夜が少しずつ長くなって、しっぽり飲みたい季節です。それならこだわりの和の店で、一献楽しんでみませんか。おいしい肴と沁みる酒、空間までもがご馳走の、ちょっといい店を東京の城北・城東エリアで見つけてきました。心身ともに癒されて、やさしい気持ちになれたなら、きっと明日への活力が湧いてきます。
画像ギャラリー夜が少しずつ長くなって、しっぽり飲みたい季節です。それならこだわりの和の店で、一献楽しんでみませんか。おいしい肴と沁みる酒、空間までもがご馳走の、ちょっといい店を東京の城北・城東エリアで見つけてきました。心身ともに癒されて、やさしい気持ちになれたなら、きっと明日への活力が湧いてきます。
安らぎのカウンター空間でほっこり酔う『宵のま』@新富町
店主の高久さんが日本酒に目覚めたきっかけ、それは京都の純米酒「蒼空」との出合いだったそうだ。次第に酒と酒の肴を勉強するようになり、10年前、荒木町に小さな店を開いた。
その人気店が今年7月、移転準備の休業を経て実に4年ぶりに復活。新天地は新富町。そう、ここ『宵のま』の話である。夜の宵、酔いの宵……そんな意味を名に込めた店は高久さんの家に招かれたかのよう。
鶏もも酒盗焼き 880円、巨峰の白和え 580円
品書きには素朴な肴が並び、眺めるだけで猛烈に酒が恋しくなる。「鶏もも酒盗焼き」は滋味深い旨みにホッ。これにはおすすめの燗酒を。
「温度で味わいが変わるお燗が好きなんです。温かいって、何かほっこりしますよね」。
味に会話に心も緩む。今宵は長っ尻確定だ。
[住所]東京都中央区新富2-4-9 銀座スカイビル6階
[電話]03-6262-3041
[営業時間]17時~22時(21時LO)
[休日]土・日・祝
[交通]地下鉄有楽町線新富町駅3番出口からすぐ
※メニューは季節や仕入れで変わる
茶葉の香りが花開く ハイボールと至福の肴『酒と茶と 襤褸(らんる)』@向島
店の佇まいというか在り方には店主の姿勢が表れると思うのだが、この店がまさにそう。余計な装飾は何もない凛とした緊張感。店主、松木さんの所作がまた粛々として慎ましい。
一方で品書きの「お茶ハイボールを楽しみつつ、ビールやお酒を(行ったり来たり)反復横跳び呑みをどうぞ」の文言にクスッと笑えて。緩急の空気感に妙にくつろげるのである。
真たことアボカドの南蛮みそ和え 700円、シウマイ 2個600円、煎茶ハイボール 700円
さて文言通り、ここは酒、特にお茶ハイボールが主役。煎茶など各茶葉を漬け込んだジンやウイスキーなどを炭酸やトニックで割る自家製で、茶葉の香り、苦み、渋味のいい部分を抽出した味は清冽(せいれつ)で上質。酒に寄り添う肴も至福だ。修業先の味を受け継ぐ名品も多く、派手さはないが、しみじみ旨い。
[住所]東京都墨田区向島2-10-11 南山ビル1階
[電話]03-5637-8266
[営業時間]17時~22時(21時LO)
[休日]水、月1回不定休
[交通]地下鉄半蔵門線ほか押上駅A3出口などから徒歩10分
旬材の刺身、旨い魚が盃を進める!『さかなや なかにし』@板橋
十中八九のお客さんが選ぶという刺身が旨い。ご主人の中西さんは元魚市場の仲買人で、今も毎日豊洲に足を運び、日替わりで13種類くらい提供する。
「安いものに逃げず、ちゃんと脂ののった、おいしいタイミングで使いたい」の言葉通り、ホッキ貝は甘く、ツブ貝は肝まで旨い。活け物屋で仕入れたひげ剃り鯛がまた……。
刺身盛り合わせ 1700円
肉は使わず、野菜も仕入れにこだわって、週一で仕入れ先が営む店でご飯を食べて確かめている。で、そんな素材のよさを楽しむための料理を邪魔しない日本酒がいい。
セレクト担当の上鈴木さんとともに蔵元にも足を運び、「酒好きのお客さんも驚かせたい」とまだ有名でない蔵も押さえているのがお茶目。ひとりでこっそり飲みたいぞ。
[住所]東京都北区滝野川6-82-1
[電話]03-6324-5585
[営業時間]18時〜23時、土・日:17時〜23時
[休日]月・祝
[交通]JR埼京線板橋駅東口から徒歩5分
淡くも食べ進むほどに旨い料理で一献『淡路町 三むら』@淡路町
和食は引き算の料理と言われる。味をのせるのではなく、食材を引き立てるように味のバランスを整える。
たとえばこちらの「鮎の焼きびたし」。水と塩、薄口醤油だけを使った鮎ダシに鮎が浮かぶ。淡い。だけどしっかりと鮎の香りと味わいが伝わってくる。旨いなあ。
鮎の焼きびたし 1480円
「とうもろこしのすり流し」に使うのも昆布ダシと塩のみ。なのに甘い。軸から煮出すというとうもろこしの自然な甘み。味覚がリセットされる感じだ。しかも価格は良心的。
「うちがきっかけで、いろんな和食の店へ行っていただけたら」とも語る店主の三村さん。
カウンター7席の落ち着いた空間。旨い酒も揃っている。〆には目の前で削ったカツオ節がのる、炊き立ての土鍋ご飯も捨てがたい。
[住所]東京都千代田区神田司町2-2-8 マガザン神田ll3階
[電話]080-3023-6298
[営業時間]18時〜22時
[休日]不定休
[交通]地下鉄丸ノ内線淡路町駅A2出口から徒歩4分
撮影/浅沼ノア(宵のま)、鵜澤昭彦(襤褸、なかにし、三むら)、取材/肥田木奈々(宵のま、襤褸)、池田一郎(なかにし、三むら)
※2024年10月号発売時点の情報です。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
…つづく「東京・千葉の「貝のうまい専門居酒屋」ベスト5店…街歩き《高円寺・上野・恵比寿・神田・九十九里》で覆面大調査」では、本場・九十九里から都内、焼きハマから居酒屋と貝の名店を覆面調査隊が実食レポートしています。