吉野鮨本店 明治12年創業、トロ発祥の店といわれる。シャリは赤酢と塩のみ。甘みを一切加えずに仕上げるのが伝統の味だ。ここを昼に訪れるなら、ぜひ頼みたいのがにぎりずし。 10貫に巻物という内容で、酢でキリッと〆た小肌、上品…
画像ギャラリーかつて河岸があった日本橋は、江戸前寿司の粋と歴史が使った街。夜は少し敷居が高いけれど、昼なら安心して頬を落とせる店を見つけてきました。
蛇の市 本店
明治22年に屋台として創業した老舗が令和2年3月に移転。白木に黒塗と朱塗のつけ台が映えるスタイリッシュな店内で、伝統が息づく江戸前寿司を楽しませてくれる。まず、シャリが素晴らしい。
米は寿司用の石川県能登産「笑みの絆」を使用。羽釜で炊き上げた粒の輪郭がはっきりしたシャリを赤酢と塩のみで調える。いい意味でネタの味をジャマしない仕上がりで、口の中でのはらりとしたほどけ具合も実に見事だ。ネタも、本マグロのヅケに平目の昆布〆など、ひと手間加えたものが印象的。そして、見逃せないのが薄焼き玉子でシャリを巻いた玉子巻き。
具は胡麻と海苔だけというのが潔く、〆にふさわしい逸品だ。
鮨 山沖
店主・山沖さんの握る寿司は、どれをとっても丁寧な手仕事が光る。例えば小肌は酢〆の加減が良い上に柚子の香りが上品。スズキの昆布〆にはゴマをかまし、食感と味の妙味が秀逸。
和辛子を添えたヅケは口の中で香りと味が膨らむ、といった具合。また、煮蛤には貝の、車エビにはエビのダシを加えた共ツメを添えるなど、手のかけ方が実に繊細なのだ。
そんな寿司が旨くないわけがない。昼寿司は2200円、3300円、5500円の3種類。ネタは日替わりで17種類ほどが揃い、お好みで1貫330円から楽しめる。どんなネタが待っているか、それをどんな風に握ってくれるか、思い浮かべるだけで笑みがこぼれる。
鮨 うら山
名古屋で評判の店が、かつて魚河岸として栄え、今も老舗が軒を連ねるこの地で勝負に出た。ネタは上品な脂乗りのノドグロや、富山の白エビをはじめ、北陸から届くとびきりの海の幸が中心だ。
加えてシャリも名脇役で、複数の品種を独自にブレンドし、粒立ち良く炊いた米を赤酢と米酢の合わせ酢で切る。おだやかな酸味と塩分によって、それぞれのネタの旨みや香りを繊細に立たせているのだ。
また、握りには伝統的な仕事の中にも、あしらう薬味やネタの切りつけに、どこか現代風のアレンジを忍ばせる。これが目にも舌にも楽しい仕掛けとなって、次はどんな1貫がやってくるか待ち遠しくなる。
吉野鮨本店
明治12年創業、トロ発祥の店といわれる。シャリは赤酢と塩のみ。甘みを一切加えずに仕上げるのが伝統の味だ。ここを昼に訪れるなら、ぜひ頼みたいのがにぎりずし。
10貫に巻物という内容で、酢でキリッと〆た小肌、上品な旨みを湛えた車海老、どっしりした味わいの穴子など、江戸前の仕事がきちんとなされたネタが、伝統のシャリに抜群に合う。もちろん、口の中でトロッととろける極上のトロもご賞味あれ。
喜寿司(きずし)
心惹かれるバラちらしである。シャリに白身や煮イカ、小肌、穴子、エビといったネタを散らし、煮ツメや煮切り、わさびで味を調える。思わず呑みたくなってしまう、味のバランスの良さが見事なのだ。もちろん、にぎりも美味。
まろやかな味の余韻を感じる小肌、口の中で旨みが広がる穴子、素朴な甘さの鞍掛玉子焼きなど、江戸前の粋を感じる寿司に惚れ惚れしてしまう。風情漂う下町の一軒家で、贅沢な昼寿司を味わおう。
『おとなの週末』2021年10月号より(本情報は発売時のものです)
…つづく「東京のうまい 「最強の町寿司」 ベスト7軒…高コスパ、一貫 《110円》 からで一見さん、ソロ活でも大丈夫「覆面調査隊が実食」」では、庶民価格の美味しい町の寿司店を紹介します。
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