発電用ではないロータリーエンジン搭載車の登場は?
つまり基本的にはMX-30ロータリーEVと同様の考え方だが、数人の開発者に「今後のロータリーエンジンは、発電機の作動だけに使われ、もはやホイールを直接駆動することはないのか。駆動の加減速において、ドライバーが運転感覚として、ロータリーエンジンを味わうことはできないのか」と尋ねると「決してそうではない。ロータリーは発電用エンジンではない」と返答された。
このコメントは示すのは、コンパクトなロータリーエンジンと、直接駆動も併用するハイブリッドの存在だろう。振動を打ち消すことも考えて、2つのロータリーエンジンを縦向きに配置して、その後部にモーターを連結する。モーターの断続を可能にして、ロータリーエンジンのダイレクトドライブモードを設定するような方式だ。
また水素の供給が難しいものの、直接水素を燃焼させる二酸化炭素を排出しない水素ロータリーエンジンの研究も進められていた。ロータリーエンジンは植物由来のバイオエタノールとの親和性も高い。燃焼段階で二酸化炭素を排出しても、植物が育つ時点で吸収しているというわけだ。ロータリーエンジンは、ハイブリッドの発電用に限らず、さまざまな可能性を秘めている。
今後、ロータリーエンジンの伸びやかな運転感覚を再び新車で楽しめる時代が到来するかも知れない。
文/渡辺陽一郎(わたなべ よういちろう):自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。執筆対象は自動車関連の多岐に渡る。
写真/マツダ