昼飲み、センベロなどの店が集まり、呑兵衛天国だった京成立石。しかし駅周辺の再開発により名物店などが閉店、移転を余儀なくされた。 そんな“大問題”を目の前に、立石に続く町はどこになるのかと向かったのは京成線沿線の堀切菖蒲園…
画像ギャラリー昼飲み、センベロなどの店が集まり、呑兵衛天国だった京成立石。しかし駅周辺の再開発により名物店などが閉店、移転を余儀なくされた。
そんな“大問題”を目の前に、立石に続く町はどこになるのかと向かったのは京成線沿線の堀切菖蒲園駅。実は、ここは甲類焼酎+シロップの“もと”と炭酸からなる焼酎ハイボール(通称・ボール)を出す店が多数ある目白押しのスポット。
この下町のカクテルが特に肉料理と相性抜群だからか、居酒屋に加え焼肉店、焼きとん店がそこかしこに連なる、安くて旨くて人情も濃い、通いたくなるいい店にふらり立ち寄ったのは、おなじみの覆面調査隊だ。
独自のボール文化にひたれる呑兵衛天国
あえて高らかに宣言しよう。堀切は「ちょっと盛って最高」だと。堀切菖蒲園駅にはこの3年で20回は降り立っている。その目的は飲み歩きだ。
駅名の由来となっている江戸時代からの観光名所「堀切菖蒲園」にはまだ行ったことがない。花より団子、いや酒だ。堀切の街はこぢんまりとしていながらも個性的な個人経営の店が密集する呑兵衛タウンだ。
わざわざ飲みに来る左党たちの心を掴んでいるのが、堀切が発祥とされる焼酎ハイボール。焼酎に梅エキス、炭酸を合わせた酒で、昭和20年代から界隈では「とりあえずボール」と注文されるくらいに親しまれている。
ちなみに「ボール」のアクセントは「バール」と同じ。堀切に行ってみたい読者へ、日々のフィールドワークで培った飲み歩き法を指南させていただく。
住宅街のワンダーランド『隠れ家 やまさん』
『隠れ家 やまさん』で「ボール」を注文してみよう。
店主の山田さんは、生まれてから62年間堀切から出たことがないという生粋の堀切人。永ちゃん風にキメているが、陽気で話好きな方なので、堀切のことをいろいろ教えてくれるはず。
店が佇むのは「えっここに!?」という住宅街。扉を開ければ、矢沢永吉さんへのリスペクト全開の異空間が広がっている。ドリンクの9割を占めるという焼酎ハイボールは大きめのグラスに氷なしスタイルで良心価格。
「2年前のオープン時はつまみも全部300円以下がコンセプトだったけど、昨今の物価上昇で350円も紛れ込ませてあるの。ごめんね」と店主。お肉みっちりのメンチが2個に付け合わせにはナポリタンも!
実は料理のすべて、丁寧な手作りでどれもホッとする旨さだから驚くばかり。
出色はたくさん飲んだ人への感謝として提供される〆メニュー。
食べたかったら、飲むべし、飲むべし!
気前のいい女将がいるお店『居酒屋 きよし』
『居酒屋 きよし』で昭和の空気にひたってみよう。
堀切の魅力はどこか時代に取り残されたようなノスタルジックな雰囲気。昭和40年創業の同店には、昭和の良き時代の大衆酒場文化がそのままに保存されている。
炭酸水の空き瓶は自分の前に並べていくのがこの店のルール。店それぞれに確立された流儀に従う面白さをぜひ体験してほしい。
「週に何度も来てくれるお客さんが多いから、値段を上げられないの。料理の品数もいつの間にか増えちゃって、こっちはてんてこ舞いだよ」と気風がいい二代目女将・後藤さん。
壁の短冊にあるグランドメニュー以外に、ホワイトボードに掲げられる日替わり料理は40種以上のラインナップ。それを後藤さんがちゃきちゃきと調理する。
駅前で創業し、移転を経て来年60周年を迎えるという。客の多くが杯を重ねるど定番の酒、焼酎ハイボールは初代女将がつくり上げた味を頑なに守る。
美味しくリーズナブルなものをとつまみを進化させながら、もてなしの心意気は変わらない。ボール片手にゆるりと過ごせば、わざわざ通う人の気持ち、ストンと腑に落ちる。
呑兵衛アイドル『炭火のかえで』
いつも賑う『炭火のかえで』に空席を見つけたら、すかさず滑り込むべし。
うら若き女店主は、やはり生まれも育ちも堀切&筋金入りの酒好き。堀切の飲み屋で誰もが知る呑兵衛アイドル、ノンアルだ。そんな言葉はないが、堀切で英才教育を受けた人がどんな飲み屋を営んでいるか、一見の価値あり。
堀切生まれ堀切育ちのかえでさんが昨年末に開いた、駅近くの焼きとん屋さん。
名物の焼酎ハイボールに合わせて何を焼いてもらうか迷っていると「ハラミすじ、珍しいから食べていきなよ」と気さくに声をかけくれたのは常連さんだった。噛み応えがあって、縦の焼き焦がしが香ばしく、確かに旨い。
「おいしいけど手間がかかるんで、出す店は少ないかもしれません」とはかえでさん。なおさら、食べられてよかった。常連さん、ありがとう。
女性のかえでさんが店を切り盛りしていること。きんぴらやポテサラといった一品料理も少しずつ増やしていること。そして先の方のようにやさしい常連が多いことで、女性のひとり客も増えているそう。新しい名店の誕生の予感だ。
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…つづく<『東京のうなぎの名店6選 うなぎ好きの『おとなの週末』編集部がおススメ!』>では、『おとなの週末』の編集部員、ライターが、「ここはおいしい!間違いなし!」という極上の店を自信を持ってご紹介します。
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撮影/橋本真美(やまさん、きよし)、小島昇(かえで)、浅沼ノア(牛将)、取材/渡辺高(やまさん、きよし)、輔老心(かえで、牛将)
『おとなの週末』2024年4月号より
(本記事は2024年4月号発売時点の情報です)