逆に、うちはバーでもあったのでお酒にも合うように、ちょっと大人味になったんです」と店主の泉志穂さんが教えてくれた。確かに細めの麺を硬めに茹で、しっかりと油で炒めてある。そして、スパイシーなのがいい!
ナポリタン(スープ、コーヒー付き) 1100円 ※単品900円
実はケチャップベースの特製ソースにはタバスコやトマトジュースがブレンドされ、仕上げにブラックペッパーを効かせている。食感もこんがり具合もスパイシーさもならでは!
ビールも合うけど、食後はやはりこちらが発祥とされる、名物のウィンナーコーヒーだな。
[住所]東京都千代田区神田神保町1-3
[電話]03-3295-4788
[営業時間]11時半〜22時半、土・日・祝12時〜19時
[休日]火
[交通]地下鉄半蔵門線ほか神保町駅A7出口から徒歩2分
『バーガー喫茶 チルトコ』 @蔵前
三温糖を使った甘口ナポはクセになる味わい
英語でくつろぐを意味する「チル」と日本語で場所を意味する「所」を合わせ、「チルトコ」。
「アメリカ的な味わいだけでなく、味噌やわさびといった食べ慣れ親しんだ和のテイストを加えたものも用意して、よりゆったりと食事をしてもらいたくて」(店長・寺島さん)。それらハンバーガーと並び、15時からの提供なので特に週末になると注文が増えるのがナポリタンだ。
実はこちら、「シシリアン」という名イタリアンの跡地にできた店。「そこの名物だった味を自分たちでアレンジしつつ再現したものです」。
シシリアンのナポリタン 1450円
玉ねぎ、にんにく、醤油などに三温糖を加えて仕上げる少し甘口のBBQソースとケチャップからなるナポリタンソースはもっちり柔らかく茹でられた麺との絡みもよく、クセになる味わい。
さらにタバスコを少々かけると辛みと酸味が加わってソースの味がグッと引き締まり、大人の味わいに変化する。
[住所]東京都台東区蔵前4-33-1 エルミタージュ浅草1階
[電話]050-5849-8813
[営業時間]11時〜20時(19時半LO)
[休日]不定休
[交通]都営大江戸線蔵前駅A5出口から徒歩4分
『La cour cafe(ラ クール カフェ)』 @吉祥寺
ケチャップだけじゃ出せない味は自前のトマトソースが鍵
吉祥寺駅前にかつて「ストーン」という喫茶店があった。そのマスター戸田慎二さんが姉妹店としてここを開店したのが30年以上前。そして昨年「この店とマスターの味をこれからも残していきたい」、そう願ってバトンを受け取ったのが現店主の小暮大輝さんだ。
ナポリタンはストーン開業当時から変わらず愛されてきた戸田さんのレシピ。「太麺を使い、前の日にボイルして冷蔵庫に置き、特有のモチモチ感を出す」(戸田さん)、喫茶店の味。
ナポリタン(パン、サラダ付き) 1350円
そして何といってもオリジナルのソースだ。「ケチャップだけじゃ物足りないので」と、トマトソースを自前で仕込んで半々に使う。飴色に炒めた玉ねぎとベーコン、にんにく、ホールトマトを時間をかけて弱火で煮込むのだ。
さて実食。にんにくも効いて、炒まった香ばしさの中に奥行きのある旨みが顔を出す。いいなあ。これからもずっとあってほしい味だ。
[住所]東京都武蔵野市吉祥寺本町2-11-9 プラタ高橋ビル2階
[電話]0422-23-1518
[営業時間]11時〜22時(21時LO)
[休日]不定休
[交通]JR中央線ほか吉祥寺駅西改札から徒歩4分
『フェブラリーキッチン』 @浅草
見た目、味わい、食べ応えと3拍子揃った名物ナポ
老舗洋食店、喫茶店が多いナポリタン激戦区・浅草。浅草花やしきのそばに2019年にオープンしたのがこちら。
ナポリタンには、ラーメン好きにはお馴染みの製麺所「浅草開化楼」の太め手打ち麺(トンナレッリ)を使用。小麦の風味に溢れるもっちり食感で、にんにくを隠し味にしっかり炒めた濃厚なケチャップ味にも負けることなく、食べ応えあるナポリタンに仕上げている。
ここに、さらに卵約3個を使用したふわとろのオムレツをオンしたのがこの「オムナポリタン」だ。
「オムライス的な発想で作ってみたら、ナポリタンに卵のまろやかさとコクが加わって、ひと味違うおいしさになったんです」(店長・佐々木耕平さん)。
東京オムナポリタン 1400円
そこにソーセージの旨み、玉ねぎの甘みなども加えることで、見た目、味、食べ応えと3拍子揃った一品が完成した。界隈にある老舗の味に負けることなく着実にファンを増やしている。
[住所]東京都台東区浅草2-29-6 天野ビル1階
[電話]03-5811-1535
[営業時間]9時〜18時(17時LO)
[休日]不定休(インスタで確認を)
[交通]地下鉄銀座線浅草駅6番出口から徒歩9分
『珈琲舎ダンケ』 @浅草
老舗純喫茶のアイデアナポは飾らないおいしさ
ナポリタンが2種類ある。ひとつはウスターソースを隠し味に、ケチャップを和えてしっかり炒める定番タイプ。もうひとつが、トマトソースをベースに味付けしホワイトソースとたっぷりのチーズをのせてオーブンで焼き上げる「スパゲティグラタン」だ。
面白いのは定番の方は柔らかめに茹でてそのまま使うのに、グラタンはソースに絡めてひと晩寝かせてから使用すること。
「定番をグラタンにしたり試行錯誤して、トマトソースの味を麺にしっかり入れてからグラタンにするのが一番おいしくて」と調理担当のやよいさん。
スパゲッティグラタン 980円
ホワイトソースのまろやかさ、チーズのコクや風味に包まれたトマトの酸味が見事に絡まり、ハフハフしつつも食べる手が止まらない。
さらに付け合わせのバゲットをソースと絡めて食べた時のおいしさときたら!老舗純喫茶ならではのホッとする味を肩肘はらず気軽に頬張ってほしい。
[住所]東京都台東区浅草3-40-8
[電話]080-5021-9755
[営業時間]8時〜18時
[休日]木
[交通]つくばエクスプレス浅草駅A出口から徒歩7分
『げるぼあ』 @日本橋
熱々の鉄板の上で少し焦げた麺と濃いめの味が絶妙
大きな赤いフードとシックな壁の色合いが歴史を感じさせるた佇まい。創業1952年。日本橋高島屋の横で時を刻んできた昔ながらの喫茶店だ。
メニューに並ぶのもどこか懐かしさを感じさせる昭和の喫茶店らしいラインナップ。となれば見逃せないひとつがナポリタンだ。
使い込まれた中華鍋で玉ねぎをよく炒め、ボイルされたスパゲティを投入。少し濃いめのソースの味をケチャップとブイヨンで整える。
パスタランチ ナポリタン(ドリンクセット) 1150円 ※単品1100円
具材はほかにピーマン、マッシュルーム、ベーコン。そして出来上がったそれは熱々に熱せられた鉄板に盛られて提供されるのが特徴だ。鉄板にこんもり山を成す麺から上がる香りが食欲を引き立てる。
少し酸味も効いて甘さもある濃いめの味がいい。鉄板の上で麺が焼けてところどころカリッとしたところがあるのも最高だ。フォークにしっかり巻きつけて熱々のままその味を頬張りたい。
[住所]東京都中央区日本橋3-8-6
[電話]03-3275-3062
[営業時間]8時〜18時、土・日・祝9時〜17時
[休日]不定休
[交通]地下鉄銀座線ほか日本橋駅B1出口から徒歩2分
撮影/鵜澤昭彦、取材/井島加恵(喫茶gion)、池田一郎(ラドリオ、La cour cafe、げるぼあ)、編集部(チルトコ、フェブラリーキッチン、ダンケ)
※2024年6月号発売時点の情報です。
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